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鳥籠姫と黒い翼の魔法使い  作者: 飛翔生姜
第二章 楽園の扉を開く鍵
23/118

忘れられない人魚姫




 彼女が消えていくのを、目の前でただ見ていた。

『ねぇ、そこのあなた』

 出会いは、偶然。

『王子様でしょ?』

 その目は赤く、薔薇のように。

『私はね、セレナっていうの』

 こちらを見て、柔らかく微笑み。

『あなたの名前は?』

 どうして、自分だったのだろう。

 名を呼ぶこともできないのに。

『……ジャスティス』

 どうしてあの時、答えてしまったのだろうか。




(夢見、最悪だ)

 ここ最近、同じ夢を何度も見る。理由は、よくわかっているつもりだった。

――――【あの人】が、目覚めたのだ。

 過敏にならないほうがおかしい。

 けれど、不思議と優しい少女の笑顔も、浮かんできて。

 思えば、あの事件のことを夢で見ることはあっても、セレナの笑顔は懐かしいほど久々だった。どうして突然、記憶の中に蘇ってきたのだろう。

「?」

「お目覚めでしょうか、ジャスティス様」

「ああ」

 そっけなく答えると、クリフが盆に水を載せて差し出してきた。無言で受け取り嚥下しつつ、コイツはいつ寝てるんだと疑問に思う。大概ジャスが寝付くまで身辺警護に張り付いているし、起床時には今現在のように侍従として寝室に控えている。

「疲れてないか?」

「は?」

 つい思ったことを口にしてしまい、途端に後悔した。クリフが珍獣でも見るような眼差しをしている。

(俺はそんな嫌な主だと思われてるのか?)

 侍従を気遣うような人間ではないと言われた気分である。

「なんでもない」

 寝台から離れバスルームに向かう。一定の距離を保って続くクリフの気配に、ジャスはまた辟易するのだった。





「海底遺跡!?」

「ん」

 食堂に入ってすぐ聞こえた声に振り向けば、亜麻色の髪を見つけた。柔らかそうな長髪は大切に手入れされているようだが、別段珍しい色でもない。それなのに、何故か視界に飛び込んでくる。否、目が惹き付けられるというのが正しいか。

(そういえば、何で?)

 ハテと首を傾げる。理由を考えるが、今までこんな事は無かったので明瞭な答えが導き出せない。

 新入りだからか。近しい身分の人間だからか。自分が誘った相手だからか。気の合う友人だからか。

 似た色の哀しみを、抱えているからか。

 そのどれもが正解であり、どれも見当外れな気がした。

 リアと出逢ってから、自分の中で何かが変化しているのは感じていた。

【あの人】の覚醒を悟った時でさえ、恐怖や拒絶と同じくらい強く、守らなければならないと感じた。そして、誰にも奪わせはしないという、独占欲にも似た奇妙な感情を――。

(頭の螺子どっかに落としたかな)

 もしかしたらあの出会いの夜、空中庭園の邂逅の際、その辺に落としたのかもしれない。釈然としない心を持て余し、ジャスは自分でもやや強引に思考を打ち切った。

 どうせ考えても分からないなら、時間の浪費は避けるべきだ。

「何の話?」

「あ。おはよう、ジャス」

「・・・・ん」

「?」

 微妙な反応に、亜麻色の髪の娘――リアがきょとんとした。その隣に腰掛けつつ、テーブルの向かいに座る二人にも声をかける。

「はよ」

「おはようございます、ジャス」

「今日は珍しく遅いお出ましだな」

 リーシャとランティスだった。チュニアールに着いてからも、リア達の親交は続いている。特に女同士の友情は厚く、リーシャはリアの親友を自負していた。リアも満更ではないらしく、不器用ながらも絆を育んでいるようだった。

 そこにリーシャ至上主義のディディ、更に歓迎会で意気投合したらしいシンルーやミーナ達も参戦(?)し、極端な話をすれば男が介入する余地は皆無だったのである。

 もちろん、リーシャを想うランティスの心情は複雑なものだ。他人と交流するのはとてもいいことだと理解しているが、手放しで奨励もできないらしく、渋い顔をしているのを既に何度か目にしている。リーシャの心を占める割合が日々低下の一途を辿っているのではないかと気が気ではないのだろう。

 ジャスは、そんな兄の姿を見ても、不思議と呆れはしなかった。

 寧ろ、好ましく感じた。安堵にも似た喜びの中、リーシャに深く感謝した。

 少し前までのランティスは、人畜無害な顔をしながら病んだ目をしていたのだ。それがリーシャと出会い、見違えるほど活力を取り戻した。

 生きた人間の瞳。

 リーシャは思いもしないだろう。

 緋色の青年と金髪の巫女。

 本当の意味で救われたのは、ランティスの方だった。

「うん、ちょっとクリフと話し込んでた」

 今ここにいる全ての尊さをかみ締めながら、ジャスは柔らかく微笑した。




 朝食後の運動ということで一行は、城の一角にある東屋を訪れた。個人でも数名でも、訓練をする者には無料で利用できる。

 目的は、主にリーシャの肉体強化だ。

 彼女は諸事情により約十年間――睡眠を一切とらないでいたので感覚的にはそれ以上の時間――を奪われて過ごしたという、変わり者が多い【星空の宴】でも異例の経歴の持ち主である。

