マリアナ沖大海戦 16
第二艦隊と第一任務群らの戦闘も
大詰めを迎えつつあった。
加古、古鷹は既に海上から姿を消し、
衣笠も火災でその動きは完全に停止している。
艦隊を護衛する駆逐艦ももう2隻しか
残っていない。
さらに伊勢も8インチ砲弾のシャワーに
よって第三砲塔弾薬庫に注水しており、
扶桑は第二主砲が射撃不能に陥っていた。
それでも、山城、扶桑ら第八戦隊は
攻撃の手を緩めない。
大破漂流していた米巡サンファン、キャンベラを
海底に送り込み、
火炎と黒煙を吹き出し、
満身創痍のワスプⅡとヨークタウンⅡにも止めを加えた。
だが、彼らの優勢もここまでだった。
天候が徐々に回復し、駆逐艦の魚雷が
使用可能になってしまったからである。
米駆逐艦は海底に消えていった仲間の敵を
討つべく、鬼のような形相で突撃を敢行した。
「左舷敵艦接近!」
「副砲で追い払え!」
扶桑、日向、伊勢がありったけの副砲を
乱れ撃ちし、弾幕を作り出す。
射撃は正確で、いくつか命中しているものも
あった。
それでも、米駆逐隊は速度を緩めず、4隻の駆逐艦が
距離4000で魚雷32本を放った。
「面舵一杯!」
4艦はそれぞれ舵を切り、水面下から
迫り来る爆薬の塊を懸命にかわそうとする。
しかし、回避するには距離が近すぎた。
凄まじい轟音と共に、扶桑型の艦橋を
遥かに超える巨体な水柱が何本も
屹立した。
水柱がすべて消えた時、扶桑の姿は
もう海上にはなく、
伊勢、日向も左に大きく傾斜し、
沈没間近の状態だった。
扶桑は転舵が間に合わず、魚雷5本の直撃を
食らい、弾薬庫を誘爆。
竜骨が折れて即座に沈没してしまったのだ。
「これまでか・・・
皆、本当によくやってくれた。
砲戦中止!!第二艦隊は残存艦をまとめ、
撤退する!」
6月20日午後5時05分、
松田中将は反転を決断。
第二艦隊は北へ離脱し、
日米の水上砲戦は幕を閉じた。
日本側の損害は
戦艦損失3、
旧式重巡洋艦沈没3、
駆逐艦損失4、
アメリカ側の損害は
正規空母4、
軽空母3、
重巡洋艦5、
軽巡洋艦4、
駆逐艦8
であった。