星夜の誓い
雪が降っていた。
音も無く、静かに静かに降り積もる。
星がただ、藍の夜空で瞬いて。
あたしは冬の女神に取り憑かれた。
時の移ろいの中でも、決して褪せえぬその笑顔。
白銀の世界で君を見失った。
凍て付く風が頬を撫で髪を揺らす。
いつもの景色のその先に、しかし君はもういない。
共にいこうと言ったのに。
行きたいのか、生きたいのか、逝きたいのか。
この時のあたしには、それさえもう分からなかった。
いつも同じ夢を見る。
何度も繰り返し夢を見る。
神様どうか彼を助けてください。そう泣き叫び骸を抱く自分。
叶うことのない願いだと、わかっているから夢を見る。
二度と会えない彼に焦がれ続ける。
あたしのせいで、あたしのせいで。
二度と会えない彼に謝り続ける。
ごめんなさい、ごめんなさい。
彼の姿が、遠い日の母と重なっていく。
どうして、いつもいつもこうなのだろう。本当に嫌になる。
いつ自分は地獄へ堕ちるのだろう?
そんなことばかり、考えていたから。
“彼”を見たとき、遂に迎えがきたのだと思ってしまった。
黒い髪に黒い翼、血を思わせる真紅の瞳。
悪魔か死神だと思っても仕方のない出で立ちだった。
だから。
そんな相手が特別な存在になるなんて、あの月の夜には考えもしなかったのだ。