 最初のうちは正直、三人とも楽観していた。しかし、【外】の世界に慣れ始めた頃、異変は徐々に訪れた。

 リーシャの睡眠が、極端に長くなった。

 まるで、奪われた時を肉体が取り戻そうとしているかのように。

 ジャスの為を思って仲間達が与えた三ヶ月の猶予が幸いし、チュニアールに到着する頃にはなんとか落ち着いたが、それでもまだ本調子とはいえないのだ。

 やはり睡眠は泥のように深く、長い。食事の際は消化がよく、滋養のあるもの選ばなければ、弱った臓器に負担がかかってしまう。季節が変わる今になり回復の兆しを見せたが、まだ油断はできない状態が続いていた。

 その手の心配は厨房頭のマギーに相談しているので、残るのは彼女の戦闘能力の低さ。

 龍に変化する能力を保有する巫女姫であり尋常ではない怪力の持ち主だが、もし狭い室内ともなれば、頼れるのは後者のみだ。それでいて喧嘩もろくにしたことがない穏やかな性分なので、ランティスを筆頭に、特に親しい自分たちが稽古をつけることにしたのである。

 同じお嬢属性なのにこの差は何だとリアを見る。思考を読まれたのか、鋭い睨みと蹴りを頂いた。

「痛いんですケド」

「うざいんですケド」

 出会った当初より格段に口も性格も悪くなっているのは気のせいだろうか。だとしたら、一体どうして――。

(って、俺か)

 他にいくつか要因があったとしても、最たるものはジャス自身である気がする。

 それでも、今の方が自然な感じで好ましい。体裁を気にしていた頃より、ここにいるリアは歳相応の柔らかさがある。高価な衣装を纏っていたあの夜よりも、少女らしく柔らかな可憐さがあった。

「で、何の話だっけ」

「海底遺跡っていうのが、この近くにあるんでしょ?」

「……ああ、あれ」

 気のない相槌に、リアがムッとなる。

「ジャス?」

「いや、俺も行ったのは随分昔だから」

 リアはジャスの過去を知らない。彼が海辺に寄るのを恐れ、周囲に阻まれていることも。

「そうなの?」

「うん。流石に海の底までは、当時のエメリヤの技術でも到達できなかったらしい。あそこは代々“海の一族”の縄張りだ」

「へえ」

 チュニアールに到着した日、痴漢紛いの嫌がらせをしてきたセクハラ男――海の王子イーヴァ・ブリュレイクの顔を思い出し、リアは鼻に皺を寄せた。心なしか声も低くなる。

「あれはあれで、リアのこと気に入ってんだよ」

「だからって初対面なんだから、礼儀っていうか限度があるでしょ!」

「うーん」

 寧ろイーヴァが嫌っているとしたらそれはジャスの方だろう。あのナルシストはどうしてか昔からジャスのことを目の敵にしている。

 一方、リーシャと話していたランティスはその会話を耳にし、思わず苦笑した。イーヴァは頭が花畑かと思うほど目出度い自分至上主義のナルシストであり、第三者からすれば生まれながらに優れた美貌を持つジャスの事が気に入らないのは明白だった。もちろん、分かりにくいだけで可愛い弟扱いしていることも。

(顔の系統が似てるからって、大人げないよな)

 げんなりするランティスの傍らで、リーシャは不思議そうな顔をしていた。




『リアは制御が壊滅的に下手だ。魔力値が歳の割に半端なく高くて扱えないんだよ。でも、訓練を重ねればきっと上手くいく』

 わかってるわよ、とリアは心の中で言い返した。

 もう聴こえない声に。もう逢えない彼に。

 もとよりリアには、誰かに教えられるほどの実践経験がない。ここは場数を踏み、何より近頃リーシャに構ってもらえず臍を曲げているランティスに任せることにした。

 そしてリアの目の前にいるのは、黒い翼を顕現させたジャス。以前からリアが飛行魔法を苦手としていることに気付いていた彼は、丁度いいから克服しようと指南役を買って出た。

 彼の見事な飛行技術は、出会いの夜やその後の神殿までの移動から身を以って知っていた。羨ましい、とさえ思ったほどである。少しでもその術を盗むべく、リアはキッとジャスを睨んだ。

「よし、いいわ」

「えーと、リア。怖いから睨まないでくれない?」

 あまりの気魄に、ジャスが半身を引く。

「取りあえず初回だから、リアは俺を追いかけて……そうだな、鬼ごっこだと思っていい」

 別にジャスが鬼でもいいのだが、リアの飛行技術は稚拙の一言に尽きる。逃げることに必死になって、城壁にでも激突したら大怪我を負うことになるだろう。いかに防護服を纏っても、彼女の速度は尋常ではなく、迅い。

