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16.ゴールの先
ピストルの音と同時に飛び出す。
途端に周りの空気が絡んできて抵抗する。
僕はかまわず地面を蹴る。
やがて、空気と一体になる。
ライバルたちの足音も聞こえない。
景色は流れる線になる。
走るのはいい。
何も考えなくて済む。
風が僕の身体を運んでくれる…。
最後の力を振り絞る。
ゴールを見据えた僕の視界に彼女が見えた。
「修平!」
彼女の声だけが僕を誘う。
僕は心の中で叫んだ。
「桂子」
そして、僕はゴールを駆け抜け彼女の元へ…。