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変わり者の伐剣者  ~教師生活は思った以上に大変だ!!~  作者: 源五郎
第一章 教師生活一年目 ―前期
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第七話 初対面の印象は大事です1 ―教員編

 教員の人物紹介回になります。


 本来、生徒の人物紹介を続けて書いていたのですが、長くなったので一旦ここで切ります。

 この話を一話目とし、明日に生徒の人物紹介回となる二話目を投稿します。


 窓から入る光に照らされながら、長い通路を教職員室に向かって歩いていく。

 もう授業が始まっているのか、通路には人の影がなく、俺達の会話と静かな足音が響いているだけだった。


「しかし、レーヴェ先生は二つ名を名乗っておられないとか。失礼ながら、私はそんなAランク以上の伐剣者の方に初めてお会いしましたよ」

「はは、自分はまだまだですからね。それに、なかなかコレと言った二つ名を思いつかないのも大きい…そういうことにしておいて下さい」

「はははっ。学院長から聞いていた通りの方のようだ。しかし、教育上の都合が悪いので、そのような悪癖を生徒達の前で出さないようにしてくださいね」


 うっ、しまった。当たり障りの無いように返事をしようとすると、ついうっかり謙遜するようなことを言っちまったよ。

 あー、確かに表に出さないように注意しないと、生徒達に言葉通り受け取られ、舐められるかもしれないからな。


 フリッツ先生にもしっかりと釘を刺された事だし気を付けないとな。

 そのことを改めて意識し、とりとめもない雑談をしていると教職員室に着いたようで、フリッツ先生は立ち止まる。


「さっ、レーヴェ先生。こちらが、教職員室になります。もう授業が始まっているので、今いる先生だけになりますが紹介しますよ」


 そう言って、俺を促しながら部屋に入っていくと、まだ自分の担当する授業が始まっていない先生達が部屋に残っているようだった。


 その内の一つの区画に、フリッツ先生が「ここが、一年次の担当教員の席になります」と案内してくれた。

 俺達が近づいたのに気付き、教職員室に残っていた幾人かの先生が席を立ち上がると、俺に挨拶してくるのでそちらの方を向く。


「おお、お主がレオンハルトか。儂は、ヨーゼフ・フュルスト・フォン・ラッツウァイトという。お主と同じ戦闘技術を担当しておる」

「始めまして、ハーン先生。私は、レオ・リッター・フォン・ヴェルンスと言います。同じく、戦闘技術の指導をしています」


 二人とも俺より年が上のようで、ヨーゼフさんという人にいたっては高齢のように見えた。


 どうやら、この二人は俺と同じ戦闘技術の指導教官らしく、元々は近衛騎士をしていたそうだ。

 さらに、ヨーゼフさんは第二近衛騎士団の団長でレオさんはその団にいたので、古くからの知り合いだという。

 二人共、何かと頭の固い官僚や気位の高いだけのバカ貴族とのやり取りに疲れて果てていた時に、都合よく学院の教師の募集をしていたそうで、教師になるということを理由に無理やりやめてきたそうだ。


 そう豪快に笑いながら言うヨーゼフさん達だが、俺は貴族の爵位を含んだ名を名乗ったことにビックリしていた。

 しかも、ヨーゼフさんに到っては高位貴族の侯爵だ。


 それに気づいて慌てて挨拶をしようとすると、「もう隠居した老人じゃ。そう慌てんで、同じく教師として振る舞ってくれればいい」と声がかけられた。


 ヨーゼフさんの落ち着いた口ぶりに、ホッと一息つく。

 何せ、貴族とのやり取りは伐剣者の依頼で経験済みだが、堅苦しくて言葉遣いも微妙に異なるため肩が凝ってしょうがない。


 そんな経験をしているため、貴族ながら普通の接し方をしてくれるヨーゼフさんに、現金な俺は好印象を持つ。

 いや、この呼び方はよくないな。同じ教師としての振る舞いを求められているのだから、キチンとヨーゼフ先生と呼んだ方がいいだろう。


「始めまして、レオンハルト・ハーンと言います。どうぞ、気軽にレーヴェと呼んでください。先達のお二人には何かと相談する事になると思いますが、よろしくお願いします」


 ヨーゼフ先生達は、「おお、よろしく頼むぞ」と笑いながら応じてくれた。

 これから、主にヨーゼフ先生とレオ先生が俺の同僚として一緒に働いていくわけだが、最初の印象が良かったためかうまく付き合っていけそうな気がする。


「始めまして、ハーン先生。私は、イリス・フライヤー・フォン・ナイツェルと言います。授業は、魔術及び魔術理論を担当しています。私も、レーヴェ先生とお呼びしてもよろしいですか?」


 ヨーゼフ先生達とのやりとりが終わると、魔術を教えているというイリス先生が挨拶してきたので、勿論ですと返事をしつつ挨拶を返す。


 なんでも、騎士や伐剣者は魔術関係の授業を履修しているらしく、戦闘技術の教官とも生徒達の情報のやり取りをすることが多いとのこと。

 そのため、これからも何かとよろしくと言われた。


 なるほど。生徒達も戦闘技術の授業を受けるだけじゃないので、そういう繋がりもあるわけだ。

 今はあまりピンと来ないが、いずれ何らかの形で生徒の情報が必要になるかもしれないし、心に留めておくか。


 それより、この人も貴族なのか。

 やっぱり、帝立学院の教員だけあって、貴族が多いのかな?あっ、でもフリッツ先生は違ったな。


 そんな事を思いながらイリス先生を見つめていると、ヨーゼフ先生が「イリスは既婚者じゃぞ」とからかってきた。


 そんなつもりで、見ていた訳じゃないのに。いや、確かに綺麗な人だなとは思ったけどもさ。

 …まさか、そうした心の内まで読めるのか?!恐るべし、元近衛騎士団長!