 しかし、リアは首を傾げた。

「鬼ごっこ?」

 疑問符を浮かべる少女に、ジャスは嫌な予感がした。

「もしかして、やったことないとか言わないよな?」

「言うも何も、それがどういった競技なのかが分からないわ」

「……そっか」

 ジャスは激しい眩暈を感じ、思わず天を仰いだのだった。





 シンルーとサーシェスが昼食を差し入れに来た時、そこには何故か地面に絵を描き何事か議論している少年と少女の姿があった。

「何をやっているのですか?」

 そろりと尋ねるサーシェスに、しかし当事者二人は答えない。

「それでどうして遊びになるの? 追いかけられて喜ぶ性癖なんて、そう誰もが備えてるわけじゃないでしょ」

「時々ずれた解釈するとは思ってたけど、やっぱちょっと屁理屈屋だよな、あんた」

「なんですって?」

 リアの目が細くなる。これは良くない。シンルーとサーシェスはそう判断した。

「はーい、何やってんのお二人さん」

 シンルーが手を打って割り込んだ。紅の瞳と茶の眼差しが、白銀の妖精と月下の歌姫を捉える。

「あれ、ルー姉? サーシェスも」

「お、おふたりとも、いつからいらしたんですか?」

 リアがみっとも無い姿を見られていたのかと慌てふためく。組織の良心ともいうべき常識人の彼女らは曖昧に笑って答えず、バスケットを軽く掲げた。

「昼食。マギーからリーシャのついでに全員分」

「え、もう昼!?」

 ジャスが上天を仰ぎ、そこに太陽を認め愕然とする。この歳になって鬼ごっこについて議論する羽目になった挙句、かなりの時間を無駄にしてしまった。

「まぁまぁ。ラン達と合流して、一緒に食べましょう」




「やっぱりジャスとリアじゃ喧嘩になるか」

「喧嘩じゃない。せめて講義と言ってくれ」

 げんなりと呻くジャスの背を蹴り飛ばしたくなる衝動を堪えながら、リアも密かに反省した。あれは訓練の時間だったのだから、必要なことだけ聞いてしっかり彼の指示に従うべきだったのだ。

 多分、浮かれていた。そして、サズ以外の誰かに師事するのが後ろめたかったのもある。

 前者は、存分に体を動かせる開放感。後者は、日ごとに遠のく彼との記憶が、心の中で懸命に訴えてくるからだ。

 忘れないで。おいて行かないで――――と。

 塗りつぶされていく、彼との日々。過ごした時間。優しい手もその笑顔も眼差しも。毎晩、彼への恋しさから見る夢の中、その姿はまるで、秋に色づく葉のように、【星空の宴】の皆へと変わっていく。

 生きていく希望を共に見つけてようと約束した。そしてそれをリアは叶え、成し遂げたのだ。それなのに。

 それなのに、共にと願った最愛の人は、この世界のどこにもいない。

 傍らに寄り添えるだけで幸せだった。たとえいつか誰かに引き裂かれても、彼が生きてくれさえすればいいと思える恋だった。

 未だに溢れそうな想いを抱えたリアは、ふと気付く。

(あれ?)

 待て。今のは、何かおかしくはないだろうか。

(“だった”?)

 まるで、抗いようもなく遠い過去であるかのような―――。



「ち、……がっ!」



 体が震えた。掠れた悲鳴に、皆が目を剥く。

「リア?」

 ジャスが名を呼んだ。案じる声の響きには優しさが滲んでいて、だからこそリアは逃げるように立ち上がった。

「ごめん、ちょっと用事を思い出した!!」

 そう言い放ち、全力で走り去る。

 追いかけてくる者はいなかった。

(どうしよう)

 城を飛び出したはいいが、右も左も分からない城下町でリアは途方に暮れる。城での生活に慣れたみたいだし、近いうちに街を案内するから――そう笑うジャスの紅玉のような双眸が、記憶の中で輝くサズの瞳を曇らせる。

(違う)

 サズは歳相応に爽やかな美少年で、ジャスのような妖しく艶かしいまでの色香は無かった。

 むしろジャスは好みではない、と思う。系統で言うならランティスの方が素敵だとさえ感じるのだ。それなのに。

 気付けば、ジャスをいつも頼っていた。身勝手に拒絶してきた今でさえ、迎えに来てくれないだろうか、などと傲慢な淡い期待を抱いている。

(あたし、変わったのかな……)

 何気なしに心の中で呟き、慌てて否定した。

(駄目)

