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初恋  作者: 日下部良介
69/109

69.涙

 彼女は目からは涙を滲ませていた。


 最終回、二死から彼女のエラーがきっかけで同点に追いつかれた。それさえなければ勝てた試合だった。


 試合後、彼女の表情は明るかった。駅に着いて別れた時も。

 学校を出て一人になったら込み上げて来たのに違いない。

 僕はそんな彼女の表情を写し取っていった。その絵を見て彼女は苦笑した。

「今の私ってこんな顔をしてるんだ」

「今日の事は…」

「うん、解ってる」

 もう彼女の目から涙は消えていた。




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