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鳥籠姫と黒い翼の魔法使い  作者: 飛翔生姜
第二章 楽園の扉を開く鍵
24/118

追憶と初恋の歌






『そういえば、あなたのお誕生日の花、知ってる?』

『花?』

『うん。あなたのはね、ラベンダーっていうの』

『マジでか。うっげぇ最悪』

『ええっ!? なんで』

『だってンなの便所の芳香剤じゃん』

『駄目だよ、王子さまがそんなこと言ったら!』

『うるさい』




 巡る季節を共に過ごした。

 セレナと一緒に。



『あんた花好きだなぁ。飽きねぇの?』

『うん。だって可愛いじゃない』

『ふーん? じゃ、あれは?』

『あれ毒花じゃない。意地悪だよ!』

『“可愛いじゃない”?』

『ふ、ふんだ。花も霞むほど綺麗な女顔の王子さまに言われても』



 セレナは、花のような少女だった。

 儚く頼りなく、それでいて生命力に満ちた優しい娘。

 顔形は十人並みだったけれど、内から輝きが溢れ出ていて眩しくなる。そんな光の花。

 今そばにいる少女とは、似ても似つかない。

 彼女は蝶のようだ、と思う。風に揺られて行き先もままならないような、か弱い印象を受けた。

 長い栗色の綺麗な髪は、日に透かせば黄金のようにも見えた。理知的な鳶色の瞳は利発そうに煌めいて、控えめな微笑は初夏の木漏れ日のような心地良さを与えてくれる。

 手放したくない。

 いつの間にか、そんな風に想うようになっていた。

 こんな気持ちは知らない。分からなくて正直、恐ろしいとさえ思ったほどだ。

 ただ、哀しい顔は見たくない。力になってやりたかった。

 そんな少女に、【あの人】が接触したという。

 偶然か、それとも――――?

 答えは出ない。しかし一つだけ確かなこと。

 ジャスのせいで、【彼女】は【彼女】を殺した。

 そして。

 今ジャスにとって一番大きな存在の少女は、この世界で生きているということ。








「あら、おかえりなさい。元気だった、ユーナ?」

「それどころじゃないわ!」

 執務室の扉を蹴破るなり、散乱する諸々の物体に怯むこともせず距離と詰める友人の気魄に、女王ルフィスは仰け反った。

「え、何?」

「ウルフラーナが来ているなんて聞いてない!」

 誰それ。首を傾げた後、リアのもう一つの名前であると思い出す。

「リアのことね? どうしたっていうの」

「それは私が言いたい! ルフィス、その空っぽの頭で何を考えてる!?」

「暴言だって自覚ないわね」

 これほどまで遠慮なく女王を叱り飛ばす人間は、ユーナをおいて他にいない。

「とにかく策を講じる! レティアが本格的に動き出す前に」

「え? どういうこと」

「!! 知らなか……」

 ユーナの表情が険しくなった瞬間。


「失礼します!!」


 ユーナの声を遮ったのは、新たな闖入者だった。よほど慌てているのだろう、汚い部屋に転がり込む。

「アラン?」

 チュニアール建国以来から続く名家ジルハーツの養子にして次男の青年は、真っ青で叫んだ。

「レティア・ブリュレイクが、監視の目を逃れ、行方が分かりません!」

 いち早く反応したのはユーナだった。

「ウルフラーナの所在は?」

「見当たらない」

 不意に別の声がして戸口を見やれば、ルフィスの恋人ウォルと、ユーナの夫が連れたってそこにいた。旦那といっても別居中で、次に会うのは法廷だと囁かれている。終わりなき冷戦状態は時に周囲さえ巻き込む規模であり、実際に現在、そんな場合ではないというのに室内の温度が真夏にも関わらず急降下している。

「レリアル様は、青い髪の娘と城下を歩いておいででしたが」

 何故か窓の外から声がして振り向く。意外な人物に誰もが目を剥いた。

「クリフ」

 ルフィスはさすがに冷静だった。

「ジャスは?」

「レリアル様と共におられます」

「止めろよ馬鹿!」

 ユーナの夫が怒鳴った。普段はジャスを嫌うふりをしながら、何だかんだで弟のように思っているのだろう。彼の場合、実の妹が難ありな為に現在進行形で苦労しているから尚更だ。

「いえ」

 珍しく、クリフが強く反論した。

「ジャスティス様は、“もう大丈夫”だと仰せられました」

 誰もが瞠目する、その窓の向こう。

 遥か海の上を、黒い翼を広げた少年が、濡れそぼった猫のような少女を抱え、一直線に飛んでいた。


 話は、この日の早朝に遡る。







 部外者が首を突っ込んでいいことだとは、勿論思っていなかったし、それが出来る立場でもないと自覚もしていた。

 それでも、あんな顔は見たくない。瞳を翳らせる憂鬱から、彼を解き放ってやりたかった。

 己が抱える感情の不明瞭さに苛立ち戸惑いながら、少女は指定された場所へと足を向ける。

 ともあれ、長い一日の始まりだった。



「来てくれたんだね」

 数日振りに会う人魚姫は、愛想よく微笑んだ。リアも倣おうとしたが緊張から頬が引き攣り、意識的に相好を崩したが、どうもぎこちない。

「おはよう、リアちゃん。いい朝だね」

「はい、レティも。おはようございます」

 愛称で呼びながら、他人行儀に返す。それは自分自身に対する予防線でもあった。

 リアは正直、レティアに嫌悪の類は抱いていない。寧ろ好ましく感じているくらいだ。それでも。

 ジャスがあの日以来、まともに顔を見せなくなった。

 いや、それなりに顔は合わせるのだが、どうも反応が鈍い。憔悴している、とも言える。

 それと先日の一件を照らし合わせると、元凶――聞こえは悪いが、今現在における状況から鑑みれば、事実と判断しても間違いではない気がする――は、レティアということになる。

 この【楽園】に、自分という存在を導いてくれた世界の鍵。

 恩返しがしたい、というものあったが、何より守りたい。

 だから今、ここにいる。

「堅いなぁ。そういう所はギル君譲りだね」

「すみません」

「むー」

 並んで歩く。向かう先は海だった。

 そもそもリアがレティと会っているのは、こう誘われたからだ。

『海底遺跡に案内してあげる』

 それは唐突に、彼女は語りかけてきた。

 声は、噴水から聴こえた。

『ねぇリアちゃん。もっとお話したいよ』

 甘えた声で強請られ、悪い気はしなかった。それに。

 用があるのはこちらも同じだ。聞きたいこともある。

(セレナさんって、誰なのかしら)

【星空の宴】の皆に尋ねてみようかとも思ったが、ジャスの弱っていく姿を見ていると、騒ぎを大きくして彼に更なる負担をかける懸念が生まれた。さすがにジャス本人に訊くのは憚られ、疑問を持て余していたリアは、もう一人の当事者に目をつけたのだ。

 ジャスには、近づくなと警告された。しかし直前の会話から【セレナ】とレティに何かしらの接点があったのは疑いの無いことであり、それらの打算を抜きにしても、リアはこの気さくで明るい両親の友人を好ましく感じている。誘いを断るのは惜しかった。

 それに、他人の事情を裏で嗅ぎ回るのは良くない、とも思う。

 現段階で正直、リアは迷っていた。ノコノコ来たはいいが、今後の方針としてはどうすべきなのか、決めかねている状態だ。

「リアちゃん?」

「いえ」

 そうして悩むうち、彼女は【そこ】に辿り着いてしまう。






 長髪を背で束ねた男は、その気配に総毛立った。

【海の導】と呼ばれる特殊な空間移動の術。

 操れるのは自分と父、そして妹。

(レティ!?)