 そんなこと、あってはならない。

 たとえ触れることが叶わなくても、せめて寄り添って生きたい。想いを糧にして、今よりももっと、ずっと強く――。

「サズ」

 揺らぐ視界に、思わず縋るような声が漏れる。

 逢いたいと、この三年間で一番つよく願った。希求の虚しさは知っている筈なのに、何故こんなに苦しいのか。

「ごめんなさい」

 消え入るように、今は亡き人に贖罪の言葉を告げる。

 リアは既に、心の端で己の残酷な変化を正確に理解していた。ただ認めたくなくて、巧妙なほどに目を逸らす。

 路地裏に迷い込み、ふらふらと座り込んだ。健康そのものである体が、ひどく重く感じられる。

 卑怯者。そんな言葉が、チュニアールに着いてから、ずっと心の中にある。

 大切な人を巻き込んだ挙句に裏切った最低の卑怯者。そんな自分に、こんな優しい人たちと笑みを交わす資格はないのだと、身の程を弁えろと。そうして、誰かが常に語りかけてくる。

 それの声はサズのものにも、母のものにも聴こえれば、自分のものであるかのようにも感じられた。

 もう、国に帰ろうか。失意の中で、そんな風に血迷った時だった。



「……アルナちゃん?」



 絹で真珠を転がすような響きの、甘やかなソプラノ。

「え?」

 思わぬ名に驚いて振り向くと、一人の少女がそこにいた。

 爽やかな青い髪は海のように波打ちながら背まで流れ、耳の上辺りが綺麗に結われ、花のピンで飾られている。僅かに黄を帯びる肌は滑らかで、目は奥二重が真紅の瞳をより大きく見せていた。

 彼女が誰かは分からなかったが、そんなことは気にならなかった。 少女が美しかったのもある。赤い瞳については怖くないし、チュニアールに来てからは珍しくも何とも無い色だ。だからこそ、その造形美には感嘆を覚えた。

 しかし、リアを驚かせたのは、彼女の美貌とはまるで関係がないことだ。

 彼女は、「アルナ」と、そう呼んだ。

 その名を持つ人を、リアはひとりしか知らない。

「アルナ……アルナリアは、私の母の名ですが」

 アルナリア・レラリーズ・ストレイ。リアが死なせた母の名前だ。アルナというのは愛称で、よく父が母をそう呼んでいた。

「アルナちゃんの娘さん!? じゃ、じゃあもしかして……あなた、レリアルちゃんだったりするの!?」

 少女は目を丸くして驚愕し、座り込んだリアの前に腰を落として顔を覗きこんできた。サマードレスの裾が汚れるのも気にせず、頬を紅潮させる。

「あなたの名前、もしかしてウルフラーナっていうんじゃない?」

 リアがぎょっとした。何故そこまで――いや、そもそもどうして母を知っているのか。友人というには歳が離れすぎているし、寧ろ少女はリアよりも年下に見えた。

「あ、あの」

「うわぁ、アルナちゃんの娘さんに会えるなんて、長生きするもんだね! ねね、お母様はお元気?」

「え?」

 リアは絶句した。

「知らないんですか?」

「何を?」

「えっと、母は」

 私が殺した――込み上がる言葉を押さえ、懸命に事実だけを告げる。

「母は、もう随分と昔に亡くなりました」

「え……」

 今度は少女が絶句した。知らなければ無理もないだろう。

「アルナちゃん、死んじゃったの?」

「はい」

「……そっかぁ」

 俯く顔は悲しげで、目には涙を溜めている。彼女が母とどういう関係の相手かは知らないが、その死を悼んでくれている姿は真実に思えた。

「それ、いつ頃?」

「十年以上前です」

「そっか、なるほどね」

 私が眠らされたのも丁度その頃だったし。

 小さな呟きに首を傾げるリアだったが、そんな彼女を安心させようと、少女は優しく笑った。

「わかった、ありがと。哀しいこと聞いちゃってごめんね」

「いえ」

「うーん。それにしてもそっくりだねぇ。ギル君も鼻が高いだろうね」

 父の名まで出され、リアは曖昧に相槌を打つ。そこに来てようやく少女が名乗った。

「おっと、申し遅れました。私あなたのお母様の友達で、人魚のレティア。よろしくね」

 リアは怪訝そうに少女の全身を見た。

「人魚、ですか?」

 視線の先には、ほっそりとした二本の足。

 人魚というのは、下半身が魚の尾のようになっているのではなかったか。

 そんなリアの尤もな疑問に気付いたらしく、レティアはくすくすと楽しげに笑った。

「陸で動き回るには、こっちのが便利だからね。魔法で少し細工したんだ」

「そんなことが出来るんですか」

 驚きと感嘆の中で呟くと、レティアがにこりと答える。

「まぁね。かなり魔力を使うから、滅多に使えないんだけど。この間、ちょっといい賄賂をもらって」

「賄賂、ですか」

 やや警戒したように反芻する友人の娘に、さすがのレティも口が過ぎたと反省した。亡き友と生き写しの愛娘に、そんな眼差しで見られるのは辛い。

「間違えた。そう、袖の下だ」

「同じですよ」

「うう、そんな冷めた目で見ちゃ嫌だよぅ」

 拗ねた子供の仕草に、リアは脱力した。

(変なひとね)

 人魚というのが本当で、その種族の加齢速度が人間と異なるものであるのなら、彼女が母の友人だというのも理解できる。それにしても、深窓の令嬢と聞いた母とこのレティアは、どのようにして知合ったのだろうか。

