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初恋  作者: 日下部良介
38/109

38.一瞬

 尚子は少し後ろを歩く彼女に見せつける様に僕の腕を取った。

 彼女は後ろからどんな気持ちで僕たちを見ているのだろう…。

「金魚すくいやりたい」

 そう言って露店の前にしゃがみ込む尚子。浴衣の袖をまくって臨戦態勢に入る。僕と彼女はその後ろに並んで立った。

 その時彼女の手が僕の手に絡んできた。僕は驚いて思わず声を上げた。

「あっ…」

 彼女がもう片方の手で口元に人差し指をあてた。きれいな指だ…。

「内緒よ」

 小さな声で呟く。




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