 人魚が水を移動するのに、こんな大掛かりな魔法は使わない。つまり、人魚ではない何者かを連れているのだ。それも膨大な魔力を持つ者。

【あの時】は、黒髪の王子。そして今回は――

 男は立ち上がった。

 やめろ。そいつは殺させない。

『ねえ、お願い』

 リアがジャスと共に現れたあの日、遠い記憶の中で、かつて友と交わした約束が蘇った。

『いつか、私と同じ力を持った子が現れたら、その時はどうか』

 白金の髪、真紅の瞳。孤独だった姫将軍。

『助けてあげてね。私を気まぐれで助けたのよ。出来ないなんて言わせない』

 そして、その女に誰より愛された、もう一人の友。

『殿下を、殿下をお守り下さい。あの方こそ私の全てだから』

 攻撃的な血色の眼差しとは裏腹に、腰の低く気の弱い女だった。

『たとえ世界中に責め憎まれても私は……、どうか殿下には黙っていて下さい』

 美しかった二人の友の最期を思い出す。

 それが、数年前の記憶と重なった。

『セレナ……』

 少女の形見である真珠の耳飾りを握り締め、泣いていた。

 男は、黒髪の王子を思った。彼の抱える哀しみを。

 黒い翼の少年を。





 ジャスは夢を見ていた。

 自分がまだ、本当に子供だった頃。

 恐怖と後悔と悲しみの記憶。

(やめろ)

 狂気に曝され、壊れかけた心が絶叫する。

 それでも夢は覚めなかった。

 今日も、また。




 ノアリス・パルーシャ・ラフィリコルゲント。

 それが、ジャスの生き別れたという唯一の姉の名だ。

 彼女が行方知れずとなったのはジャスが赤子の頃の話なので、正直ピンとこない。母親譲りの可憐な美貌を誇り、幼少期から優艶な雰囲気を醸し出す、素晴らしい美少女だったらしい。

 オッドアイ――呪いの赤目を持つ以外は、どこに出しても恥ずかしくないトロナイルの王女だった、と。

 その姉を産み、母は出産を必要以上に恐れるようになったと聞く。何故、呪いの児が己の腹から生まれたのか。ひどく怯え、それでも世継ぎの王子を産む責務からは逃れられず、結局は二度目の出産を迎えることになる。

 そうして、王国の未来を担う世継ぎが誕生した。

 王子の名はジャスティス・ラゾーディア・ヴァロリコルゲント。古き魔女の特徴を全て持った魔の王子。

 母は、壊れてしまった。

 そしてジャスは廃嫡されることもなく、しかし王宮で暮らすこともなかった。

 国内の離宮を転々と、盥回しにされる日々が始まったのだ。時には信頼のおける貴族の屋敷に預けられ、そこで二人の友を得たが、結局すぐ引き離される。

(ねえさま)

 砂の上に、顔も覚えていない姉を描く。

 黒髪、蒼と紅の目、白い肌、優しい――。

 最後のものは、ジャス自身の願望だった。

 父は、哀れむような眼差しでジャスを見る。

 そして母は、ジャスが少しでも視界に入ろうものなら絶叫して暴れ出す。

『汚らわしい……悪魔の児よ!!』

 幼いジャスに、母からの拒絶は何よりも辛かった。そしていつか、姉のようにどこかへ消えればいいのだと望まれていると感じ、自分という存在がいかに空虚で無価値なものかを思い知った。

「ねえさま」

 声に出す。穏やかで優しく、ジャスを疎まずに心からの愛情を注いでくれたという、唯一無二の姉。

 その存在を人伝に知ってから、ジャスは姉の影に縋っていた。

 優しくされたい。頭を撫でてもらいたい。愛されたい。

 朝起きて顔を合わせれば、おはようと言ってくれる母が欲しかった。目を合わせてくれる父が欲しかった。

 幻影ではなく、傍にいてくれる姉が欲しかった。

「たすけて……」

 子供のものには似つかわしくない、溌剌さもなく消え入りそうなほど弱った声に、しかし答えるのは海が奏でる波の音のみ。

 ジャスは砂浜で座り込んでいた。護衛はいない。撒いてきたから当然だった。

「遠くに行きたいなぁ」

 優しい姉の元へ。

 抱きしめてもらえたら、どれだけ嬉しいだろう。

 そんな現実逃避をしながら、仰向けに転がる。砂が服について汚れるだろうが、付き人達はジャスを遠巻きに見るだけで叱るどころか近寄ることさえ殆どないのだ。気にすることは何もない。

 いっそ、このまま眠って波に攫われてしまおうか――。



「そこの僕、一人で何やってるのかな?」



 ジャスは突然の女性の声に振り向いた。慌てて陸を見やるが、そこには誰もいない。恐怖に慄く少年に、第二声がかけられる。

「おーい。こっちだよー僕。海の方ちょっと見てごらん」

 え? ジャスはぎこちない動作で海の方――岩壁に視線を覗かせた。そして瞠目する。

「はんぎょじんだ」

「違う! いや違わないけど」

 青く波打つ髪は珊瑚の飾りが美しく、必要な箇所のみを隠した上反身に驚いた。何あの格好。下半身が魚の女はジャスを見て、にっこり笑った。

「人魚姫さま、もしくはレティと呼んでもらおうかな」

「姫さま?」

「あ、勿論そっちは冗談で――」

「ぼくのねえさま知りませんか」

「はい?」

 レティと名乗る人魚が紅い目を瞬いた。そう、紅い目。姉やジャスと同じ瞳。

「ぼくのねえさま、ずっといないんです。でも、おなじお姫さまなら、なにかしりませんか。あなたとおなじ真っ赤な目をしているんです」

「え、えーと」

 人魚に出くわした早々、驚きもそこそこに尋ねごとをされたのは初めてだ。しかも人間の子供に。普通、怖がるまではいかなくても珍しそうにしないだろうか。

「うーん。ごめん、知らないや」

 なんだか知らないが、少なくともレティの友人にそのような娘はいない。期待させるよりきっぱり告げたほうがいいだろうと、苦笑まじりに肩を竦めた。

「そうですか」

「って、そんなに泣きそうな顔しないでぇ! そうだ、お姉さんにはなれないけど、代わりに私が遊んであげるよ。一人でお絵かきより楽しいでしょ?」

 レティアとしては、暇つぶし一環だった。少年が哀れだったのもある。友人ふたりは娘ができてからというもの数年間、海を訪れてくれない。しぶしぶ違う国の海まで退屈しのぎにやって来たのだ。

