第8話 口約束でいいから
どーも、まーりんです!
今回のテーマは約束。
とりあえずイイ話にはなってると思う。
後はアタフタしちゃう紗稀をご覧あれ。
それではゆっくり見ていってね!
「…疲れた…」
「…重かったね…」
2人は買い物をして帰ってきた所だ。2人はたくさんの袋を手にかけている。
「やたら買ったわ…」
「…でも…人里面白かった…おじちゃん達…優しかった。」
「ん、そうねぇ。紗稀が可愛いからよ。」
「えへへ…」
こうして褒めるとはにかんで笑うのはお決まりだ。霊夢自身、それを楽しんでいる。
「まぁなんにせよ…とりあえず今日はもうすることないわ。」
「…これから何するの?」
「ちょいと幻想郷について説明しておこうと思ってるのよ。」
「…能力については聞いたよ?」
「能力だけじゃないのよ。ちょいと危険なことがあるから説明しないといけないの。」
幻想郷に来たばかりで混乱させたくないから前日は言わなかったが、やはり教えておかないといけないだろう。
「…危ない…こと?」
「そう。"異変"って言ってね、幻想郷に危険をもたらすことなの。最近は起こす奴もいなくなったんだけど…流石に今起こされたらたまんないわ…」
「…戦うの…?」
「そ、そんな顔をしないで欲しいんだけど…」
「…戦うの…?」
紗稀の心配そうな顔を見て霊夢は渋々頷いた。説明をしようとしてる時に心配されてたら説明しにくい。
「…私のお仕事なのよ。これから紗稀が幻想郷で安心して暮らせるようにするのが私のお仕事。」
「…じゃあ…私も戦う…!」
「ダメに決まってるでしょう?危険って言ったわよね?」
「…分かってるよ…危険なんでしょ?私は霊夢に危険な目に会って欲しくない…」
そう言われて霊夢は気付いた。紗稀は結構頑固なことを。いつものオドオドが無くなった紗稀は恐らく自分の意見を譲らないだろう。そして紗稀がここまで頑固になるのは…誰かの心配をしてる時だ。
「…ぐっ…でもね、私がやらないといけないのよ。」
「じゃあ私も戦う!」
「ダメ。」
「…霊夢に何かあったらどうするの?初めての友達がいなくなるなんて…絶対嫌だから!」
紗稀は怒鳴るように言った。霊夢からしたら初めての怒鳴り声だ。
「…ねぇ紗稀…お願いだから分かって?私としても紗稀がそこまで心配してくれるのは嬉しい。けど…危ないからやらない…それじゃあ皆の平和は守れないの。紗稀の友達だって…守れなくなるのよ…?」
「…どれだけ言っても…ダメ?ちゃんと帰ってきてくれる?」
霊夢はハッとした。紗稀が霊夢を行かせたくない理由は…危険だからではない。異変によって霊夢が帰ってきて来ないことを恐れてるからだ。紗稀の両親が仕事を理由に紗稀を1人にしたから。
「ダメ。でも絶対に帰ってくる。私は紗稀を1人にしたりなんかしないから。信じて、何があっても私は紗稀の所に帰ってくるから。」
「…約束。」
「指切りげんまんする?」
「ダメ。指は切りたくないから。」
霊夢は紗稀を子供扱いしたつもりで指切りげんまんを持ちかけたのだが…想像とは全く別の答えが帰ってきた。
「…え?」
「指切りげんまんしたら最後に指が離れちゃうでしょ…?だから嫌いなの。」
「…あぁ…なるほど…」
紗稀が指切りげんまんにそんな思いを持っていることに霊夢は驚いた。誰もがやったことのあるであろう指切りげんまんが嫌い。しかもその理由が指が離れるから。ある意味根底から覆す発言だろう。
「だから私は口約束でいいの…霊夢、約束。」
「えぇ。約束、私は紗稀を1人にしません。」
「えへへ…私も霊夢を1人にしないよ。」
「…紗稀っ!」
霊夢は紗稀に抱き着いていた。それたけ紗稀に言われたことが嬉しいのだろう。
「わっ…霊夢…?」
「全く…可愛いんだから!頬ずりするわよ!?」
するわよ?とか言ってる時には既に頬ずりしているものだ。
「ん〜!髪の毛がくすぐったいよ〜!」
「もっとスリスリしていい?」
「…くすぐったいからダメ。だけどこのまま…」
「スリスリはダメなのにこのままなの?」
「…ダメ…?」
こんな弱々しい声で、更に耳元で言われたら断れるはずもなく…
「…どうぞ。」
霊夢はピタッと頬を紗稀の頬にくっつけたまま返事をした。
「…やっぱり霊夢のほっぺ温かいね…」
「紗稀も温かいわよ。それにプニプニで柔らかいし、ずっと触っていたくなるわ。」
「…霊夢なら…いいよ…」
「そんなこと言われたら…また頬ずりしちゃうからね!」
「だからくすぐったいんだってばー!」
さて、しばらく頬ずりを楽しんでいた2人は買ってきた栗羊羹とシュークリームとお茶を手に、縁側でのんびりしている。
「紗稀、美味しい?」
「うん!霊夢も食べる?」
