Z部隊撃滅戦 1
本土が真珠湾攻撃成功に歓喜している中、
南方ではもうひとつの重要な作戦が
行われていた。
マレー半島上陸作戦である。
日本が大東亜戦争を遂行するにあたり、
資源の確保は死活問題であった。
日本が戦争に必要な資源を確保するためには
フィリピン、インドネシア、ベトナムをはじめとする
東南アジアの資源地帯をおさえなければならなかった。
この南方作戦において、日本にとって最大の障害と
なったのがイギリス海軍東洋艦隊、
通称Z部隊である。
Z部隊は、イギリス軍の要塞がある
シンガポールに拠点を置く艦隊で、
陣容は
戦艦:1
巡洋戦艦:1
装甲空母:1
軽巡洋艦:2
駆逐艦:6
という、大艦隊だった。
ここでZ部隊について少し紹介しておきたい。
旗艦を務めるのは戦艦プリンス・オブ・ウェールズ
(以下ウェールズと表記)。
イギリス最新鋭戦艦キングジョージ五世級の2番艦
であり、28ノットの速力と高い防御力を
備えているものの、火力にやや難があった。
また、1941年の5月にドイツ戦艦ビスマルクと
交戦し、僚艦フッドを失い、自身も大破。
結局ビスマルクを取り逃がすという不幸艦でもあった。
チャーチル首相のお気に入りでもあり、
彼はこの戦艦を"不沈艦"と称した。
巡洋戦艦レパルスは、レナウン級巡洋戦艦の一隻で、
建造されたのは第一次世界大戦前と古いものの、
近代化改修によって31ノットの速力と
38cm連装砲6門を手に入れた。
装甲空母インドミタブルは
装甲空母イラストリアスの改良型であり、
格納庫天蓋部分上面に76mm、
それ以外の飛行甲板にも38mmの装甲が
張り巡らされ、1000ポンド爆弾の直撃にも
耐えうるとされている。
また、搭載機数もイラストリアスの36機から
45機に増えており、Z部隊の航空兵力を
担うには十分であった。
1941年11月にジャマイカのキングストンで
座礁。アメリカで修理され、
同年の年末にZ部隊に合流した。
この3隻の主力艦を護衛するのは2隻の軽巡洋艦と
6隻の駆逐艦で、駆逐艦の1隻はオーストラリア海軍籍
である。
日本海軍は開戦の前から
この艦隊の動向に目を光らせており、
1942年1月3日にはアナンバス諸島とチオマン島の間に
機雷を設置。
また、第四、第五潜水戦隊の潜水艦12隻が
交代でシンガポール沖を哨戒し、
Z部隊の出撃を警戒していた。
真珠湾攻撃開始からおよそ2時間前の
1月5日午前1時、陸軍がマレー半島に上陸。
イギリス軍との戦闘を開始。
午前5時半、サイゴンから発進した第二一航空戦隊の
美幌航空隊、元山航空隊がシンガポールを爆撃。
この爆撃に参加した九六式陸攻の1機が
『シンガポール二戦艦二隻ヲ確認』
と報告している。
6日午後3時20分、
「艦長、見てください、Z部隊です!!」
伊65潜水艦がシンガポールを出港し、
北東へ進撃するZ部隊を補足。
マレー沖海戦が始まろうとしていた。