 それでも幸か不幸か、ジャスは彼女の心と無意識に掴んでしまった。

 いい意味でも悪い意味でも、この日、王子の運命は大きな変局を迎えたのだ。



 奇妙な出会いから芽生えた感情を、彼らは互いに同情や友情のようなものだと思っていた。だからこそ、最初の頃は本当に楽しく幸せだったのだ。

「おはようレティ!」

「うん、おはよう」

 レティアは欠伸をかみ殺して手を振った。幼い王子はレティに懐いており、毎日早朝から欠かさず浜辺を訪れる。それが捨て犬のように哀れでいじましく、そして愛しく感じたレティアは、彼がひとりにならないよう毎日陸に通っていた。

「レティ、眠いの?」

「うん、ちょっとね。でも大丈夫だよ。今日は何して遊ぼうか?」

「海に行きたい! レティの住んでる遺跡!」

 遺跡、というのは人間の視点からの呼び方で、【海の一族】では単に離宮や別荘といったものだった。

 そしてそこには、異なる種族に生まれながらも、親友だと胸を晴れる女性から託された、大切なものが眠っている。

「いいけど、ちょっと遠いかな。でも、この近くの海なら深い場所まで案内できるよ」

「じゃあ、それがいい!」

「はいはい」

 そうやって、楽しく過ごせればよかったのに。

 レティアと出会って一月ほど経過した頃。父王から、別の離宮に行くよう指示された。今度は山間部に位置する城で、レティアから離れることになる。

 絶対に嫌だった。

「ジャスは、私と離れるのが嫌なんだ?」

「うん」

 岩の上で、頬杖とつくレティアの隣、ジャスは泣きべそをかきながら頷いた。自分に優しくしてくれる、唯一の存在。どうして引き離されなくてはいけないのか。

 そう洟をすすった時だった。

「わかった」

「え?」

 驚いて見上げると、慈愛に満ちた眼差しと目が合った。

「ジャスは、私の傍にいたいのね?」

「うん」

 ここが、本当に最後の選択だったのかもしれない。彼自身の、運命の。

「まかせて。しばらくは無理だけど、必ずまた会えるから」



 結論から言うと、ジャスは新たな離宮に行くことはなかった。それどころか、国を出るよう指示された。

 久々に顔を合わせる父は、やはり相変わらず息子の目を見ない。しかも、国を出ろとまで言った。

 王族の彼らにとって、それはもはや身分の剥奪、放逐に等しい。

 どうして、と叫びそうになった時。


「こんにちは、王子様。ふむふむ。やっぱりご先祖ねぇ、瓜二つだわ」


 楽しそうな女性の声が謁見の間に響いた。

 丁寧に巻かれた栗色の長髪、スターサファイアの瞳。スラリと伸びた肢体に長身。

「どなたですか?」

「はいはいジャスティス王子殿下。私はルフィシャーズ・ディープゼ・ラフィエメリヤ。独立国チュニアールを統治する女王よ」

 敬語なのに思い切り子供扱いされていることがよくわかった。

 それでも、蔑まれているわけでもないと感じた。

 対等な、ひとりの人間として、彼女はジャスの正面に立ったのだ。

「あなたのお父さんから、あなたを養育するよう頼まれたの」

「え?」

 おそるおそる父を見る。彼は目を閉じたまま頷いた。

「行きなさい」

 消えろ、と。

 遂に、言われてしまった。そして生まれた絶望と悲嘆が、幼い心に棲む闇を、より一層に濁らせる。

「そんな」

 泣き顔を初対面のルフィスに、そして何より父に見せたくなくて、ジャスは俯いた。それでも、両の目から溢れ出す哀しい雫は、抑えることができない。

「……っ」

 レティアに会いたい。慰めてもらいたかった。

 そんな瞬間。


 ベシッ!


 何故か頭を叩かれた。驚きのあまり涙も思考も停止する。

 生まれてこの方、誰かにこうして叩かれたりしたことはなかった。母は寧ろこちらを殺そうとしていた節があるので、次元が違う。

 叩いてきたのは、ジャスより年嵩の少年だ。鮮やかなワインレッドの髪は目立ちそうだが、ルフィスの後ろにいたため姿が見えなかった。

「ランちゃん? 何やってるの。そこは優しーく頭ナデナデでしょ?」

「そうしたつもりですが」

「力が強すぎるのよ」

 呆れ気味に言われ、少年はムッとした。唸るようにジャスを、己の手を見て、今度はポンポン、と優しく叩いてくる。

「痛いか?」

「い、痛くないです」

「そうか」

 ポンポン、ポンポン。しばらく続くと、なんだかジャスは笑いたくなった。それくらい間抜けな光景だった。

「はいはい。順序は逆だけど、自己紹介は?」

 ルフィスに言われ、少年は手を止めた。彼の温かな手が離れるのを惜しく感じながら、ジャスはペコリと頭を下げる。

「初めまして。ジャスティスです」

「ランティス・ラゴート」

 淡々と、赤毛の少年は名乗った。それ以外に言うことはないという風に黙り込む。

 これが、理想郷(チュニアール)の女王にして養母となるルフィス、た義兄ランティスとの出会いだった。




 新しい生活が始まった。

 この国を初めて訪れる者は誰もが、島の構造に驚き、白亜の古城が誇る壮麗な景観に見惚れ、すれ違う人々の生きる活力に満ちた眼差しに圧倒される。

「すごい……」

「? 何が」

「こんなに沢山の人がいるんだね」

「ああ」

 そんなことか、とランティスが横に並ぶ。

 二人は城壁から街を一望した。自然と調和した美しい都。目を凝らせば、遥か遠くに蒼い水平線が見える。

「ランティスは、いつからここにいるの?」

「お前とそんなに変わらない。仲間とはぐれて、あの人に拾われた」

「仲間?」

 ランティスの、新緑の瞳が翳った。

「俺が、しっかりしてないといけなかったのに」

 後悔と苦渋に彩られた声は、少年のものとは思えぬほど哀しく響く。

「大事なひとなんだね」

 不謹慎かもしれないが、羨ましく思う。ジャスにそんな存在はいない。レティアも、あの別れから音沙汰がなかった。

「おい、チビ」

「なぁに?」

 チビ、という呼び方に、これといって反発はなかった。誰にも呼びかけられなかった時を思えば、それがどんな呼称でも嬉しい。こんな風にぞんざいな扱いも、なかなか気持ちよかった。

「今日はどうする?」

「うーん」

 幼い二人は揃って唸った。

 ここチュニアールに来て既に二週間。ルフィスは二人を見事に放置していた。それぞれ城の一角に住まいとなる部屋を与えられてはいるが、両者とも歳相応の遊びを知らずに育った。ルフィスは子供同士で仲良くするだろうと楽観しているようだが、当の本人達は気まずさから途方に暮れていた。

「どうしよう。ランティスはいつも何してたの?」

 小首を傾げ、赤毛の少年を上目遣いに見上げる。すると彼は何故かギョッと驚いた顔になった。

「どうしたの?」

 妙な反応だった。まるで知人の幽霊か何かを見たような。

「いや、それより」

「うん?」

「お前には姉がいたと聞いた。その姉は今どうしてる?」

 それは残酷な質問で、ジャスはつい俯いてしまう。

「わからない。生きておいでなのかも、誰も知らないから」

 ランティスは息を呑み、消えそうな声で、悪い、と詫びる。

 二人はそれきり黙り、静かに町並みを眺めていた。

 数日後、ジャスは一人で城の探索に出掛けた。

 自国のものとはまるで異なる構造にいたく好奇心を刺激され、気付けば城の最奥部に近づいていた。

 そこは本来、王族以外が立ち入れない区域であり、入殿には必ずルフィスの許可を要する場所だった。それでも幼い彼は注意力も低く、大聖堂の厳かな空気に触れ、ようやく己の失態を知る。

(ど、どうしよう)

 ルフィスに叱られたことはないが、言いつけを破るような悪い子は嫌われる。それにというわけではないが、ランティスもいないので帰り道が分からない。

 どうしよう。焦燥の中でもう一度呻いた時。



「何者だ」



 低くうねるような声で誰何された。

 その元を辿り、ジャスは凍りつく。

(魔物!?)

