第9話 深夜の来訪者
どーも、まーりんです!
今回のテーマは怒り…だね。と言うか自分の感情を表に出す…ってのがテーマかな。
今回はあややがいい活躍をします。
それではゆっくり見ていってね!
「…ん…」
霊夢と大切な約束をした日の深夜、眠っていた紗稀は不意に目を覚ます。
「喉乾いた…」
ムクりと身体を起こし、冷蔵庫にお茶を取りに行く。しかしその途中でふと縁側の方に目がいった。
「ふぁ…あ……月…キレイ…」
雲1つない空に煌めく満月。紗稀は喉が乾いているのも忘れて月が見える縁側に腰を降ろした。
「病院からじゃ見えなかった…」
紗稀がいた病室からはいつも木々に隠れてしまった月。しかし今日は違う。
「…霊夢にも見せてあげたいなぁ…」
ポツリと呟いた言葉はとある人物に拾われる。
「あやや、ならば見せてあげればいいのでは?」
「えっ…!?だ、誰…!?」
月明かりに照らされながら舞い降りた少女はカメラを片手に自己紹介をした。
「驚かせてしまってすいません。私は射命丸文。"文々。新聞"と言う新聞の記者をしております。それよりあなたは?見た所外来人のようですが…もしかして萃香さんが言っていた…?」
「あ、私は七瀬紗稀…です。昨日…は違う…えと…一昨日幻想郷に来ました……あ…隣…どうぞ…」
紗稀がそう言って横にズレると文は紗稀の隣に腰を降ろした。
「ありがとうございます。ふむ…それで博麗神社に泊めてもらってたと。よく霊夢さんが2日間も泊めましたね。」
「…霊夢…優しいから…」
「霊夢さんが…?」
「うん。優しいよ…今日も私が寝るまで一緒にいてくれたんだもん。」
それを聞いて文は驚いた。いつも無愛想な霊夢が寝るまで一緒に…?なんの異変だろうか…と。
「…そ、そうですか。それより…どうしてこんな時間に起きてるんです?」
「喉乾いたから……そしたら月がキレイで……文さんこそどうしてこんな時間に…?」
「私は気晴らしに空を飛んでいたんですよ。そしたら博麗神社の縁側に見知らぬあなたが座っていたから声をかけたんです。」
「…こんな時間に気晴らし…?あ…記者のお仕事…忙しいの…?」
まさかこんな子供に仕事の心配をされるとは……心が痛くなりそうだ……しかし文は首を横に振った。
「いえいえ、違いますよ。気晴らしと…このカメラで月を撮ろうと思いまして。」
「…本当にキレイな月。あ、あの…文さん…霊夢にこの月…見せてあげれないかな…?」
「ん?もちろん構いませんよ。」
お願いをするときは相変わらずオドオドしてしまうが文は快く引き受けてくれた。
「あ、ありがとうございます…」
「う〜ん…そうですねぇ…今日は月明かりが強く…顔もハッキリ見えるので紗稀ちゃんも写りましょう。」
「う…え…?わ、私も…?」
そこまで写真を撮られるのが恥ずかしいのか…文はそう思いながらも紗稀を含めた写真の構図を考える。
「えぇ。…決まりました。紗稀ちゃんはここに立って下さい。」
「う、うん……ここでいい…?」
文に指定された場所に立つと文は既にカメラを構えていた。
「…うん。バッチリです。じゃあ撮りますよ。」
「…は、恥ずかしい…」
カメラから顔を背けることはなかったが…表情が硬い。全く笑顔でないのだ。
「…紗稀ちゃん、もう少しニッコリしましょう。ほら、楽しいことを思い出して。二コ〜って。」
「楽しいこと…」
「そうですよ。幻想郷に来てからでもいいですから。」
幻想郷に来て楽しくなかったことなど1つもなかった紗稀にとって…思い出して笑顔になることなどとても簡単だった。
「え、えへへ…」
「…可愛い…!ナイス笑顔です…!」
紗稀の笑顔が現れた瞬間、文はシャッターを切った。文の想像以上に紗稀の笑顔には破壊力があったが…なんとか構図通りに写真は撮れた。
「…と、撮れた…?」
「…な、なんとか…」
「えへへ…写真撮られるのって初めて…」
その言葉を聞いた時、文の顔は困惑の1色に染まった。
「…初めて…?」
「うん…私…昔から身体弱くて…ずぅっと入院してて…だから写真とか撮らなくて…」
「…幻想郷に来る前の時の紗稀ちゃんのことを…聞いてもいいですか…?」
「…うん…いいよ。私はね―――」
紗稀は幻想郷に来るまでの経緯を1通り話した。
「…それで…苦しかった時に紫さんが来て…意識を失って…目が覚めたら…」
「博麗神社にいた訳ですか…」
「うん。」
「なるほど…何と言うか……」
表情には出さないが、文はかなり怒っている。出会ったばかりの少女に感情移入しすぎではないかと思うかもしれないが…そうさせる何かが紗稀にはあるのだ。