「母とは、どのような?」

「んー、まだアルナちゃんとギル君が婚約する前だったんじゃないかなぁ。アルナちゃんは実家のお城にいたんだけど、そこに皇帝の名代でギル君が来て……後は二人とも一目ぼれ。ウフ」

 ウフって。語尾も気になるが、リアが知りたいのは母とどうやって知合ったのかどうか、だ。

 母のことをリアは少ししか知らない。淑やかな美人だったということ。リアよりやや色素の薄い蜂蜜色の髪に、優しい蘇芳色の瞳をしていたこと。

 それらは父が教えてくれたことばかりだ。なにせ家には継母のチゼータがいる。死別した前妻の話など、気軽に交わせる話ではなかった。母を慕う者はリアを憎んでいたし、アルナの話をしてくれる者は殆どいなかった。

「その二人がデート……じゃない、親睦会ってことで海のすぐ近くの離宮に来てね、その時に私と友達になってくれたの」

 それから、レティは沢山の話をした。

 両親が周囲の目を盗んでは海辺での逢瀬を繰り返していたこと。

 それをひそかに覗いてレティは忍び笑い、時には二人の純愛に憧憬を抱き、その初心な態度を見ていると外野の自分まで照れてしまったこと。

 正直、最初は疑っていた。けれど話を聞くうちに、彼女の口から語られる出来事が楽しい物語としてリアの心を弾ませるようになった。

 レティも話し上手で、巧妙に抑揚をつけたり、時には声真似までしてリアを楽しませた。しかも父の真似をする時は眉間の皺まで拘るものだから、初対面だということも忘れ、ついリアはゲラゲラ大笑いした。武人らしく厳しい父を、乙女代表のような彼女が真似してもあまり似ているとは言えなかったが、レティがあまりにも大真面目にしているのが滑稽でもあった。肝心の声は全く似ていないのに、眉の角度は父の渋面そのものだったのだ。

 路地に座り込み爆笑する少女と、その隣にいる着飾った少女が変な顔をして変な声で話し込んでいるのを、通行人が不思議そうな眼差しで眺めながら去っていく。

「レリアルちゃんがここにいるって事は、ギル君寂しいね」

「それは」

 リアは口ごもりながら、父が後妻を迎え跡継ぎの息子にも恵まれたことを伝えた。するとレティが首を傾げる。

「ねね、もしかして相手はチゼータっていう人?」

「知ってるんですか?」

「うん。ギル君の最初の許婚だもん」

「ええ!?」

 目を剥くリアに、レティは言葉を選びながら、父と母と継母について語った。

 父はリアの生母アルナを見初め結婚したが、実はそれ以前に親が定めた許婚がいたという。それがチゼータだったのだ。

(知らなかった)

 どうして継母が自分をあれほど激しく厭い憎悪したのか、リアは改めて理解した。あれは前妻の形見という目の上のたんこぶ、などと生易しいものではなかったのだ。

 自分から許婚を奪った女の娘――確かに、義理の家族として愛するなどできようはずもない。

(だから父様は再婚したのね)

 親が定めたということは、チゼータの両親は勿論、時の皇帝と第二妃の意向でもあったのだろう。

 そこを捻じ曲げて、母を選んだ。

 死別した後に本来の筋を通せと周囲に押し切られたのかもしれない。父の性格から考えても、許婚を蔑ろにした罪悪感も相当なものだったはずだ。

(父様……)

 父が継母を女性として愛していないのは薄々感じていたが、それは馬が合わないからだと思っていた。しかし、本当は――

「ギル君が好きなのは、今もきっとアルナちゃんだけじゃないのかな」

 レティの何気なくも懐かしそうな言葉が、リアの心を揺さぶった。

 いつか、決裂した父を分かり合えるかもしれない。そんなことを思った。

でさ、レリアルちゃんは――」

「リアで結構です」

「じゃ、私のこともレティで。本名はレティア・ブリュレイクなんだけど、長いからね」

 にこにこと自己紹介するレティだったが、リアはふと気付く。

「ブリュレイク、ですか」

「うん。あれ? どうしたの」

「お身内に、イーヴァって方はいらっしゃいますか?」

「うんうん、いるよー。ていうかお兄ちゃんだし」

 リアは戦慄した。あのセクハラ王子の妹!?

