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初恋  作者: 日下部良介
55/109

55.ベンチ

 僕は木原に促されてうちのチームが入った三塁側ベンチ上の観覧席へ移動した。

 もし、うちのチームが一塁側だったら、僕は木原と一緒に残っていた。それには理由があった。

 移動した先ではすぐに尚子が隣の席を示し、僕はそれに従った。


 試合前の練習を終えた選手たちがベンチに戻ってきた。

「桂子、頑張ってね」

 尚子の呼びかけに彼女が答える。

「任せといて…」

 そして、僕の方を見る。

「島田君、いい絵を描いてね」

 僕は黙って頷いた。


 


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