マリアナ沖大海戦 7
「電子戦よ〜い!!始め!!」
大和のマストにZ旗が昇る。
同時に、アルミホイルで作られた
日本海軍特製吹き流しを
全艦が靡かせる。
「これで敵さんの電探、メタメタに狂うだろうぜ」
真田は大和艦橋で笑みをこぼした。
彼の予想はまたしても的中した。
「What!?艦長、敵艦隊が分裂しています!
敵戦艦、10、20、30、58隻だぁ?」
米戦艦のレーダーは吹き流しを
戦艦と勘違いし、どれが本物なのか
わからなくなったのだ。
「黄色い猿どもが!小癪な手を!!」
だが、例え本物がわからなくなったとしても
敵のだいたいの位置は把握している。
「構わん!撃って撃って撃ちまくれ!
投射量で敵を圧倒するのだ!!」
米艦隊はさらに激しい砲撃を行う。
日本艦隊の周囲にさらに多くの水柱が
屹立する。
米最新鋭戦艦10隻の猛攻撃である。
ただ、そのほとんどが当たる気配のない
"無駄弾"だった。
その間にも日本艦隊と米艦隊の距離は
どんどん縮まっていく。
「敵艦隊との相対距離、23km!」
「敵艦隊はまだ見えんのか!?」
「もうしばらくお待ちください!」
ここまでで10回以上の斉射を受けている。
それだけ撃たれれば当然至近弾となるものも
あり、大和の将兵は焦燥を隠せない。
「艦長!撃たれっぱなしは士気に関わります!
発砲許可を!」
最上階の主砲射撃指揮所から若い士官の
焦る声が聞こえてくる。
森下はそれを静かに制止した。
「落ち着け。今撃っても当たらん。」
夜間見張員は水柱によってずぶ濡れになりながらも、
双眼鏡を頼りに目を皿にして
敵戦艦を探す。
そして、午後7時43分、
「艦隊左前方11時方向!
発砲炎視認!!」
大和艦橋の全幕僚が一斉にそちらを向いた。
確かにオレンジの閃光が
漆黒の海上に輝いている。
「ここまでよく耐えてくれた。
左舷砲戦用意!」
森下が全将兵に指示を出す。
艦内の士気は天を衝くほどにまで高まる。
大和は緩やかに面舵を切り、
後続もそれに続いた。
左舷より接近する米艦隊は
取舵を切り、日本艦隊を追い越して頭を
抑えん、と速度を上げた。
お互い単縦陣による同航戦である。
「左舷砲戦!
目標、敵艦隊先頭、アイオワ級!
弾種徹甲!
距離19200!
全主砲発射用意!」
艦内に主砲発射を示すブザーが
鳴り響く。
ここまで、長かった。
1921年のワシントン条約で
日本は苦汁を飲まされ、
アメリカに従うしかなかった。
それから日本は急速に力をつけ、
世界に誇る長門型、武蔵型を
作り上げ、
そしてこの大和を
建造できるにまで至った。
その大和は今、米戦艦に
その力を見せつけようとしている。
この戦争で失われたすべての
命のために、
戦争を終わらせるために。
「撃ち方、始めぇぇぇぇ!!」
刹那、神の鉄槌とも言うべき
轟音が太平洋にこだました。