「そ、そうなんですか」

「あはは、あんま似てないからびっくりだよねぇ。……でも、さ」

 レティがじっとリアを見つめた。

「どこでお兄と知り合ったの?」

「えっと」

 港でいきなり抱きつかれた――嘘偽りなき事実だが、身内からすれば醜聞だ。正直に話すのは憚られた。

「えっと、友人と旧知だったようで」

「リアちゃんのお友達、そっか。ふーん」

「? あの」

「じゃ、リアちゃんは“星空の宴”の関係者なのかな」

「はい」

「みんなは元気?」

「あ、はい」

 加入して間もないリアは居心地悪く答えた。

「レティは、“星空の宴”と縁ある方なのですか」

「うん、まぁね」

 曖昧にはぐらかされた――と、感じた瞬間。

 不意に、警鐘が鳴った。

 本能が訴える。この女は危険だ、と。

 しかし、亡き母の友人だと理性が告げる。大体、彼女が自分に危害を加える理由がどこにあるのか。

 理屈で考えるリアに、その問いは投げられた。

「ねぇ、リアちゃん」

「はい」

「ちょっと聞きたいんだけど、リアちゃんのお友達ってだぁれ?」

「え?」

「まさかと思うけど、ジャスティスじゃないよね?」

「……っ」

 どろりと濁った眼差しは、嫉妬だった。嫌悪と言ってもいい。

「私さぁ、昔からジャスが大好きだから、近くにいる子は許せないんだぁ。ねぇ?」

 頭が痛い。体が冷たい。心臓が煩く、足の感覚は既にない。

(逃げなきゃ)

 怖い、怖い怖い。

(嫌だ!)

 



「なーんてね」




 リアは瞠目した。

「え?」

「確かに恋敵は見逃せないけど、アルナちゃんとギル君の大切な愛娘だもん。意地悪なんて出来ないよ」

「あ、そう……」

 疲れる。心底そう思った。

「さて、と。もっとお話したいけど、そろそろ行かないと。リアちゃん、またこんな風にお喋りしようねっ」

「え!? あ、あの」

 つい呼び止めるリアの声を無視するかのように、レティは人波の中に姿を消した。



 その頃、ベーカリーカフェ【リコリス】に黒髪の王子が現れた。

「いらっしゃいませー……って、何やジャスやん」

「うっわ。ジャスが来るなんて珍しいね」

 曲がりなりにも客に向かってこの対応。片方は従業員じゃないにしろ、歓迎されているとは思えない。

「俺が来ちゃ悪いのか」

「いえいえ、ごゆっくり。ご注文は?」

「いい。人捜しに来ただけだから」

「人捜し?」

 当然の顔で居座る常連――イリヤが眉を上げる。従業員のミナも、ジャスの尋ね人を悟り、困惑顔を作った。

「リアがいないの?」

「いや、いないっていうか」

 何故リアだと分かったんだと疑問に思いながら、ジャスは唸った。

 突然、昼食の席から逃げるように去った。そんなにサンドイッチが気に入らなかったのかと首を傾げる。

(用事って言ってもな)

 チュニアールに来て間もないリアに、城外で用事があるとは思えない。それでなくても世慣れない彼女を、一人で放っておくのは心配なのだ。飛び出したはいいが、地理も分からず右往左往している様が目に浮かぶ。

 そんなジャスの懸念を透かして見たイリヤが、呆れたように呟いた。

「過保護」

「は?」

「別に。とにかく、ここには来てないし、今日は見てないな」

 鈍い奴だと内心で思いながら、イリヤは彼なりの誠意を込めて答えた。ミナに至っては朝から店にいるので聞くまでもない。

「そっか。わかった。もう少し捜す。見つかったら知らせるから」

「うん。気ぃつけてなー」

 急ぎ足で立ち去る後姿を見ながら、二人はつい顔を見合わせた。

「あの二人って結局どうなん?」

「さぁ。離れ難いように見えるけど」

 恋人というには色気めいたものがまるで足りない。寧ろ皆無だが、性別の異なる友人にしては親しすぎる。知り合って三ヶ月程度の関係にはとても見えなかった。

「ジャスにとっては、悪いことやない思うけど」

「まぁね」

 ふと、イリヤがミナを見た。常連客の意味ありげな眼差しに、看板娘はたじろいだ。

「君は?」

「は?」

「恋愛しないの?」

「はっ!?」

 俺と、と聴こえたのは気のせいか。ミナは激しく狼狽する。

「し、仕事中や! あばよ!!」

 真っ赤な顔で怒鳴られ、イリヤは思わず舌打ちしたのだった。

 そして呟く。

「まーた、ふられたか」




 今頃は皆お茶の時間かなぁ。

 そんなことを考えながら、リアはベンチに座り込んだまま唸った。

(不思議な縁、というか)

 両親の知己だと語る人魚姫レティア・ブリュレイク。彼女は、リアが今まで知りえなかった継母の事情まで話してくれた。悪く言えば軽薄だが、大概にして優しく明るい気さくな娘だった。

 しかも、リアにとっても他人とはいえないジャスに好意を抱いているという。世間は狭い。

「って、あれ? 何歳差?」

 思わず声に出してしまう。しかし、両親と友人関係ならば、少なくとも三十は越えているはずだが――。

(いや、でも種族が違うし)

 ジャスの女性に関する守備範囲がどれほどのものかは知らないが、まあレティのような出来た娘を邪険にはしないだろう。応じるかは兎も角として。

 それにしても、だ。

(もう、帰ろうかな)

 別段、誰かと喧嘩して飛び出してきたわけではないし、都にいる限り城は大抵の場所から見上げることができるので、帰城する分には道を間違えて迷うこともないだろう。

(でもなぁ……)

