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永久の戦艦 大和  作者: 呉提督
36/88

見過ごされた欠陥

激動の1942年も、いつの間にか5月に突入している。

A-150は、建造開始から早2年。

300mを超える船体は既にほとんど完成し、

7月に進水式が行われる予定だ。


呉海軍工廠では、リベットを打ち込む音が

ようやく鳴り止み、進水式に向けた準備が

始まっていた。

潮の満ち引きや、進水時の住民の取り扱いなど、

必要事項の検討に入っている。



4月にインド洋で生起した

イギリス戦艦部隊と日本海軍戦艦部隊の

一連の海戦は、モルディブ沖海戦(日本側呼称)と

命名され、日本戦艦の優秀さが改めて

証明された。


また、この戦闘では、防御力に難ありと

されていた扶桑型戦艦4隻が極めて軽微な

損傷で済んだことから、

「戦艦同士の撃ち合いは、先に命中弾を得たほうが

圧倒的に有利」との研究結果が提出された。


いかに高い防御力を持っていようと、

同じ戦艦の砲弾を受ければ損傷を負う。

戦艦の主砲はとても精密なもので、

たった一発の被弾でターレットリングが

破損して主砲の旋回が不可能になったり、

被弾による浸水傾斜で主砲の射撃が

不可能になったりする。


この理論は大正時代から真田孝幸らによって

提唱されていたものであり、

孝幸らの主張が正しかったことも認められた。



真珠湾、マレー沖海戦以来の大勝利に

浮き足立つ海軍であったが、

正樹はそうもいかない。

6月に行われるMO作戦の計画研究を

進める必要があったからである。



連合艦隊のアドバイザーとして

徹夜で研究に取り組む真田だが、

正直この作戦は軍令部のメンツの

ためのようなものだ。

連合艦隊の立案した真珠湾攻撃が大成功し、

さらにはインド洋作戦も成功しつつある。

元々米豪遮断作戦と漸減邀撃を唱えていた

軍令部からしてみれば、屈辱極まりない。

軍令部と言っても、第一課の参謀はほとんど

真田論支持であり、真田論反対派で、

この強引な作戦を押し通せる人物は

真田の知る限り1人だけだ。



(俺に仕返ししたいわけだな)


真田もそれに気付きながら、

あえて反論せず、

MO作戦のプラン完成に動く。


といっても、事前の図上演習では

好ましい結果はまったく得られていない。

なぜなら、母艦航空隊は定員ギリギリであり、

真珠湾からの連戦で第一航空艦隊も

少なからず消耗、五航戦搭乗員が引き抜かれた結果、

今の五航戦搭乗員は飛行時間がまったく足りなく

なっている。


軍令部からの指令では、

ポートモレスビー飛行場を攻撃して

敵機動部隊を引きずり出し、

これを撃滅せよとのことだったが、

敵機動部隊を引きずり出すどころか

ポートモレスビー飛行場の空襲すら

難しい。

2日前に武蔵で行われた演習では

ポートモレスビー攻撃で艦載機の4割を

失う結果となった。


五航戦司令官原忠一少将も

搭乗員の錬成に努めてはいるが、

それでも間に合わないであろう。


真田はGF司令部と軍令部に作戦計画の変更を

度々求めてはいたが、受け入れられるはずもなく、

日本海軍は慢心と欠陥を抱えたまま、

MO作戦に突入したのである。

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