 俺が唖然としていると、ヨーゼフ先生は苦笑しながら「すまん。冗談じゃ」と謝ってくる。


 冗談かよ!!てっきり、心を呼んだのかとビックリしただろ。

 いかん。ここで、声や表情に出すと絶対にややこしいことになる。


 そう思い動揺を隠しながら、ヨーゼフ先生の後に続けて会話を続けて話してみると、どの先生も気さくな質で俺が思っていた貴族らしい傲慢さなどとは無縁な感じだった。


「そういえば、今日から教えるのじゃろ。儂が言うのもなんじゃが、伐剣者時代のノリでやると失敗することもあるから注意しておけよ」


 そうして、打ち解け始めた時にヨーゼフ先生からアドバイスを受けるが、そんな話は聞いていないぞ。


「もう、学期も始まっていることも伝えていますし、そのつもりとこちらも思っておりました」


 そうすると、横からフリッツ先生が戸惑いながら声をかけてくる。


 ああ、確かに学期が始まってるなら、他の生徒と差を作るわけにはいかないから当然か。 

 しまったな。本来であれば、面接に受かった後にでも聞いておくべき事だったのに、ついつい忘れてた。


 何時、どれくらいの時間が割り振られているかも知らないのは流石にマズイと、ヨーゼフ先生達に戦闘技術の授業について話を聞きいていく事にする。


 そうして聞き出した話によると、戦闘技術の授業は週に二回あり、丸一日を使って行うもののようだ。

 さらに、授業内容は教師の裁量に委ねられているものの、年度末に学院の指定する試験があるため、それを越えれるレベルに鍛え上げる必要があるらしい。


 なんて丸投げ、もとい自由度の高い授業なんだと思っていると、フリッツ先生が「はい、そこまでにしましょう」と声をかけてくる。


「顔合わせはこの辺で終わりにしましょう。彼等と私、それと今はいないですが、あと何人かの先生達が一年次の担当となります。では、そろそろ生徒達も集まり始めているでしょうし、私たちも修練場に向かいましょうか」


 あの施設は修練場って言うのか。そのことを心のメモに書きながら、俺はフリッツ先生に促され教える予定の生徒達、対面を果たしに修練場に向かって歩き出して行く。


 最初は伐剣者を辞めるために教師になったが、何かの縁で俺の生徒になるんだ。

 それに、学院の説明では優秀(・・)なとは言ったが、ランクも実績も話していない伐剣者のクラスに移るんだ。相当悩んだり、考えたりしただろう。


 そうして移る覚悟を決めた生徒達には、全力で向き合わなけりゃ失礼だな。



 そう、決意を新たに生徒達との初顔合わせに挑むのだった。


2017.6.27 呼称の修正とともに加筆しました。

◇◆◇◆◇◆

【爵位】

・ジギスムント帝国における貴族の位階。大公から始まり男爵に終わる。


【各爵位】

・大公[グロスヘルツォーク]

 皇帝が幼い場合など補助が必要な際に、皇帝が成人するまで補佐するための位階。

 公爵家同士の互選によって決定される臨時の爵位。

・公爵[ヘルツォーク]

 皇族(皇帝の血族)が叙爵される位階。

 ジギスムント帝国には五つの公爵家が存在する。

 常駐する騎士団の他に自身の領軍を組織できる。だだし、騎士団への命令は、皇帝の勅許が必要。

・侯爵[フュルスト]

 建国からの忠臣が叙爵された位階。また、建国後においても功績によっては陞爵されることがある。

 臣下の最上位の位階でジギスムントには、7つの侯爵家が存在する。

 常駐する騎士団の他に自身の領軍を組織できる。だだし、騎士団への命令は、皇帝の勅許が必要。

・辺境伯[マルクグラーフ]

 危険領域周辺を領地に持つ領主に与えられる位階。

 魔獣からの被害を防ぐため、領軍の組織すると共に、緊急時には皇帝の勅許なしに皇軍たる騎士団に命令する権限を与えられている。

・伯爵[グラーフ]

 ここから、上位貴族と呼ばれることになる位階。

 常駐する騎士団の他に自身の領軍を組織できる。

・子爵[ヴィズガウント]

 下位貴族と言われる位階。

 領地を持つ者もいるが、多くが帝都で国の仕事をしている。

・男爵[フライヤー]

 子爵の説明に同じ

【称号】

・騎士[リッター]

 騎士の中において、優れた功績を残した者に送られる称号。

 この称号を持つ者は、一代限りだが男爵と同程度の権利を保証されているため貴族として扱われる。そのため、称号としての騎士と役職としての騎士とは異なる取り扱いがされる。

 

【貴族の名前】

 ジギスムントでは、貴族は「個人名・爵位(or称号)・フォン・姓」のように名乗る。

 爵位は家という意味もあり、婚姻によりその家の爵位に変更される。


(例1)「ヨーゼフ・フュルスト・フォン・ラッツウァイト」の場合は、ラッツウァイト侯爵家のヨーゼフという意味になる。

(例2)「イリス・フライヤー・フォン・ナイツェル」は、婚姻によりナイツェル男爵家に嫁いでおり、爵位がフライヤーに姓がナイツェルに変更された。


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