 巨大な鳥の姿をした魔物が、天井近くに佇んでいた。離れていても分かる恐ろしいほどの魔力に、全身が震える。

「あ、えっと」

「んん?」

 殆ど無意識に声を漏らすジャスの顔を見て、魔物が驚いたように身じろぎした。

「貴公、もしやロゼッタの!?」

「え?」

 誰それ。目を剥くジャスの眼前に、魔物が急行下してくる。

 その姿が、風に翻る葉のように、人間のそれに変貌した。

「ロゼッタだ!!」

「ええっ!?」

 決め付けるように抱えられ、ジャスは仰天するしかない。明らかに女性の名前だ。魔物が人間に化けたことも含め、まったく訳が分からない。

「おい、クルスどうした」

 参列席から、銅像かと思っていた大きな影が動き出す。巨漢の大男だ。背にジャスの身の丈を越えるほどの大剣を背負っている。年の頃は三十代後半で、厳しくもどこか愛嬌のある面立ちだ。

「おお、見よイクス! ロゼッタの(すえ)()ぞ!」

「あん? ルフィスが言ってた坊主か」

 ここにきてようやく知った名が出てきた。

「あ、あの」

「おいクルス。とりあえず坊主を下ろしてやれ。怯えてるぞ」

「む。う、うむ。そうだな!」

 妙な意気込みで床に下ろされ、ジャスは目を白黒させる。どうして魔物にこれほど大切に扱われるのか分からない。

 すると、大男の方が歩み寄り、膝を折って目線を合わせてきた。

「ようここまで来たな、坊主。俺はイクス・テェルロ。“魁窟の砕牙”とも呼ばれている。そっちの人外魔境は“月の陰鳥”クルスイーク。クルスと呼んでやってくれ」

 大男はクルス、魔物はイクス。両者とも敵意はない。ジャスは躊躇いがちに名乗った。

「ジャスティス・ラゾーディア・ヴァロリコルゲントです」

「良い名だ。素晴らしい」

 魔物が歌うような声音で、ジャスを褒めた。

 数分後、ジャスはクルスにぐるぐると振り回されながら思った。

 どうしよう。

 この魔物は何故かジャスを大層気に入ったらしく、まるで友人の息子のように世話を焼いてくる。それはいいのだが、そろそろ目が回ってきた。吐きそう。

「あのー」

「はっはっはっはっは」

「あのー」

「はーっはっはっは!」

「……」

 駄目だ。聴こえてない。

 こうなれば人間を頼るべしとイクスを見るが、彼は呑気に耳の穴に小指を突っ込んで寛いでいた。

 途端、助けを求める気が萎えた。というか、爪に挟まった垢はどこに捨てるつもりなんだろう。

 色んな意味で頭が痛くなってきた幼い王子を救ったのは、とても耳に馴染んだ甘いソプラノの声だった。


「ちょっと二人とも! 私のジャスに何してんのー?」


 青いウェーブヘアに、夕焼け色の瞳。珊瑚の髪飾り。黄色を帯びた肌。

 ジャスは弾けんばかりの喜びの中で、その名を叫んだ。

「レティ!」

「ジャス、久しぶりー元気だった? 遅くなってごめんね」

「おー、レティアか。久しいな」

 二人の間に割り込んだのはクルスだった。ぎゅうとジャスを抱きしめ、レティアから遠ざけようとしているのが見え見えである。

 すると、レティアのすぐ後ろからまた別の、ジャスが知らない女性が顔を出す。

「ぬしら何をしよっとか。その坊はレティの客。無粋な真似はやめい」

 可憐な美貌にそぐわぬ迫力を備えた女性だった。波打つ赤みの金髪に蘇芳の瞳。そして身に纏う鮮やかな赤いドレス。その全てが紅蓮の大火を思わせ、やや童顔だが、それでも不思議と深く重みのある麗姿だった。

「ぬしら、と言ったかミュイ」

「ふうん? 終いに耳まで筋肉になったのかえイクス」

 火花が散った。少なくともジャスにはそう見えた。

「あの、イクスさん?」

「おう坊主。紹介しよう。レティは知っとるだろう? その横におる赤い女は“燐蝶華”と呼ばれる魔女だ」

「え……」

「よろしゅうな、坊。わっちはミュイ。元は奴隷ゆえ、姓はないのじゃ、覚えやすうて良いじゃろ」

 魔女という単語に条件反射で固まるジャスに、赤い女ことミュイは人好きする笑みを向ける。さらりと爆弾発言が続き、少年はもう何にどう反応すべきか分からない。

「まーまー皆。とりあえず、私とジャスの再会に花を添えてくれない?」

 その一言でようやく、ジャスはクルスの腕から開放された。

「じゃ、改めて。元気そうで何よりだね、ジャス」

「うん! レティは?」

「いつも通り元気だよー」

 子供の成長は早いものだ。レティアは軽い驚きの中で呟いた。

 以前のジャスは、女のレティアでも抱き上げることが出来る程度の体重だった。もともと少女のように華奢な少年だ。再会した時も相変わらず細い子だと思いながらルクスから受け取ったのだが、最後に会った時と比べ明らかに大きくなっている。

「ちゃんとごはん食べてるの?」

「うん! お兄ちゃんができたよ」

「え? 何それ。まさかルフィス姉さんってばついにトチ狂ってどっかの子供を誘拐して来ちゃったとか!?」

「違うわよ馬鹿人魚」

 突如、呆れた女性の声が割り込んだ。ジャスもレティアも目を剥く。

「ルフィスさん!」

「ルフィス姉さん! 誘拐じゃないの? 本当に? 信じるよ?」

 しつこい人魚に、ルフィスは苦笑した。

「なんでそんなことする必要があるの?」

「子供ができないから、つい出来心でやったのかなって」

「――――――」

 その時のルフィスの顔を、ジャスは今でも覚えている。

 孤独そのものを表したような眼差しだった。

「ルフィスさん?」

 話の内容、意味するところは、幼い彼は理解できない。それでも、レティアの些細な一言が、ルフィスをひどく傷つけたことは理解できた。

 レティアの手を引き、言う。

「レティ。ルフィスさんに謝って」

「え……」

「ジャス?」

 思わぬ諌め役に女二人が目を剥く中、ジャスはもう一度告げる。

「レティ。ルフィスさんに、ちゃんとごめんなさいって言って。相手を傷つけたら謝りなさいって、僕に教えてくれたのはレティだよ」

 幼くも威厳と風格を備えた王子は、淡々と言った。これにはレティアも、そしてルフィスも呆気に取られる。

(これはもう、本当にそっくりだわ)

