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変わり者の伐剣者  ~教師生活は思った以上に大変だ!!~  作者: 源五郎
第一章 教師生活一年目 ―前期
19/81

第十五話 旅は道連れ世は情け


 楽土の大樹(エウラロ)を求め、ドゥミバァーズ遺跡に向かう途中に出会った二人組の女性。大丈夫だとは思うが、念のため生徒達を下がらせ二人の素性を聞く。


「ホンマに危ない所を助けていただいてありがとうございました。ウチは、帝都新聞で記者をやっとりますコロナ・バウマンというもんです」

「私は、帝都新聞の専属魔動力映写(キャメラ)士のエッダ・ジィズムといいます。この度は危ないところを助けていただき、誠にありがとうございます」


 帝都新聞?新聞記者がこんなところで何をしているんだ?

 疑問は残るが、危険は無さそうだし、こっちも挨拶だけは返しておくか。


「どういたしまして。私はレオンハルト・ハーンといいます。一応、帝都の伐剣者として登録をしていますが、今はジギスムント帝立学院の伐剣者学部で戦闘技術を教えています。そして、この子達は私の教え子です」


 皆が「はじめまして」と言い、挨拶を済ますと、牛魔に追いかけられていた事情を聞いておく。



 話は、帝都新聞で新しく『ジギスムント帝国~歴史を訪ねて~』というコラムを立ち上げることになったことから始まる。


 新しく始まるコラム、その栄えある一回目をどこにするか、社内で場所の選出をした結果、ドゥミバァーズ遺跡が選ばれたそうだ。

 そして、そのコラムを担当することになった、記者であるコロナさんと魔動力映写士のエッダさんは、まだ遺跡を直に見たことがなかったことから、いい記事を書くためには一度遺跡を見た方がいいと、伐剣者を雇い帝都を出発した。


 伐剣者を雇っての旅は、問題もなく順調に進み、時間的な余裕を作ることができた。そこで、伐剣者とも相談し、途中に寄ったラザフォスの街で仕入れた森の中の名所も見てみようと決めたらしい。

 後から見ると、これが最悪の判断だったのだが、その時にはそうと分かるはずもなく、幾つか旅行者に受けそうな場所を写真に収めていると、あっという間に時間が経ち、森の中で夜営をすることになってしまった。


 そうして、夜営の準備をしていると、まだ日があるにも関わらず、本来は夜に活動するはずの動物が妙に騒いでいたのである。そんな、森の不穏な気配を怪しんだ伐剣者達が、周りの様子を窺っていると、牛魔の群れが遠目ながらも確認できたのだ。


 この場所にはいないはずの魔種。それを確認したことで慌ててしまった事が悪かったのか、距離があるにも関わらず、自分達の存在に気付かれ、向かってくる恐ろしい魔獣。


 殺気だち、雄叫びを上げて襲いかかってくる牛魔の群れを前に、雇っていたBランクの伐剣者コンビが足止めをすると言って、二人をなんとかその場から逃したが、それをあの二頭だけは気付いて追ってきたそうだ。

 魔種と戦う力の無い自分達は、息が切れ、枝によって服や肌が切れるのもお構いなしに必死に走ったが、振り切ることができず執拗に追われ続けることになったという。


 暗くなっていく森の中を、今いる場所もわからず、必死に走っていると、明かりが見えたので助けを求めて、命からがら俺達の方へ向かって来た、というのが今までの経緯のようだった。


 Bランクの伐剣者なら、二人を逃がした後でも何とか出来るだろうが最悪…それに、話を聞くと結構前みたいだし、今から向かったところで遅すぎるか…

 伐剣者は魔獣との突発的な戦闘も仕事の内で、例え死亡したとしても自己責任とされているのだが、それでもやるせない気持ちになるな。


 そう感傷にひたっていると、コロナさんから声がかかる。


「あの二人、別れる前に、無事ならここに来る途中に立ち寄ったラザフォスの街で落ち合おうと言ってましてん。せやから、これからウチらも向かおうと思てますんで、申し訳ないですが一晩だけお世話にならさしてもらえませんか」


