極超弩級戦艦
1939年 5月
51cm連装砲の開発成功の知らせに、牧野は喜んだ。
「実は先日、幸助くんたちと図面を引いて
みたんです。」
机の上に広げられる図面は
かなりの規模である。
「この船には沈まないための
ありとあらゆる技術を詰め込みました。
装甲はすべて二重とし、重要区画は三重に。
高角砲も対航空機を想定して、一号艦の6基12門から
18基36門に増やしました。
高角砲は旧式の12,7cmから、新鋭駆逐艦、(秋月型防空駆逐艦。
1941年より量産開始)の長10cm砲に変更。
これで、連射速度と射程が上昇します。
機関は最新式のディーゼルタービンを搭載します。
これで30ノットの高速を叩き出せます。」
ディーゼルタービンは重油を燃焼させて
発電し、スクリューを回す機関である。
最新式であるがゆえに故障が多く、
一号艦への搭載は見送られていた。
「さらに、新たに開発された
対空電探、水上電探も装備します。
これで敵の駆逐艦や航空機からの奇襲を
防げます。」
これだけでもかなりのものだが、
牧野にはまだ秘密兵器が残されていた。
「そして、最大の特徴が、装甲に流し込んだ
スポンジとゴムです。
従来の装甲だと、魚雷で穴があいた時、
水圧によって装甲が破壊され、予想外の損傷を
受けていました。
しかし、その装甲にゴムとスポンジを流し込むことに
より、水圧を軽減し、魚雷による被害を最小限に
食い止めます。
それから、ナトリウム消火剤による自動消化装置ですね。
レバーひとつで簡単にナトリウム消火剤が散布され、
火災を防いでくれます。
いかがですか?」
すごい、なんてものではない。
こんな設計ができるのは日本人だけだ。
超弩級戦艦を超えた、極超弩級戦艦だ。
この船が海に浮かぶ時、日本海軍は世界最強になるだろう。
「基準排水量は10万9000トン、
満載排水量は12万トン。
小型化を試みましたが、これが限界でした。」
資材、資金、ドック、問題は山積みだ。
だが、必ず完成させてみせる。
この国を、日本を守るために。
真田は決意を新たに、計画の作成にとりかかるのだった。