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初恋  作者: 日下部良介
28/109

28.一言が言えない…

 何も言わずにしばらくその絵を見つめていた彼女が呟いた。

「きれい…」

 言ってから恥ずかしそうに言い訳をする。

「あ、いや、絵がキレイだと言ったのよ」

 彼女が言い訳したのはその絵が彼女の絵だったからだ。彼女は自分で自分を“キレイ”だと言ったと勘違いされたら…。そう思ったのだ。

「ありがとう」

 僕は素直に礼を言った。

「もっと書いて」

「えっ?」

「もっと私の絵を書いて…。イヤ?」

 言葉に詰まった。「いいよ」その一言が。





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