 いきなり大声を上げて席を発った。わざわざ差し入れてくれたサーシェスとシンルーは気分を害しただろうし、ランティスも困惑しただろう。リーシャには恐らく相当な心配をかけている。

 それらを考えれば、詫びる為にも早々に戻るべきだった。それでも、情緒不安定を暴露するようで気が引けて、未だに二の足を踏んでいるというわけだ。

(ジャスは……)

 きっと呆れている。考えるまでもない。

 いつも助けてくれた。だから甘えてしまう。

(ずるいよね)

 心の端さえ明かすことが出来ないくせに、彼の優しさに寄生している自分は最低な女だ。

 いつだって、喧嘩している時でさえ、言葉や声の響きには柔らかな思いやりが感じられた。

 大概にしてガキで、味覚はおかしいし睫毛は女のリアより長く濃密で苛立つ。悪戯っ子でお気楽で、それでも時々、誰よりも寂しそうな瞳をする、とても不思議な人。

 寂しそうで哀しそうで。苦しそうで、見ていると不安になる。

 だから、なのだろうか。

 最近では、ほぼ無意識に目で姿を捜してしまうのだ。

 ひとりっぼちのような顔をしていないだろうか。痛みを堪えて無理に笑っていないだろうか。

 思えば今朝も、顔色が悪かった。というか反応も鈍かった。それは単に低血圧なのかもしれないが、やはり気になる。

 自慢ではないが、リアはこれほど誰かを気にかけたことがなかった。あのサズでさえだ。何せ奴はリアが思案するまでもなく身辺に出没していたのだから。

 今にして思えば、まるでストーカーのような婚約者だったと嘆息して、つい苦笑した。

(あたしの中の“時”は、確かに止まってたのに)

 あの空の庭。紅い月に照らされた夜の出会い。

 どうしてか、出会ってしまった。リアにとって唯一の鍵。

 ジャスティス――――唇だけで、その名を呼んだ。

 それなのに。





「リア!」






 思わず耳を疑った。

「ジャス?」

「やっと見つけた」

 額の汗を拭いながら、駆け寄ったジャスはリアの横に腰を下ろす。

「え……え、え!?」

「捜しに来たんだよ。急に出てくからびっくりした」

 最後の言葉には棘があり、さしものリアも身を小さくした。

「ご、ごめんなさい」

「いいけど。城から出るなら一声かけろ。迷子になりそうで怖いから、あんた」

「は、はい」

 やっぱり、と思う。彼の言葉は結局リアの身を案じるものだった。人が良すぎる。

 そして続く雑談も、こちらの心を軽くさせた。

「俺がめっさ怒られただろーが。二人の時に不埒なことして嫌な思いさせたんじゃないかとか、あの鬼女ども」

「鬼女?」

「サーシェスとルー姉」

 どうやら、無実の身でありながらたんまりと絞られてしまったらしい。ますます申し訳ない。

「ごめん……」

「いいよ。寧ろランティスだ。あいつ見て無ぬフリしやがった」

「リーシャは?」

「心配そうにお前の部屋を見に行った」

 その間に苛められたらしいジャスは不機嫌だ。

「そういや、あんた昼は?」

「え? ……ああ」

 城での昼食は食べ損ねたので、レティと一緒に露天で買い食いした。喉まで込み上げた言葉を、リアは飲み込んだ。

 彼は、知っているのだろうか。

 そう思い、ふと尋ねる。

「ねぇ」

「んー?」

 気の無い返事にムッとしながら、続けた。

「レティアっていう、人魚の女の子、知ってる?」

 腕時計で時間を確認していたジャスが、凍りついた。

(え?)

 他意のない質問だった。それなのに、今ジャスはこれまで見たことも無いほど緊迫した表情をしている。

「ジャス?」

「あいつに会ったのか!?」

 彼は青ざめながら、半ば怒鳴るように言った。頷くと、今にも気絶しそうな顔で続ける。

「何かされたか」

「へ? いや、何も」

「本当に? よく思い出せ」

「ちょ、ちょっと待って」

 尋常ならざる彼の態度に戸惑いながら、リアは全てを話した。

 母の知己であり、娘のリアをアルナと見間違えたこと。そこから話が弾み、つい先程まで話し込んでいたこと。

 ジャスは眉間に皺を寄せた。

「それだけか?」

「は、はい」

 何だかんだで、やはり大国の未来を担う王子は、真面目な顔をするとかなりの威圧感と迫力がある。リアはつい敬語で答えた。

「リア」

「はい」

「ちょっと触らせろ」

「はい。……、…、はっ?」

 了承もしていない――とは言えなくも無い――のに、ジャスの手が頬に触れ、リアは慣れぬ感触にびくりとした。

「ジャス?」

 しかし彼は無視した。いや、もう聴こえていないのかもしれない。触れてくる手は氷のように冷たく、壊れ物を扱うよりも更に丁寧だ。

「……どうしたの?」

 ようやく開放された後、リアは上昇する体温を無視して尋ねた。異性に頬を撫でられるなど、かつての身分では皆無にも等しかったのだ。

 加えて、ジャスは失念しているらしいが、ここは衆人環視の公園である。部外者から見れば睦みあう恋人同士にしか映らず、先程から好奇と敵意の視線をひしひしと感じる。ジャスは目立つ美貌の持ち主であり、その恋人(誤解)が彼に相応しくない凡庸な娘であるのが気に食わないのだろう。若い女性たちは嫉妬と、一抹の侮蔑を込めて通り過ぎていく。