 頼んますとエッダさん共々頭を下げる。


 しかし、ラザフォスの街か。途中で通ったが、ここからだとドゥミバァーズ遺跡よりは近いが、それでも歩くとなると結構な距離がある…少し考えてから、二人に構いませんよと返事をする。


 そうして、寝床を提供し、眠るのを待ってから生徒達を集め、俺の考えとあの二人をどうするかを話し合う。


「あの二人の目的地は俺達と同じドゥミバァーズ遺跡だ。そこで皆に聞きたい。遺跡まで同行し、その後ラザフォスの街で雇っていた伐剣者達がいたなら預け、そうでないなら帝都まで連れて帰ろうと思うがどうだろう?」


 個人的には助けてやりたいのだが、今は課外演習の途中で生徒たちに対する責任の方がどうしても優先する。そのため、生徒達にもその意思を確認する。


 すると、意外なことにルディが真っ先に首を縦に振る。続いて、ディータとアニータは「伐剣者の護衛依頼みたいなもんだし構わないよ」と同意し、クラウディアも「騎士として見捨てるわけにはいかない」と言ってくれた。


 これで、後はコロナさん達に聞いてみて、どうしても帰るというならここで別れることになるだろし、それ以上責任を持つこともない。まあ、何はともあれ、明日の朝になってみなくちゃ分からないか。


 そうして、ディータ達に手伝ってもらいベルクスの遺骸を燃やし尽くすと、火の番を代わりながら騒がしかった夜が明けるのを待つのだった。


◇◆◇◆◇◆


 翌朝、朝靄(あさもや)が晴れる頃に起きてきた二人。疲れがまだ残っているのだろう、その足取りは重く疲労が滲み出ていた。このままだと、ラザフォスまで歩くのは無理そうだなと思い、昨夜生徒達と話した内容を語る。


 始めは、恐縮して遠慮していたが、この森から二人だけでラザフォスに行くのは困難ということが分かっていたのか、同行させて欲しいと言ってくる。

 これからドゥミバァーズに行き、触媒を採取したり写真を撮って帰ったとしても、ライナックなら、急げば夜にはラザフォスに着ける。それなら、雇っていた伐剣者達と―生きていればだが―入れ違うことはないというのも、提案を受ける理由としては大きそうだな。


 そうして、同意を得たところで、黒パンを火であぶり熱を持たせてからバターを塗ったものとベーコンで出汁をとり野菜を刻んで入れた簡易スープの朝食をとったのだが、その時に改めて謝られてしまう。


 なんでも、昨夜は必死だったから、たまたま炎の明かりが見えたので助けを求めて走ってきたが、結果として魔獣を引き連れてきて危険な目に合わせた事が申し訳ないらしい。

 まあ、必死の時にそんな考えは普通は浮かばないだろうし、それを一夜明けた今になってから、改めて咎め立てるのも器が小さすぎる。生徒達も、伐剣者や騎士を志してるだけあって、緊急事態だったので特には気にしてませんよと答えたことで、二人と大分打ち解けれたようだ。