「私も同じのを食べようとしてるのだけど…あ、なら1口ずつ交換ね。」
「んーと…じゃあ…あーん?」
紗稀は疑問系で自分のシュークリームを差し出した。どう見ても可愛い。
「あーんっ。うん、美味しい。じゃあ紗稀もあーん。」
「あーん……って…ぁ…あぅ…」
霊夢のシュークリームを口にした時、紗稀は顔を赤くして俯いてしまった。
「え?ど、どうしたの?」
「…関………ス…」
「…え?」
あまりにも紗稀の声が小さくて思わず聞き直した。何に照れる要素があったのか…疑問なのだ。
「…間接…キス…」
「…はい?」
「だ、だから…霊夢が食べたシュークリーム…私が食べたら…間接キス…だよね…?」
自分で間接キスと言って更に照れる紗稀。それに霊夢もそんなのことを言われて、多少なりとも意識してしまう。
「そ、そうね…ま、まぁいいんじゃない!?ほ、ほら、友達ならそれくらいあるわよ!」
霊夢は明らかに動揺している。平静を保とうとして大声になっているのが証拠だ。
「…そ、そうだよね…友達だもんね…か、間接キスくらいあるよね…」
「そうよ!これもコミュニケーションなのよ!」
「コミュニケーション…!霊夢…もう1回やってみようよ!」
「い、いや…それは…」
珍しく霊夢がタジタジだ。顔も赤くなり、間接とは言え"キス"を想像してしまった霊夢にもう1回は少し厳しいものがある。
「だってコミュニケー……あ…!もう1回は…ダメ……またキスになっちゃうよね…は、恥ずかしい…」
「…あ、気付いた……ね、ちょっと恥ずかしいわよね…」
「…ね。でも…あ…うぅん……れ、霊夢なら……えと…その…あぅ…あぅあぅ…」
ここまでオドオドしていれば紗稀が何を言いたいのか分かるだろう。"霊夢なら"…この続きは霊夢にも分かっていた。
「あ…えっと…私も…同じ気持ちよ…?私も紗稀なら……してもいい…から。」
「…ホント…?」
「ホント。でも今は恥ずかしいねってことよ。」
「そうだね…私も…恥ずかしいもん…」
たかだか間接キスだけでここまでオドオドするものなのか。霊夢は自分でもコミュニケーションだから当たり前的なことを言っていたのに。
「でしょ?んでね、ちょいと大切な話なんだけど…今度宴会をやって…紗稀に友達が出来て…紗稀と一緒に過ごしたいって言う奴も出ると思うの。」
「そんな人…いるのかな…」
「いるわよ。んでね、私としては…紗稀に友達が出来るのは嬉しいし、紗稀がそいつらと一緒に過ごしたいのなら協力するけど…どうする?」
「…どうって…分かんないよ…」
いきなりそんなことを言われても困る。つまり、宴会に来た人達に誘われたら一緒に過ごすのか……そう聞かれているのだから。
「そう……でもね、考えておいて。」
「うん。だけど聞いて欲しいことがあるの。私は萃香さんや慧音先生としかまだたくさんお話してないから断言は出来ない…けど…約束したよ。」
「…ん?」
「私は霊夢を1人にしない。」
強い口調だ。前の紗稀からは想像出来ないくらいだ。霊夢の目を見て、言い切った。
「…その約束に縛られる必要はないわよ?」
「ううん。違うよ霊夢。私が霊夢と一緒に過ごしたいんだよ。」
「…紗稀。」
「初めてなの。私が自分から一緒にいたいと思って…一緒にいれるのって。いつも私は1人だった。誰も私と一緒にいてくれなかった。けど霊夢は違う。だから私は霊夢と一緒にいたい。」
紗稀は少し早口で興奮気味に言った。初めて霊夢と出会って、友達になって、一夜を過ごして…一緒にいたいと思ったのだ。まだ長い付き合いではないが…紗稀は心からそう思っている。
「…一緒にいてくれるのは私だけじゃないのよ?萃香だって…慧音だってそうかもしれない。」
「萃香さんも慧音先生も凄い優しいよ。でも…霊夢は私に幸せを教えてくれた。それに私が今1番一緒にいたいのは霊夢なの。私は……れ、れ…えっと…その…霊夢が…好き。」
そこまで言われて何も思わない霊夢ではない。紗稀はこんなにも自分のことを思ってくれている…その気持ちに応えなければ。
「紗稀…分かったわ。紗稀のことは私も好きよ、でも…紗稀がこれから出会う人の中で私よりも好きな人に出会えたら…その人と一緒になって。」
「…分かった。その時になったら考える。」
「約束…できる?」
「できるよ。霊夢。だって―――」
私は口約束でいいんだから。言ってくれたらそれは絶対に守るよ―――
紗稀は霊夢にそう告げてお茶のお代わりを取りに行った。
どーも、まーりんです!
紗稀の指切りげんまんの話、あれは昔に僕が思ってた事です。書けて良かった。
さて、時間は…また新しい出会いがあるよ。テーマは…そうだね…怒りの感情…かな。
それでは次回もゆっくり見ていってね!