 育った時代や出会った年齢、性別性格もまるで違う。それなのに、あの真紅の眼差しは今も受け継がれている。

 それが、ルフィスにとっては唯一の慰めだった。

 自分が捨てたもの。幻影の為に諦めた未来。

 友達が、叶えてくれた生きる夢。

(子供、か)

 最愛の人が最期に呼んだのは自分の名前。

 だから捨てた。いつか消える夢幻の初恋と知って、それでも。

 その他は全て。彼が傍にいてくれればいい。

 それでも寂しさは消えないから、もう自分のような者が現れないことを、女王は強く願っていた。



 レティアが知人であるルフィスに頼み、ジャスをチュニアールに招いたのを知ったのはこの頃だ。ルフィスとジャスの父にはそれなりに信頼関係があり、残った息子を攫われた姉の二の舞にならないよう保護するという名目の元、ジャスは『預かり者』になったのだ。

 だからみんな優しかったのだ。ジャスが大国の王子だったから。

 そんな風に臍を曲げ、ついつい捻くれた態度を取ることが増えたジャスを見て、レティアはそれを当時ぶっきら棒だったランティスの影響だと考えてしまったようだった。幼い赤毛の少年と本気で言い争う人魚姫は、しばら城内外での風物詩となった。

 一方ジャスは、城を窮屈に感じ始めていた。みんなが優しいのは結局ジャスの身分が高いからで、誰も自分自身を見てはくれない。

 ……愚かだと気付くこともできない、本当に小さな小さな子供だったのだ。

 それでも、もしも。

 もしも―――そう、願わずにはいられない。

『ねぇ、そこのあなた』

 もしも自分がもっと強ければ。

『王子様でしょ?』

 己の弱さに負けない心を持っていれば。

『私はね、セレナっていうの』

 道を阻むものを薙ぎ倒せる、今の力があれば。

『あなたの名前は?』

 そうしたら、【彼女】が【彼女】を殺すこともなかったのに。




「王子様でしょ?」

 最初はどこから声がしたのか分からなかった。

「え……」

 ジャスはいつも通り城を抜け出て、一人ぼんやり街を探索していた。それにも飽きて噴水に腰掛けた時だった。

「私はね、セレナっていうの」

 慌てて振り向けば、噴水の淵に両足を浸して遊ぶ少女がいた。派手な山吹色の髪に、赤い林檎色の瞳だ。黄味を帯びた肌は、レティアと同じ色。歳はジャスと同じ頃のように見えた。

「あなたの名前は?」

 こんな娘は、さっきまでいなかったはずなのに。

 不審に思いながらも、ジャスは答える。

「……ジャスティス」

「ふーん。ジャスティス君かぁ。よろしくねっ」

 元気のいい奴だな、と正直ジャスは苦手に感じた。鬱陶しそう――それが、ジャスのセレナに対する第一印象だった。

「しない」

「え?」

「よろしくしない。帰る」

「えぇっ!?」

 ジャスは引き止められる前に立ち去ることにした。さっさと立ち上がり、足早に歩き出す。

「待っ……!」


 ドテン。


 なんだか間抜けな音が背後から届き、ジャスはふと嫌な予感がした。

 振り返るべきではない。絶対。面倒臭いことになる。幼年にして身についた本能がそう訴えてきた。

 それでも、つい、振り返ってしまったのが運の尽き。

「あんた、何やってんの?」

 セレナは何故か潰れた餅のように地べたを転がっていた。謎。

(こけたのか……って)

 別に小石が転がっているわけでもない。何もない場所でどうすればあんな盛大にずっこけることが出来るのだろう。

「おい、大丈夫か」

 恐る恐る、半ば得体の知れないモノを見るような気分で距離を詰め、声をかけた。するとセレナが呻きながら身を起こす。

「うん……」

 足が悪いのか、とジャスは思ったが、不意に気付くものがあった。このセレナという娘から感じる魔力は、レティアのものとよく似ている。肌の色のことも含め、尋ねた。

「あんた、人魚?」

「え、すごい正解! なんで分かったの?」

「知り合いと似てる」

「知り合い……あ、姫様かな」

「誰?」

「レティア様だよ。あれ、違った?」

「あー」

 そういえば海神の庶子だとか言っていた。その彼女は今も城でランティスと喧嘩している。

「違わない。正解」

 セレナは人懐っこく笑った。

「正解?」

「うん。正解」

「偉い?」

「え……あー、うん。偉い偉い」

 なんで同じ年頃の相手に子守のような対応をせねばならないのか。億劫さをかみ締めながらジャスはもう一度「偉い」と褒めてやった。

「ありがとージャスティス君」

 照れ笑いするセレナの単純さに呆れつつ、口を開いた。

「ジャスでいい」

「え?」

「ジャスティスなんて、誰も呼ばない。ジャスでいい」

 祖国では『ジャスティス』や『ラズ』と呼ばれていたが、ここに来てから皆『ジャス』と親しげに呼んでくる。恐らく両方の名を混同しているのだろうが、くすぐったくも新しい自分を与えられたようで嬉しく、ジャスもそう通していた。

