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永久の戦艦 大和  作者: 呉提督
64/88

マリアナ沖大海戦 6

6月19日 午後1時



日本海軍第一艦隊は遂にサイパン島

北部海域に到達した。

海面のうねりはさらに酷くなり、

波も激しさを増していた。



『気象班より艦橋、気象班より艦橋、

サイパン島東の海域に巨大な低気圧を

確認。勢力を強めながらこちらに

向かってきています。』



気象士官から艦内電話で報告があった。

敵は米空母だけではないらしい。


「視界が奪われれば砲戦は我々が

不利になります。海戦の邪魔を

されなければいいのですが・・」


せっかく順調に進んでいる作戦を

こんなところで水の泡にしたくはない。

こればかりは天に祈るしかなかった。


艦隊はここからさらに東進し、

米軍に艦隊決戦を挑む。

全海軍軍人が待ち望んだ艦隊決戦。

日本海軍が対米ドクトリンとして

磨きあげてきた艦隊決戦。

それがいよいよ行われる。

真田も胸の高鳴りを押さえきれずにいた。




その時はやってきた。

日没後の午後6時30分、



『対水上電探に感あり!

敵艦隊30以上、東方より本艦隊に高速接近中!』


東方に味方がいるはずがない。

米戦艦部隊が日本艦隊を叩きのめすべく、

その姿を現したのだ。



「艦隊、第四警戒航行序列に移行!

全艦、砲戦用意!!」


艦隊を指揮する宇垣中将の声も

熱を帯びていた。

この決戦を誰よりも待ち望んでいたのは、

生粋の大艦巨砲主義者の宇垣だったのかも

しれない。



日本艦隊は陣形を変更し、

先頭に大和、その後方に

武蔵、信濃、長門、陸奥の順で単縦陣を

形成した。陸奥の後ろには重巡が続き、

軽巡や駆逐艦は戦艦や重巡の周囲を

固める。



日本艦隊と米艦隊はほぼ正面衝突するような

形で、どんどん距離を縮めていく。


最初に砲門を開いたのは米艦隊。

相対距離32kmの地点から

第一斉射を放った。


当然日本艦隊は米艦隊が射撃を

開始したことなど知らない。

45秒後に砲撃が着水して、

始めて敵の発砲を知った。



「敵弾飛来!第二射来ます!」



米軍の艦砲が"レーダー"と呼ばれる電波探信儀と

リンクしていて、

正確な射撃を行ってくることは

真田たちも知っていた。


そこで彼らはとある秘策を考えた。



「真田、"例の作戦"はまだかね?」


「まだです。敵の射撃はまだこちらの

情報を集めながら修正している、

いわば"試し撃ち"の段階です。

敵弾が命中するまではまだかかります。」



真田の言うとおりだった。

米艦隊の射撃は無数の水柱こそ

作り出したものの、直撃したものは

ひとつもない。


ただし、敵の砲撃がだんだん正確に

なっているのも確かなのだ。


4回ほど斉射を受けると、

かなり近い位置に砲弾が

落下するようになっていた。



「長官、そろそろです。お願いします。」



「わかった。旗流信号用意!!Z!

掲げぃ!」


大和の後部マストにZ旗が

高々と掲げられた。


『皇国ノ荒廃此ノ一戦二有リ。

各員、一層奮励努力セヨ。』


日本海海戦で東郷平八郎が座乗した

連合艦隊旗艦三笠に掲げられた

栄光の旗流信号。


しかし今回、この信号には

さらに驚きの戦法を実施する合図の意味も

含まれていた。



「電子戦よ〜い!始め!」



次の瞬間、日本艦隊の全艦に

巨大な銀色の旗が昇ったのであった。


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