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初恋  作者: 日下部良介
86/109

86.おみくじ

 賽銭を置いて、両手を合わせて願い事を唱える。唱え終わってからチラッと彼女の方を向く。彼女はまだ願い事を唱えている。僕の視線に気付くと、にっこり笑って一礼した。

「どんな願い事をしたの?」

「内緒」

 僕の問いかけに悪戯っぽい笑みを浮かべて彼女はそう答えた。


 参拝の後、二人でおみくじを引いた。彼女が僕のおみくじを覗き込む。僕のは“小吉”だった。

「あら、ずいぶん中途半端ね」

 僕は苦笑する。

「坂本さんは?」

「内緒」




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