「…人が聞いてあんまりいい感じはしないと思う…文さんだって…そうでしょ?」
「そうですねぇ…その話を聞いて…何も思うなと言う方が無理です。」
「…霊夢と萃香さんは何も言わなかった……でも怒ってたと思う…」
「あや?霊夢さんはともかく…萃香さんにも話してあったんですか?それに…怒ってた…?」
かなり珍しいことだ。普段、おちゃらけたように過ごしている萃香が真剣に怒ったのだから。それも自分のことではなく…他人のことで。
「霊夢が萃香さんにも言ったの。多分だけど怒ってたと思うよ…」
「知ってたなら萃香さんも私に言ってくれればいいのに…まぁ…ならついでに……私も怒ってます。」
「……………」
分かっていた。紗稀には文が怒るのではないかと。それだけ紗稀自身も嫌な思いをしてきたのだ。
「…あんまり人様のご両親のことについて言いたくはありませんが…紗稀ちゃん、あなたは親から与えられるはずの温もりがあまりにも少ない。」
「…親から与えられる温もりって…何?」
「…それすら教えられずに……例えば…一緒にご飯を食べたり…ただいま、おかえりを言ったり…色々ありますよ?」
文としては紗稀を心配しての発言だった。しかし、紗稀からしたら…今の発言は幻想郷に来てからの紗稀を否定されたようなものだ。霊夢や萃香から温かみを教えて貰ったのだから。
「霊夢と萃香さんは私と一緒にご飯食べてくれた。ただいま、おかえりも言った。お風呂だって一緒に入った。寝るのも一緒だった。幸せな気持ちだって教えてくれた。何がダメなの?親から与えられる温もりなんて…大したことないんだよ。」
「…紗稀ちゃん。友達と家族は違いますよ。」
「違ったっていい!幻想郷に来る前の私には家族どころか…友達すらいなかった!別に私のことは何て言ってもいいけど…霊夢のこと…いや、友達のことは許さない!」
自分でも驚く程、紗稀は大声で怒鳴るように言った。自分のことを友達だと言ってくれた大切な人達をバカにされた気分だった。初めて人に怒りをぶつける瞬間だったのかもしれない。
「…やけに霊夢さんを意識してる発言をしますね。」
「霊夢がいなかったら私は幻想郷でも1人ぼっちだったかもしれない!そりゃ意識もするよ!霊夢といるとポカポカするんだもん!だから霊夢が私にしてくれたことを否定しないで!」
言い切った。紗稀は自分の思いを告げた。初めてだった。親にも本音を告げられなかった紗稀が霊夢のために大声で叫んだのだ。
「別に悪く言ってるつもりはありませんが……なんだ、しっかりと怒れるんですね。」
「怒るよ!私がこうしてしっかり怒れるのも霊夢のおかげなの!霊夢が私を友達だって言ってくれたから怒れるの!」
「なるほど。今まで友達がいなかったからこそ友の大切さが分かる……と。ありがとうございます。良い取材になりました。」
「…え?…取材…?」
紗稀は一瞬言われたことが理解出来なかった。自分は怒らされたのか?わざと怒るようなことを言ってたとでも?
「えぇ、失礼ながら。ですが大切なことが分かりましたよ。本当に…大切なことが。」
「…私は怒ってただけだよ…?」
「それだけ紗稀ちゃんは霊夢さんや友達を大切に思ってるってことです。紗稀ちゃんが大声で叫んだ時、本当に友達思いなんだと思いました。」
「…それは…バカにされた気がして…」
それが友達思いだと伝えたつもりだったが…さっきとは一変してオドオドしている紗稀を見て、文は微笑んでいた。
「フフ…すいませんでした。紗稀ちゃんの友達をバカにする気なんてサラサラありませんよ。」
「…こっちこそ…ごめんなさい……いきなり怒鳴ったりして…」
「いいんですよ。さて、お詫びの印として…この満天の星空を飛んでみませんか?」
「うん!」
紗稀が霊夢と飛んだのはお昼。まだ日が出ており、明るかった時だ。こんな夜空を飛べるのなら…すぐさま頷くだろう。
「さぁ、私の手を取って下さい。」
「えへへ…楽しみ…」
いつもと同じ笑顔だ。自分で飛べないのは残念だが、今はこの夜空を満喫したい。
「…なるほど…この笑顔に霊夢さんはやられた訳ですか…」
「へ?どうしたの?」
「あ、いえ、なんでもないですよ。さて、飛びますよ〜?それっ!」
「うわっ…!えへへ…ちょっと眩しい…」
月明かりに照らされながら飛び立つ紗稀は1つ1つ煌めく星のようにキラキラとしていただろう。
どーも、まーりんです!
あややに悪気はありません。素晴らしい活躍をしてくれました。これからもちょいちょい絡んで来るでしょう。
さて、次回のテーマは…思い出と嘘つき。紗稀の前に…嘘をつけるかな…?
それでは次回もゆっくり見ていってね!