「ふーん。ジャス君だね。わかった」



 妙に冴えない微妙な二人の出会いから、随分と経った頃。

 鬱陶しそうだと感じたセレナのことを、ジャスは自分でも驚くほど心地よく思うようになっていた。

 彼女の纏う空気は、なぜか懐かしい。

「そういえば、あなたのお誕生日の花、知ってる?」

「花?」

 いつも唐突に現れるセレナは、唐突に問いかけてくる。

 話していて思うのだが、話題や話の内容がいまひとつ繋がっていない。脈絡がないのだ。

「うん。あなたのはね、ラベンダーっていうの」

「マジでか。うっげぇ最悪」

「ええっ!? なんで」

 目を剥くセレナに、ジャスは真顔で答える。

「だって、ンなの便所の芳香剤じゃん」

「駄目だよ、王子さまがそんなこと言ったら!」

「うるさい」

 ジャスは疎ましげに耳を塞いだ。

「いーい? 花言葉は“あなたを待っています” “私に答えて下さい” “期待” “疑い” “不信”」

「後半ロクなもんないじゃん」

「王子さまが細かいこと気にしないの。モテないよ?」

 セレナはことある毎にジャスを「王子さま」「王子さま」と連呼するが、そんな彼女が一番ジャスを王族扱いしていない。

 本当にヘンな奴だと小さく笑いながら、適当に話題を変えようと口を開く。

「あんた花好きだなぁ。飽きねぇの?」

「うん。だって可愛いじゃない」

「ふーん? じゃ、あれは?」

 二人は海から程近い野原にいた。幼い子供同士の遊び場にしては少し不向きな穴場だったが、双方共にズレた感性の持ち主のため違和感はないらしい。

「あれ毒花じゃない。意地悪だよ!」

「“可愛いじゃない”?」

「ふ、ふんだ。花も霞むほど綺麗な女顔の王子さまに言われても」

 ジャスはイラッときた。セレナのいう【王子】はただ単に【男の子】と同義だとは理解しているが、『女顔』とは聞き捨てならない。

「うるさい。十人並みが偉そうに」

「あーっ、今ひどいこと言った! 罰金だよっ」

「そこでカネ取んのかよ! がめつい奴だな」

 先に喧嘩を売ってきたのはセレナの方なのに、何故。

「いい、ジャス。たとえそれがどれだけ揺るぎない真実で、偽らざる本音だとしても、女の子に対して言っちゃいけないんだよ」

 セレナ本人が自分に対して一番ひどくないだろうか。

「俺にこんだけ暴言吐かせられんのは、あんたぐらいだよ」

 自慢ではないが、それなりに「いい子ちゃん」の演技は得意だ。それなのに、目の前の少女には、何故か通じない。

 セレナほど、ジャスの本音を引き出すことに長けた人物は初めてだった。レティアにさえ晒すことができないでいた奥底まで、彼女は柔らかな空気のように。

 気付けば、心を許している自分がいた。

 最初は、なんと鈍臭い奴かと呆れたけれど、それもいい思い出ということにする。

「まさかと思うけど、姫様にこんなこと言ってないよね?」

「レティ? そういえば最近は会ってない」

 ジャスとレティアは今、やや擦れ違い気味だ。レティアはジャスに構いすぎ、その様子があまりにも鬱陶しいと周囲から苦情が殺到した結果、城に入るのにかなり制限が設けられてしまったらしい。

(でも、なあ)

 正直、今はこうやって、セレナとのんびり話しているほうが楽しい。自分が本当にちっぽけな子供だと理解できる。

 レティアを避けているつもりはないけれど、彼女への対応が疎かになっているのは確かだ。

 それでも、レティアはジャスやセレナなどよりずっとずっと年上だ。幼子の行動一つに、目くじらを立てるほど暇でもないだろう。そう結論付ける。

 それが間違いだと気付くのは、もう間もなくのことだった。



 数日後。この日もジャスはセレナに会うべく城を抜け出した。最初はルフィスに許可を取っていたが、その都度「あら、デート?」などとからかわれ、もう阿呆らしくなってきたので、近頃はほぼ無断で外出している。どうせ把握されているのだから、いちいち報告するのも邪魔くさいし二度手間だ。

「ジャス」

「レティ?」

 城を出て街へと降りる途中、久しぶりにレティアと出くわした。

 懐かしさよりも、驚いた。

 彼女の纏う雰囲気が、以前のとは随分と異なる性質のものだったからだ。

 姉のように慕ってきた人魚に恐怖を覚えたのは、この時が最初だった。

「どうしたんだ。顔色が悪い。城で休めるよう、ルフィスさんに頼もう」

 僅かに、セレナのことが脳裏をちらついたが、すぐ打ち消す。

 今はレティアを休ませることが先決だ。

 なのに。

「私より、あの子に会いたいんでしょ?」

 甘いソプラノの声に、言い知れない妖しさが艶を添えていた。

「レ、レティ?」

 戸惑い、怯え、戦慄く。――正気を失いかけている者の目だと、本能で感じた。

 瞬間。


「ずっとずーっと、一緒がいいの」


 焦点も定まらぬ赤い瞳が、ジャスを捉え――

 少年は、そのまま意識を失った。







「やめ……っ!」

 その日、ジャスは己の悲鳴に近い寝言で目を覚ました。

 心臓が大きく脈打ち、ドクドクと耳障りな音が全身に響き渡る。額を掌で覆えば、随分と汗をかいていたと分かった。口の中に、言い知れない感覚が広がる。

「夢か」

 久しく見ていなかったあの日の夢。どうして今になって蘇るのか。忌々しさに悪態をつく。

「クソが」

「下品です、ジャスティス様」

 ほぼ真横から、間髪入れずに軽い叱責の声が飛ぶ。首を動かすのが億劫なジャスは、振り向かず呻いた。

「いたのか、クリフ」

「はい。いつまでも、御身のお傍に」

「ストーカーより質が悪いぞ」

 こんな無表情で身辺にうろつかれたら、こちらが気疲れする。しかも相手は厳めしい大男だ。

 癒されたい、と思う。

(……リア)

 先日、ひどい態度を取ってしまったことを、ジャスは悔いていた。彼女は何も悪くない。ただこちらを心配して伸ばしてくれたその手を、ジャスは無神経にも叩き落したのだ。どう考えても、非はこちらにある。早く謝らなくてはならない。

「今、何時?」

「午前10時を回ったところでございます」

「……そうか。寝すぎたな」

 昨夜は随分と早く床についたというのに――どれだけ眠れば気が済むのか。

「リアが今どこにいるか知ってるか? 用があるんだけど」

「存じております」

 しれっとクリフが言う。妙に回りくどい口調を、ジャスは怪訝に思った。

「だから、どこにいるんだ?」

「お聞きになりますか?」

 普段とは異なる様子の侍従に、いよいよジャスはきな臭さを覚える。

「クリフ?」

「いえ。では、申し上げます」

 そして彼は、淡々と爆弾を落とした。


「レリアル様は、青い髪の娘と城下を歩いておいででした」


 ジャスは、耳がおかしくなったと思った。

「は……え、えぇっ!?」

 ひどく狼狽し、声が裏返る。もちろん今の彼に、それを自覚できる余裕は皆無だった。

「青い髪って……ウェーブだったか!? 肌は少し黄色がかった? 背はリアよりちょっとある程度? 歳は十代半ば頃か? 目は赤?」

 矢継ぎ早に尋ねる主に、クリフは珍しそうな顔をした。そんな彼が鉄扉面を剥がして目を丸くしていることも大概にして珍事と言えたが、生憎それを指摘する人物は室内にいない。

「遠目でしたので、細かい箇所は明言できません。目の色は分かりませんが、概ねジャスティス様が仰せになった特徴と一致する娘です。ご友人でしたか」

「は? お前、何を……」

 馬鹿抜かせ、と言いかけ、ジャスは口を噤んだ。

 クリフは知らない。

 彼は例の一件の後、ルフィスの要請で父が寄越した専属の護衛官だ。城内の空気や皆の様子から、ジャスと件の娘に何かしら縁があることには気付いていたらしいが、詳細までは聞き及んでいないのだろう。そうでなければ、ジャスに向かってレティアのことを友かと訊いたりしない筈だ。

 ……訊かれたところで、肯定も否定も出来なかっただろうが。

(リアの奴……何を考えてやがる、あの馬鹿)

 近寄るなと警告した筈だ。

 失いたくない。

 本当は分かっている。こうなる前に、自らレティアの元へ足を運ぶべきだったのだと。それをジャスは怯え惑い、逃げ続けてきた。

 だが、どうしても、怖かった。

 あの頃とは違う。今の自分なら、決してレティアのいいようにされたりはしない。それでも。

 気持ちが、暗い闇に飲まれそうになる。

 レティアを憎みたくない。彼女は自分の恩人だ。レティアがいなければ、ジャスはルフィスやランティスとも出逢えず、チュニアールに来ることもなかった。

 そして、リアとも出会えなかっただろう。

 全ての始まりはレティアだ。恨むなんて、恩知らずにも程がある。

 だが、セレナは。

 セレナは、ジャスと親交を持ったが故に、あんなことになった。

 リアだけは、そんな目に遭わせるわけにはいかない。

 自分に全てを切り拓き、与えてくれたはずのレティアが、何故かジャスの大切なものを傷つけ、奪っていく。

 どうして?