「あの、コロナさんの喋り方は独特ですよね」


 打ち解けて色々と話をしていると、どうしても方言と言うのか、喋り方が気になったため思いきって聞いてみることにする。


「そうですか?失礼ですけど、レオンハルトさんはジギスムント生まれやないんですか?」

「ええ、俺はガルクブルンナーの出身なんですよ」

「あぁ、それなら馴染みはないですやろね。ウチのこの喋り方は、ジギスムント西部のモンなんですわ。帝都でも、結構この喋り方の人はおりますよ」


 へぇ、ジギスムントでは、普通に認知されてる喋り方なのか。それなら、案外学院にもこういうしゃべり方をする人がいるのかもな。


 コロナさんから西部についても色々と聞きながら、和やかに朝食を終えると、二人を加えた俺達はドゥミバァーズ遺跡に向け出発する事にした。


◇◆◇◆◇◆


 出発してから暫くは俺が御者をしていたが、途中でアニータとルディに御者役を代ってもらい、少し休むことにする。

 そして、鳥車の中に移動しディータ達と雑談をしていると、突然コロナさんから答えづらい質問が飛んできた。


「しかし、レオンハルトさん言いましたか。牛魔二頭を、ああもあっさり討伐出来るやなんて。なんで、そないな方が帝立学院の教師をしよなんて思たんです?」

「そういえば、どうしてなのだろうか。私としてはハーン教諭に教えてもらえる事は幸運だったが、なぜ教師をしようと思われたのか理由が聞いてみたいな」


 いや、ただ伐剣者を辞めて平和に生きたかっただけですよ。そりゃ普段の生活にも危険はありますけど、危険領域で仕事をするのに比べれば天と地ほどの違いがありますから。

 …なんで俺はこんな丁寧に内心で言い訳をしているんだ。でも、これをそのまま言ったら流石に伐剣者学部の教師失格か。


「いや、友人が言うには、今の俺は燃え尽き状態らしくてね。それで、国や伐剣者という仕事から離れようと考えていた時に、ギルドで偶然に教員募集の張り紙を見つけたのが理由かな」


 テオの言葉を借りながら下手な言い訳をすると驚かれた。


「先生さ。あれだけの実力があるのに、伐剣者としての壁にぶち当たったの?いや、もしかして討伐以外の依頼遂行に問題があったとか?」

「そうですね。昨夜私とコロナ先輩を助けていただいた時の実力を見るに、失礼ながら討伐に関しては全く問題なかったと思います。そうなると護衛や交渉が苦手なのでしょうか」


 テオ曰く、可もなく不可もなくだそうですよ。まあ、燃え尽き状態はBランクがなるみたいで、俺みたいにSSランクになってからなる奴はいないだろうからの言葉なんだろうけど。


「ハーン教諭…大丈夫です。護衛や交渉なら騎士の本分の一つ。私も協力しますので、共に成長しましょう」


 クラウディアが胸の前で握り拳を作ってるけど、君はそんなキャラだったか? とにかく、このまま話を続けるのは、俺の精神衛生上よろしくない。

 話を打ち切れる別の話題が欲しい。若しくは、早くドゥミバァーズ遺跡に到着してくれ!!


 そんな俺の願いが天に届いたのか、アニータの「先生、みんな。開けたとこが見えてきたから、もうすぐドゥミバァーズ遺跡に着くよ」との声が御者台から聞こえてきた。


 ああ、神はこの世界にもいるもんだ。いや、魔術なんてとんでも技術があるんだし、神ももしかしたらいるのか?もしそうなら、困った時には神頼みをするのもいいな。


 そう、不謹慎な事を思いながら話を打ち切ると、皆で降りる準備を始める。



 学院を出て三日、俺達はとうとうドゥミバァーズ遺跡に着いたのであった。




次回の投稿は5/4 18時頃を予定しています。


◇◆◇◆◇◆

【帝都新聞】

 帝都に本社がある新聞社。事実を一切の余談や偏見、記者本人の思想を交えず有りのままに伝えることを社是にしている。その情報の正確性と幅広いニーズに応えた多数のコラムによって多くの講読者がいる。

 また、帝都には帝都通信やジギスムント新聞があり、正しい情報や娯楽を提供するため、日夜しのぎを削りあっている。


【お知らせ】

・料理に関して

 朝食の描写で、普通にパンやバターといった表記をしていますが、ここら辺は分かりやすくこのままでいこうかと思っています。

 というのも、最初は他言語や創作した言語を使ったり、描写を詳しくしたりと色々と凝ってみたのです。

 しかし、この話の全体文字数が六千字を越えた辺りで「料理を題材にした小説じゃないのに、言語まで変えて何をこんなに張り切って描写してるの?」とはたと気がつき、あっさりめの描写かつ意味の分かりやすい表現に変えました。

 仮に、この後の物語で料理に関して表現するとしても、特産品などの名産を食べるときに描写のみを詳しくして、それ以外はあっさりめにいこうかと思います。

 詳しい料理の描写は、その時をご期待ください?



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