表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永久の戦艦 大和  作者: 呉提督
57/88

海の男たち

1944年 4月


連合艦隊最大の泊地、柱島。

ここにその巨艦はひっそりと錨を降ろしている。

全長302m、排水量10万トン以上。

世界最大の艦砲、51cm砲8門を搭載。

それ以外にも、三重に覆われた装甲、

炭酸水素ナトリウム消火剤等、

日本の技術のすべてをつぎ込んだ最強の不沈艦。


「大和…何度見ても島にしか見えんな…」


それは大和の産みの親と言っても過言ではない

真田でさえ、畏敬の念を抱くほどの船であった。


内火艇を接舷させ、大和に乗り込むと、

第二主砲塔の横に見慣れた顔がいた。


「牧野造船大佐!」


「真田中佐、ご無沙汰しております。

最後にお会いしたのは確か…」


「昨年の12月です。

それからお互い大和の試験や次期作戦の打ち合わせで

多忙になってしまったので。

今日は大和の点検ですか?」


「まあそんなところです」


そんな話をしていると、

牧野の隣にいた男が

いきなり真田の右手をがっちりと掴んだ。


「貴様が真田正樹中佐か。

戦艦大和艦長森下信衛だ。」


彼の力強い握手と豪胆な笑いは

潮風を浴び続けてきた海の男の香りがした。

この森下は戦艦伊勢や榛名の艦長を歴任し、

その後大和の艤装員長として

大和建造に携わってきた。

よって大和の性能は隅から隅まで知り尽くしている。


「お初にお目にかかります、森下大佐。

連合艦隊司令部参謀改め、4月から第一艦隊

参謀長を務めさせていただきます。

真田正樹です。」


「貴様の活躍はよく聞いている。

牧野造船大佐の話によれば、この艦の建造を

最初に主張したのは貴様だそうだな。」


「はい…。ですが、私ひとりの力ではどうにも

なりませんでした。

牧野さんをはじめ、多くの方の努力の結晶が

この戦艦なのだと思っております。」


真田の脳裏に多くの顔が浮かび、そして消えた。


自分を海軍の道に導いてくれた叔父。


最初は反対していたものの、最終的には

大和建造を承認し、志半ばで無念の戦死を遂げた山本元帥。


いついかなる時でも自分を支えてくれた妻、京子。


今はもう予備役となってしまった叔父の

元部下佐久間中将や、航空参謀福原大佐。


彼らの協力なくして大和はありえなかった。



「なるほどな。それで敵さんはいつ

やってくる予定なんだ?」


「それについてはまたのちほど。

GF司令部を日吉に移しておりますので。」



そう。

今回の決戦にあたり、連合艦隊司令部は

複数の部隊を柔軟に動かす必要性があるとして、

無線封鎖の必要がない陸上に司令部を

移すことを決定。

その移転先となったのが日吉台の地下なのである。




「兵士たちの訓練は順調ですか?」


「ああ。さすが帝国海軍選りすぐりの

精鋭たちだ。主砲射撃、対空戦闘、応急修理、

どれをとっても優秀な人材が揃ってる。

貴様の期待に応えられると思うぞ。」


森下は自身の後方で甲板を磨く兵士たちに

視線を送った。

皆、キビキビとした動きをしている。


(ならば今度は俺がその期待に応えないといけない。

彼らを無駄死させないためにも!)


夕日に照らされた甲板と主砲を

見つめながら、真田はひとり決意を新たにしたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