 ずっと、あの日からずっと考え続けてきた。

 答えはまだ、見つからない。

(いや、今は考えてる暇はない)

 ジャスは手早く身支度を整えると、そのまま部屋を飛び出した。

 クリフが無言で、そして静かに主を追う。

(あの時は、そうだ)

【海の一族】の離宮。あの日、意識を失ったジャスをレティアはそこに運んだ。

(ん?)

 先日リアが興味を示した海底遺跡。あれ?

 ジャスは今更『海の一族の離宮=人間達にとっての海底遺跡』という方程式を思い出した。

(レティの奴、それでリアを釣ったな)

 それにしても、と。ジャスはひとりごちる。

 いくら興味があるとはいえ、よくも知らない相手にすぐ付いていくなんて、あいつ一体いくつの子供だ。

 時ならぬ疲労を感じ、ついつい呆れてしまうジャスだったが、すぐ意識を切り替える。

 セレナのように失うわけにはいかない。

(リア)

 初めて『護りたい』と思った。

 国も両親も、ずっとどうでもよかった。いっそ朽ち果ててしまえと、心の隅で考えていたくらいだ。

 それなのに、どうしてだろう。

 冬の終わりごろから、良い思い出など一つもない筈の故郷に、思考を傾けることが増えた。

 ずっと嫌いだった。否、怖かった。

 不要な存在だと、改めて突きつけられるであろう現実が。

 それが、リアと出会い、自分と近い身分の者としての考え方に触れて。

 トロナイルで赤眼が排斥される起因となった【魔女】とは実在したのか。

 生き別れの姉は、今どうしているのか。

 等々、リアは無意識に、ジャスの胸中で常に渦巻いていた様々な謎を浮き彫りにした。それらは大概にしてジャスの家族や立場を彷彿させるもので、楽しいことはひとつもない。

 そう、分かっていた。だから目を逸らし、逃げ続けてきたのに。

 あの鳶色の瞳は脆そうに見えて強く、真っ直ぐに前を見ている。

 どうやら彼女も心の中にジャスと似た歪みのような何かを抱えているようだが、リアの方がよほど強い。ジャスはそう感じていた。

 憧れ、といってもいいのかもしれない。

 それ以上の何かがある。でも、まだ分からない。

 だから、亡くさない。

 答えを見つけるまで。

 ジャスが磨き上げたジャスの真実を、リアにも共有してほしい。

 どうか、そばにいてほしい。

 この時のジャスは、ただそれだけを思い、そして、少女を想った。




++++




「ジャスとはどこまで行ったの?」

 寝台に腰掛けるなり、レティアは言い放った。

「はい?」

 何のことだか咄嗟に理解できないリアは首を傾げたが次の瞬間ら目を剥いて答えた。

「何もありません! これ以上ないくらい健全な友人です!!」

 ただでさえ、ジャスに偏りつつある自分の脆弱さに参っているところだというのに。どうして引っ掻き回すようなことを言うのだろう。リアは息苦しさに眩暈を覚える。

 海底遺跡。

 それはレティア達「海の一族」の離宮のようなもので、今ここで生活しているのはレティアだけだという。気兼ねしないで、といわれてもやはり恐縮しているリアに、レティアは優しく微笑んだ。

「ほんとうに?」

「はい!」

 力んで答えるリアの剣幕に、レティアは感情の読めない目で言う。

「じゃ、ちょっと聞いてくれない? 私の惚気」

「のろけ、ですか」

 思わぬ言葉を、リアはつい反芻した。馴染みが無さ過ぎて、数秒本気で【惚気】の意味を思いだせなかったほどだ。

「ジャスの事ですよね」

「うん。聞いて?」

「喜んで」

 勧められ、躊躇いながらレティアの隣に腰掛ける。同性とはいえ、会って間もない女性の寝台に座るというのは、なかなか勇気がいることだ。

 レティアの部屋は、姫というには少しばかり質素だった。全体的に暗い印象を受ける。それとも、こういう意匠を好む種族なのだろうか。

「ジャスがここに来たことあるのは知ってる?」

「え? ええ」

 随分昔だから――そう言っていたのはジャス本人だ。しかし、これがまさかレティアに通じる話だとは。何故か胸がもやもやした。

 惚気話というのは、こうも他者の心理に負担を掛けるものなのだろうか。

 レティアが語る自分の知らないジャスをひとつ知らされただけで、リアはひどく疲れた気分になっていた。それが嫉妬であるとは恐らく一生気付かぬまま、話の続きを促す。

 しかし、続いた言葉は爆弾よりも危険で過激な代物だった。


「私とジャスは、ここで昔、ひとつになったの!!」


 楽しそうに、人魚姫が笑った。

 不気味だった。

 とても可愛らしい笑顔なのに、恐ろしかった。

 幸せそうに語られる。恍惚とした表情で。

 ジャスの【傷】が、本人の与り知らぬところで、曝される。

 リアは、聞いてはいけないと本能で悟った。いけない。

 駄目だ。これは、絶対に駄目だ。


「私達は、ここで愛し合ったの」


 しかし、レティアは止まらない。


「邪魔な子は消して、二人で一緒に夜を過ごした。幸せだったよ? ジャスは今よりずっと小さくて、始める前から泣いてたけど、やっぱり男の子でも怖いものなのかな」


 ジャスの心を未だ蝕む悪夢の夜が、語られる。









 幼いジャスが次に意識を取り戻したとき、そこは見慣れぬ部屋だった。

「どこ?」

 見覚えのない場所に身構え、すぐ思い出す。

 自分は先刻まで、レティアと共にいた筈だ。

 何がどうなっているのかは分からない。今はレティアを捜すことにしようと寝台から降りたところで――

「ジャス」

 視界の隅に山吹色の髪が映り、耳朶によく馴染んだ少女の声が響いた。

「セレナ?」

 驚きのなかでまじまじと見やれば、そこにいたのは間違いなくセレナだった。

 いつもとは比べ物にならぬほど青ざめ、覇気も何も感じられない顔つきをしている。ジャスはぞっとした。

「セレナ、大丈夫か?」

「うん」

 何かある。ジャスは確信した。

「どうした?」

 今度は、答えもなく俯く。常とは異なるセレナの態度に戸惑いながら、尋ねたところでしっかりとした反応は期待できないと判断し、ジャスは質問を変えた。

「セレナ、ここはどこだ?」

「姫様……レティア様の、お城」

「レティの離宮ということ?」

「うん」

「そうか。レティは?」

 ジャスとしては当然の質問に、しかしセレナは身を堅くした。やがて、カタカタと震え始める。

「セレナ? どうした」

 何かに怯えているらしい彼女は、目に涙を浮かべていた。

 こんなセレナは知らない。彼女はいつだって、平和そのものを表現したように呑気な笑顔でジャスの心を癒してくれた。

 それが、声も出せぬほどに怯え、泣きそうな顔でジャスを見つめている。

「セレナ?」

「……げ、て」

「?」

 不明瞭な呟きに、ジャスは首を傾げる。セレナは意を決し、強く告げる。

「逃げて、ジャス」

「え?」

「レティア様が、もうすぐお戻りになる。そうしたら、ジャスはつらい思いをすると思う」

 セレナには、分かっていた。

 私はもう、あなたに会えなくなる。

 その未来が回避できないのであれば、せめて自分の【王子様】だけでも助けたい。

「レティがどうかしたのか?」

「うん。レティア様は今、人間で言う繁殖期なの」

「?」

 十に満たないジャスは、言葉の意味が分からず首を傾げる他ない。

 一方のセレナは、外見こそジャスと同じ年頃だが、実年齢は彼より随分と年上だ。加齢速度が極端に遅い種族に生まれ、心の成長も決して早くない。それでも、ジャスに迫る危機は正確に察知していた。

