表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永久の戦艦 大和  作者: 呉提督
71/88

マリアナ沖大海戦 13

ここにも脳みそをフル回転させる

男がいる。


米第5艦隊司令長官

レイモンド・スプルーアンス大将。

合衆国大統領フランクリン・ルーズヴェルトより

日本の息の根を止めることを命じられた人物である。


作戦は米軍側の圧倒的有利で始まった。

12隻の正規空母と6隻の軽空母、

10隻以上の戦艦。

搭載航空機は1500機。

護衛艦艇は80隻近く。



負けるはずのない完璧な布陣だった。



だが、数々のイレギュラーによって

雲行きが怪しくなっている。




第一にサイパン島やテニアン島の日本軍航空隊が

想像以上に手強かったこと。

パイロットの実力もさることながら、

多数の偵察機や連絡機、レーダーによって

あらかじめ優位な高度から攻撃をしかけてきた。

600機以上の航空戦力を投入し、

200機以上を失ってもなお彼らは防空戦力を

維持しており、島上空の制空権は奪えていない。



第二にその基地航空隊からの反撃で

正規空母が2隻も沈められてしまったこと。

戦闘機を収容していた一瞬の隙をつかれた。



そして第三に、日本軍の"モンスター"の存在である。

あの戦艦は米機動部隊の精鋭300機が

集中攻撃を加えてもびくともしなかった。

最もそのモンスターも急遽編成した

高速戦艦部隊によって沈められているだろうが。




スプルーアンスは米海軍が日本に

負けることはないと思っていた。

航空機300機以上を失ったものの、

被弾損傷した機体を除外しても

まだ920機が無傷で残っている。



この低気圧が移動すれば、

今度こそ制空権は米軍が握るだろう。

日本の空母機動部隊の行方はつかめていないが、

日本空母の航空機はかき集めてもせいぜい600〜700機。

機上電話とレーダーで誘導されるF6Fと

護衛艦艇の対空弾幕が作り出す防空網の敵ではない。


その判断は決して慢心などではなく、

冷静で正しい考察だった。




ただひとつの例外を除いて。




6月20日、午後1時26分、

米機動部隊の右前方に展開する

第一任務群のレーダーが、

接近する艦隊を捉えた。



スプルーアンスも、機動部隊指揮官の

マーク・ミッチャーも

この艦隊は日本の水上部隊迎撃に向かった

戦艦部隊だと考えた。




しかし、その判断は誤りだった。

探知された艦隊は松田千秋少将率いる

第二艦隊だったからだ。


米軍がそのことに気がついた時、

第二艦隊と第一任務群の距離はわずか

22kmに迫っていた。



「敵襲!敵襲だぁぁぁ!!」



これにより、米艦隊は大混乱に陥った。

第二艦隊は既に米空母に射撃を開始している。


一番最初に地獄を見せられたのは

第二艦隊と距離の近かった第一任務群。

ここには


正規空母 ヨークタウンⅡ、サラトガⅡ、ワスプⅡ

軽空母 バータン

重巡 ボストン、キャンベラ

軽巡2,駆逐艦11


が所属していたが、

駆逐艦は高波に煽られ、思うように動けない。

空母4隻は単独で回避行動をとった。


第二艦隊の砲撃も最初はほとんど

当たらなかった。

波によって艦が激しく上下し、照準がずれるため

である。



それでも午後1時51分、

巡洋戦艦山城の砲弾がヨークタウンⅡを

捉えた。

いくらエセックス級が重装甲といえど、

16インチ砲弾を耐えられるほどではない。

喫水線下から大量に浸水を招いたヨークタウンⅡは

速力を12ノットに低下させ、艦隊から落伍。

以降、日本艦隊の袋叩きにあうことになる。



ほぼ同時刻の午後1時53分、

今度は日向の砲弾が重巡ボストンを直撃した。

艦橋は吹き飛び、主砲はえぐりとられ、

大きく右に傾斜。

同艦は午後2時8分、海底に没した。



米軍もやられっぱなしでは終わらない。

護衛の駆逐艦7隻が煙幕を展開し、

駆逐艦4隻と軽巡オークランド、サンファンが

第二艦隊に猛然と突っ込んできた。



「勇猛だな。敵ながら天晴れなものよ。」


松田は大淀の艦橋で自慢の髭を撫でながら

言い、第六戦隊の重巡4隻に

駆逐艦の排除を命じる。


第六戦隊の青葉型重巡は日本海軍の中では

旧式の重巡ではあったが、

駆逐艦や軽巡を追い払うには十分な性能を

有している。


青葉や加古の主砲が火を吹いた。

対波性の低い米駆逐艦は

やはり動きが鈍い。

瞬く間に2隻が炎上し、航行を停止した。


古鷹、衣笠は

オークランド、サンファンと

砲火を交えている。




「逃がすな!1隻残さず海底に叩き込め!」


扶桑の砲撃も米空母を捉えた。

不運にも砲撃を受けたのは軽空母バータン。

インディペンデンス級の高速軽空母である。

この艦は扶桑の砲弾2発が

艦隊を貫き、機関室で爆発。

全身から炎を吐き出し、火だるまとなって

左舷から波間に消えていった。



米艦隊を追撃する日本艦隊と

必死の逃走を図る米艦隊。

果てしない海戦の行方は・・・



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