「天然者って罪よね、色んな意味で」

「何ヘンなこと言ってる? ――リア」

「なによ」

 ジャスが真紅の瞳で、リアを射抜いた。

「レティア・ブリュレイクには、もう近づくな」

「え」

 驚いた。驚いて、すぐ反発が沸いた。

「どうして? あの人はお母様たちのご友人なのよ。娘として親交を持ちたいを思うのはいけないこと?」

「あいつは普通じゃない! 今日はどうだったか知らないけど、明日はあんたを殺そうとするかもしれない」

 リアは眉を上げた。そして思い出す。そういえば、ジャスが好きだから親しい女は気に入らないとか本人も言っていた。

 けれど、あれは冗談のようだった。しかも友人の愛娘に乱暴な真似は出来ないと。最後には「また会おう」とまで言ってくれたのだ。

 確かに、リアがここにいられるのはジャスの賜物だ。それでも交友関係まで指図されるのは不快だったので、つい喧嘩腰に返してしまう。

「何それ。ジャスと近い距離にいるから嫉妬されるって?」

 ジャスが僅かに息をのんだ。気絶しそうなくらい真っ青な顔で。

「セレナのこと、聞いたのか?」

 怯えるような声は、恐怖と絶望に彩られていた。

「セレナ、さん?」

 知らない名前に首を傾げる。誰のことだろう。おそらくは女性なのだろうが――。

 ジャスが呆然と、震えながらリアを見つめた。そこで、今更にながら気付く。

「その人のことは知らないわ。でも」

 今度は、自分から彼の頬に手を伸ばす。

「―――っ!」

 腕に衝撃が伝わった。

「ジャス」

 リアは、拒絶され、弾かれた手を別の手で庇いながら続ける。遠慮ない力で叩き落され、ひりひりと痛んだ。

「レティは、あなたに、何をしたの」

「あ……」

 理不尽な暴力を受けた子供の、怯えた目だった。

「ジャス」

「……ごめん」

 それは、手を強引に撥ね退けた謝罪だけではなかった。

 踏み込んでくるなという、明確な拒絶の言葉。

「言いたくないなら、いいの。ごめんなさい」

 嫌な事、聞いちゃって。

 気まずげに互いから目を逸らす二人は、噴水に施した魔法で自分達を見つめる人魚の紅い眼差しに気付かなかった。

 青い髪の人魚姫は、ぽつりと呟く。

「やっぱり邪魔だなぁ、あの子」









『やっぱり邪魔だなぁ、あの子』

 回廊から響いた声に、女は戦慄した。

「レティア!!」

「あれ、ユーナちゃん」

 親しげな笑顔は花のようだが、その香りが毒であることなど、とうの昔に分かっている。

 問答無用で、平手を打った。

「痛いなあ」

「黙りなさい!」

「部外者が偉そうに。お前がそんなだから、うちの愚兄はあんな亡霊の所に通うのよ。嫁とはいえ元は生贄なんだから、立場を弁えたらどう?」

 リアに見せていた表情とはまったく違う、高圧的な態度。対するユーナ・ログセスカは珍しく、低く命じた。

「黙れと言った筈よ。それから、同盟者たる女王を貶すのは感心しないわ」

「ふんだ」

 今すぐ死ね色ボケ人魚。怒りに震えるユーナは、レティの考えを見抜け無かった。


(今度リアちゃんをここに招待しないとね)


 忘れられた、海の底に眠るこの遺跡に。












レティア・ブリュレイク

(外見14?/女/青髪赤眼)

・人魚姫。

・人間との間に生まれた庶子の為、イーヴァの異妹だが身分は曖昧。

・明るく無邪気な少女だが、実年齢は何倍もあるらしい(禁句)。

・ジャス至上主義者で彼に強い愛情を抱いている。




セレナ・シュニック

(外見幼女/女/ジャスの友人)

・ジャスに真珠のイヤリングを託した少女。

・山吹色の髪と林檎色の瞳。

・微弱ながら未来予知の力を持つ特殊な人魚。




ユーナ・ログセスカ

(年齢不詳/女/闇の踊り子/10月27日生)

誕生花は菊  花言葉【朧げな思い出】

・茶髪に群青の瞳を持つ女戦士。双剣の使い手。

・クナイ型をした黒曜石の髪飾りは魔法武器。左右で剣になる。

・国外での任務が多い為、常に旅装である灰色の外套を纏った状態。

・外見は若い女性だが、着飾ろうという意思は皆無の模様。

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