「いいから、ジャスは逃げて!」

 言い募り、セレナは自分の両耳に手を掛けた。

 宝飾類には目の肥えたジャスでさえ、状況を忘れて魅入るほど美しい真珠のイヤリングが、セレナから手渡される。

「これには、海の加護が込められている。偉大なる海の守護魔法だよ。身に着けておけば、少なくとも海で命を奪われることはない」

 この深海に放り出されても、溺死することはないと言いたいらしい。

 だが、ジャスには訳が分からなかった。セレナが今生の別れを決意したような顔でこんな大切なものを託すのも解せない。

「レティが俺を殺すのか?」

 ありえない、という風にジャスが問う。セレナは首を横に振った。

「違う。そうじゃない。たぶん、死ぬのは私」

「は!?」

「いいから聞いて!!」

 聞き捨てならない発言に気色ばむジャスを、セレナが大きな叱声で宥める。

 セレナは今まで、ジャスの言葉を途中で遮ったことがない。まして、喚くような大声など初めてだ。

 何かが来る。ようやくジャスはそのことを理解した。

 あまりにも遅すぎたのだと、気付くのはまだ後のことだった。

「ジャスは死なない。だけど、きっとすごく苦しむことになる」

「なんで分かるんだ?」

「視えたから」

「は?」

 セレナは答えず、ジャスの手をそっと、優しく握った。

 まるで、これが最後だというように。ジャスはぞっとした。

「セレナ!」

「私じゃ、ないんだよね」

 自嘲めいた呟きに、ジャスの動きもピタリと止まる。

「何が?」

「ジャスが選ぶ、大切な人」

 私じゃないんだね。セレナは想う。

 それでもいい。私が護る。

 初恋――――それも、最初で最後の、唯一の恋だ。命を賭けて貫き通す。

 私が貴方を護る。そう、魂に刻み込んだ。

「セレナ」

 もはや名を呼ぶしかできないジャスに、セレナは柔らかく笑んだ。


「私ね、」


 想いは告げない。

 彼の未来は、どんな道を選んでも困難と辛苦が多く存在する。

 そんな彼を縛り付ける真似など、セレナにはできない。

 友として別れる。

 絶対の、愛情ゆえに。


「あなたに逢う為に、生まれてきたんだと思うの」


 ジャスは終生、彼女が見せた最後の笑顔を忘れなかった。

 その美しさが自分への確かな恋慕の現れであるとは永劫気付かぬまま、別れの時は唐突に訪れる。




「……何やってるのかな? 私のジャス」



 常の柔らかさなど微塵も感じられない、高い声。

 甘いと評判の声は毒花のような色香を放つが、幼い少年には嫌悪しか与えなかった。

 レティアに対して拒絶めいた感情を抱いたのは、これで二度目だ。ジャスは硬直する。

「レティ」

「ジャス、逃げて!!」

 呼びかけに、セレナの悲鳴が重なる。

 だが、遅かった。


 どろり。


「セレナ!?」


 見知った少女の体が目の前で―――溶け始めた。足元に泡が溜まり、ポコポコと普通の、それゆえに不気味な音を立てている。


「セレナ!! レティ、やめろ!」


 叫ぶジャスに、レティアは哀しげな表情を浮かべる。


「やっぱり、わたしよりその子がいいの?」


 まともな会話が望めない。

 しかし、それを悟ったところで、幼すぎる少年には、彼女を呼ぶことしかできなかった。


「セレナ……!?」


 少女に触れようと手を伸ばし――体の動きがその体勢のまま停止する。縫いとめられたような感覚に、ジャスは総毛だった。

「レティ! 何をした!?」

「だいじょうぶだよ」

 レティアの冷たい手が、頬に触れた。

 どろりと濁った血のような瞳は、セレナを映して恍惚とした色を帯びる。

「ほら、見て。私達の邪魔する悪い子は、私が消してあげるからね」

「!!」

 いよいよ絶句したジャスはセレナに視線を移し、――危うく意識を失いかけた。

 ほんの数秒目を離しただけで、もう原型を留めていない。

「セレナ!!」

 その声に応えようとした少女は、少年の目の前で泡となり、遂には影も残さず消滅した。








【海の一族】は皆、深海の聖なる森から生まれてくる。花が咲き、やがて落ち。その果実が海神の息吹を受けて、自在に動き回る肉体を得る。

【海の一族】には本来、生殖本能など存在しない。それでも稀に、人間に近づきすぎた者――とりわけ、若い娘が人間の男に性的な欲求を抱くことを、子が生まれるわけでもないが【繁殖期】と呼ぶ。

 しかし、男女が逆転した場合――男が人間の女と性を交えた時に限り、子が生まれる可能性がある。

 例えばミーナ・リコリス。彼女は人間の女との間に生まれた混血だ。

 そして――レティア・ブリュレイク。彼女もまた、海の神と人間の間に生まれた庶子。

 ヒトの血を濃く引く彼女は、並の一族の女たちより、異性への欲求が強い。

 神の娘でありながら人間の混血でもある彼女の立場はひどく複雑で、高貴な身分を称して【姫】と呼ばれることはあっても、正当な王室の一員としては数えられず、古びた離宮で一人暮らしていた。

 そんな彼女は、きわめて人間に近い人魚だった。

 冷遇され続けた彼女は人間の友を得たが、彼らもすぐ陸へと去っていってしまう。

 孤独に彷徨う彼女が見つけた――黒翼の王子。






 出逢った瞬間から、こうなることが決まっていたのかもしれない。

 ふと、そんなことを思った。













ノアリス・パルーシャ・ラフィリコルゲント

(23歳/女/黒髪に紅と蒼のオッドアイ/3月14日生)

誕生花はキャンディタフト  花言葉は【初恋の思い出】

・現在は行方不明の第一王女。ジャスの姉姫。

・上記の年齢は生存していれば、というもの。

・十年以上前に賊に誘拐されており、生存は絶望的とされている。

・弟のジャス同様【魔女の児】の特徴を持ち、紅の瞳を眼帯で隠していたようだ。彩度の高い真紅の瞳は、コンタクトで誤魔化せるものではなかったらしい。







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