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永久の戦艦 大和  作者: 呉提督
33/88

インド洋方面作戦 4

「いったいどういうことですか!」


4月のよく晴れた日、連合艦隊旗艦武蔵に

真田の叫び声が響き渡った。


「真田くんか。ここに来たということは

君の耳には既に入っているのだな。」


そう。彼は山本に文句を言いに来たのだ。

山本が希望したというMO作戦に。


当の山本は連合艦隊参謀渡辺安次少佐と

将棋をさしていた。

渡辺少佐の表情から察するに、山本優位なのだろう。


「MO作戦などやるだけ無駄です!

今はそれよりもマリアナ諸島の要塞化を

すすめるべきです!」



山本が手元の銀を盤面に打ち込んだ。

渡辺少佐の顔はさらに険しくなる。


「しかしな、米空母の動向が気になるのだ。

ツラギやラバウルに散発的に空襲を

仕掛けてきていてな。」


「それは米軍の悪あがきです。

先の真珠湾攻撃で米軍は450万バレルの

石油を失いました。

おそらく米空母は本土から回されてきた油槽船からの

補給でギリギリ活動できているのでしょう。

相手にしなければいずれ作戦行動不可能に陥ります。

今は搭乗員を休ませ、決戦を避けるべきです。」



真田はあくまで冷静に説明した。

米軍は司令長官がキンメルからニミッツという

人物に代わったらしいが、あれだけ破壊しつくされた

真珠湾でできることなどなにもない。

日本のアキレス腱であるマリアナ諸島を直接狙ってこない

のがなによりの証拠である。

米軍は日本空母との決戦などできる状態ではないのだ。

重油タンクの破壊で航行するのがやっとの

燃料事情のはずだ。

ならば今はイギリスと国民党の息の根を止めるのが

先決であり、同時にサイパンに決戦場をつくるのが

先だろう。



真田はこの旨を山本に丁寧に説明した。

一方の山本は手慣れた手つきで

金を盤面に打ち込む。

渡辺少佐が「参りました」と頭を下げた。

頭金による対局終了だ。


対局を終え、山本は真田の方を向いた。

彼には珍しく生気のない顔をしていた。


「君の意見には一理ある。

だが逆にこれは好機でもあるのだ。

米軍は空母を動かすのも一苦労なところまで

追い詰められている。

ここで米空母をMOに誘きだし、撃滅できれば

講和の機会が訪れるかもしれん。

そうならなかったとしても空母は潰さねばならん。」



山本はやはりまだ心のどこかで真田の

戦略、長期戦に懐疑的だった。

開戦から今日に至るまで負けられない、負けてはいけない

戦の連続だった。

早く戦争を終わらせたいと思っても無理はない。


「おそれながら、我が機動部隊は開戦以来

連戦続きで少なからず消耗しています。

五航戦の搭乗員は一、二航戦に引き抜かれ、

今五航戦に残っているのは着艦がやっとの

未熟者ばかりです。

これでは米空母どころかポートモレスビー上空の

制空権確保すら怪しくなります。

幸いポートモレスビーに配備されている連合国の戦闘機は

F4F数十機を除いてほとんど陸空軍機です。

洋上飛行能力はなく、こちらの害とはなりません。

作戦は中止すべきです。」



だが、山本は頑として首を縦には振らなかった。

航空主兵の最先端を行く山本としては

米軍の稼働可能空母が太平洋に3隻

(エンタープライズ、ホーネット、ヨークタウン)

もいることが心配で我慢ならないらしい。



「ここで無理しなければ日本は負ける」


山本のこの一言に説得を諦めた

真田は静かに司令部を後にした。




・・・・・・・





その頃、日本から遠く離れたインド洋では、

本土でのいざこざなど知るよしもなく

南雲機動部隊が次の作戦に移ろうとしていた。

シンガポールからやってきた輸送船から

物資と機材を補給した正規空母6隻は

護衛の巡洋戦艦(扶桑、山城、伊勢、日向)4隻と

巡洋艦2隻、駆逐艦12隻を引き連れ、

インド洋に消えていった…

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