マリアナ沖大海戦 18
『日本機動艦隊発見!大型空母2、重巡2、
駆逐艦6以上!サイパンの南東およそ165マイルの地点!」
6月21日午前7時28分頃、
米空母バンカーヒルから発艦した
TBMアベンジャーが先行する
第二機動艦隊を捕捉した。
この時点で、日本艦隊と米艦隊の距離はおよそ
150マイル(約240km)。
双方攻撃を行うには最適な距離である。
しかし、米機動部隊を預かるマーク・ミッチャー少将は
ただちに攻撃隊の発艦を命じることは
できなかった。
今から15分ほど前に日本軍の偵察機が
艦隊の上空に現れ、こちらの情報を
日本空母に通達している。
機体を発艦させる時間を考慮しても、
日本軍攻撃隊がこちらの上空に
到達するまで1時間前後しかない。
その間に攻撃隊をすべて発進させて、
さらに十分な数の迎撃戦闘機をあげることは
不可能であった。
攻撃か、防御か、
彼の決断は――――――
「これ以上空母を失うわけにはいかぬ!
ただちに全戦闘機を迎撃に向かわせよ!」
第58任務部隊の各空母が一斉に
風上へ直進する。
およそ20分ほどでF6Fヘルキャット369機が
唸りを上げて日本軍機迎撃に飛び立った。
・・・・・・・・・
「米空母発見!」
午前9時08分、第一機動艦隊を
から放たれた日本軍攻撃隊284機
(32機は米艦隊と接触できず帰投)が
サイパン南東260マイルを航行する
米空母部隊を捉えた。
無論、米軍のレーダーも70マイル手前から
日本軍機の接近を探知している。
艦隊から機上電話で誘導されたヘルキャットたちが
日本軍機に牙を剥いた。
300機以上の黒い悪魔が
日本軍攻撃隊に優位高度から
覆い被さるように降下してくる。
熟練者はその初撃を回避したが、
経験の浅い新米の機体は真っ赤な火炎を
吹き出し、みるみる高度を落としていく。
「全機突撃!!米空母を撃破せよ!」
攻撃隊指揮官、村田重治少佐が命じた。
空を埋め尽くさんばかりの迎撃戦闘機を
突破し、さらに米空母を肉薄する。
「魚雷投下!喰らえ!」
攻撃に成功した機は数えるほどしか
なかったが、その攻撃は実に
鮮やかであった。
日米開戦時から米海軍を支え続けた古参空母
エンタープライズは、瑞鶴艦爆隊の爆撃を受け、五十番(500kg爆弾)2発を被弾。
甲板を貫通した爆弾は格納庫内部で炸裂し、
航空母艦としての機能を喪失。
復旧まで半日はかかると思われた。
また、第四任務群所属の空母フランクリンは
村田隊の雷撃によって魚雷2本を浴び、
速力が14ノットに低下。
航空機の発艦が不可能となる。
午前9時半にはすべての日本軍機が
引き上げていったが、
米軍に休む暇などなかった。
空母エセックスの対空警戒レーダーが
新たな日本軍機の接近を捉えたのだ。
午前10時15分、
日本軍第二次攻撃隊212機が
米艦隊上空へ到達。
F6Fの大群がただちに迎撃へと向かう。
たちまち、米機動部隊の前方10マイル上空で
激しい乱戦となった。
日本機の攻撃は執拗で正確であったが、
艦隊上空の航空優勢はなお米軍が握っている。
結局第二次攻撃隊で攻撃に成功したのは
6機のみ。
被害を受けた不運な艦は第二任務群所属の
軽空母カウペンス。
2本の魚雷と4発の爆弾が立て続けに
命中し、手がつけられなくなった同艦は、
僚艦の決死の消火活動の甲斐なく
午前11時12分、海底に消えていった…。