第3話 幸せな気持ち
どーも、まーりんです!
今回は…幸せについて。人それぞれ感じ方は違うと思いますが…ぜひ共感して頂きたいと思います。これも幸せの1つとして。
それではゆっくり見ていってね!
「よしっ!ご飯も食べて洗い物も終わった!」
あれから3人は料理を作り、食べ終え、洗い物まで終わらせた所だ。ちなみに萃香はお風呂の準備をしている。既に泊まる気満々だ。
「手…冷たい…」
「ん、どれどれ。フフッ…本当ね。」
霊夢は紗稀の手を握って言った。近頃は冷え込んできているし、同じ水を使っていたのだから冷たいのは霊夢も一緒だが、とにかく紗稀と触れ合うために手を握ったのだ。
「霊夢も冷たいね…」
「本当に?じゃあ紗稀のほっぺで温まってもいいかしら?」
握っていた手を離し、霊夢は自分の手を紗稀のほっぺに添える。すると冷たさで紗稀の肩がピクッと跳ねる。
「つ…冷たいよ…!」
「なら紗稀も私のほっぺに触ればいいのよ?」
「…仕返し…!」
反撃と言わんばかりに紗稀は霊夢のほっぺに手を添える。間違いなく紗稀の手は冷たいはずだ。なのに霊夢はピクリとも反応をしなかった。ただニッコリと微笑んでるだけだ。
「…私のほっぺ…どう?」
「柔らかくて…温かい…」
「ねぇ紗稀。人って温かいでしょ?」
「うん…私も温かい…?」
「うん、温かいわよ。紗稀、これが人との触れ合いなのよ。今、どんな気持ち?」
紗稀は答えにくかった。今までほとんど経験したことのないことを聞かれてるのだから。でも霊夢の微笑みを見て、何も答えない訳にはいかない。だから紗稀は今の自分の思いを告げた。
「難しいよ……でも…ポカポカする…」
「うんうん。どんな感じ?」
「身体の中からジワ〜って広がる感じ…」
「そっか。そんな気持ちは初めて?」
「うん…なんか気持ちいいね…」
霊夢は驚愕した。紗稀は霊夢と同い歳くらいだろう。なのに…こんなにも簡単な感情を知らなかったなんて。少し悲しくなりながらも霊夢はこう告げた。
「それが…幸せな気持ちよ。」
「…幸せな…気持ち…?」
「そう。今の紗稀は人と…友達と触れ合う幸せを感じてるの。」
「そっか…私…幸せになれるんだね……」
これが年端もいかない少女が放つセリフだろうか。まるで幸せとは何か知らないような言葉だ。いや、実際知らなかったのだから仕方が無いだろう。それを霊夢によって教えられたのだ。
「…紗稀。あなたは幸せになれる。…幸せになれない人なんていないのよ。」
「…でも…霊夢や萃香さんと出会うまでは…全然幸せじゃなかったよ…」
「…現代でのことは聞いただけだから…私には紗稀の気持ちは分からない。」
「…霊夢?」
「…でも、紗稀の感情を共有することはできる。悲しい気持ちは半分に、幸せな気持ちは倍以上にすることだってできるの。」
こんなものは詭弁だ。綺麗事なのだ。悲しいことを話した所で悲しみが半分になる訳がない。だが、そんなことは分かってるのだ。だけど霊夢は本当にそうしてあげたいから口にしたのだ。出来る限り紗稀の悲しみを和らげ、楽しさを…幸せをたくさん感じて欲しいのだ。
「霊夢…それは難しいよ…」
「っ…そ、そうよね……出会ってすぐの私じゃ…紗稀の悲しみを理解するなんて…」
「違う……私、悲しくないもん……今の私…幸せだから。幸せい〜っぱいなんだ!」
紗稀は今まで誰にも見せたことのない笑顔を見せた。霊夢は紗稀の生い立ちを紫からかなり詳しく聞いている。それは…聞いているだけで己が絶望にたたき落とされたような気分になるものだった。それを経験した紗稀は…笑顔など消え去ってもおかしくはない。そう霊夢は思っていたのだ。だが、紗稀はこうして満面の笑みをしている。
「紗稀っ!」
「うわっ!何…?」
霊夢は紗稀を抱き締めていた。特に理由なんてない。強いて言うのなら、抱き締めることによって、触れ合いを深めたいのだろう。
「…紗稀は、今も幸せ。これからだって…ず〜っと幸せでいれるわ。」
「うん…あ……私…誰かに抱き締められたの…初めてかも…」
ハグをされたこともないのか…と、霊夢は驚く。霊夢だって無愛想とは言われることもあるが…ハグくらいしたこともされたこともある。無愛想な霊夢ですらあるのに、性格が全く違う紗稀はない。おかしいとは思わないだろうか?
「…いつだってしてあげるわ。出会ったばかりだとしても…私達は…友達だもの。」
「うん…!私…幻想郷に来て……初めてがたくさんある…」
まだまだ他にもある。霊夢がそう言おうとすると、お風呂から萃香が現れた。
「おーい!お風呂入れるぞ〜!」
「…あんた…いつまで経っても来ないと思ったら…お湯が溜まるのをずっと見てたの?」
「そうだよ?流れるお湯を見ながら…これが全部酒だったらなぁ…って思ってたら…」
「いつの間にか……お湯が溜まってたの…?フフッ…変なの…」
今までにも紗稀は幾度か笑顔を見せている。しかし、それは何気ない会話からではない。あの笑顔の裏には悲しみがあった。だが、今は違う。会話から出た…自然な笑顔なのだ。それを見た霊夢と萃香もつられるように笑みを零した。
「別に変じゃないだろ〜?ほら、いいから一緒にお風呂入ろう!霊夢も、な!」
「えぇ。紗稀…さっきは幸せで心がポカポカになったわね。次はお風呂で身体もポカポカになりましょう。」
「うん!ポカポカになる!」
「ハハッ…なんだか子供みたいだね。私がお風呂の準備をしてる間に…何かあったのかい?」
「えへへ…それはお風呂で話してあげる!」
「おぉ!そうかい!じゃあ入ろう!」
先程萃香は紗稀に子供みたいと言ったが……その通りだ。紗稀は子供なのだ。これが本来の紗稀なのかもしれない。与えられるはずの愛を十分に与えられなかった紗稀にとって、霊夢と萃香による友達とのたくさんの初めてがあったのだ。可愛らしい、歳相応の少女の姿なのだろう。
所変わってお風呂。紗稀は先程霊夢としていたことを話していた。
「へぇ…そんなことがあったのかい。」
「うん。霊夢の手…冷たかったけど…凄くあったかかった!」
嬉しそうに話す紗稀を見て、萃香は喜んでいた。それと同時に、私もその現場を見たかったとも思っていた。
「ハハッ…そうだろうねぇ…霊夢は無愛想だけど、中身は良い奴なんだ。」
「うっさいわよ。大体、あんたらが節操無しに私の家で酒盛りばっかりするから私の機嫌も悪くなるってことを理解してもらえるかしら?」
「何を言ってるのさ。霊夢だっていつも楽しんでいるだろう?」
「私が言いたいのはね、片付けをしてくれってことなのよ!」
霊夢が宴会を渋る理由はここにもある。宴会ともなれば大量の料理、酒が出される。大量に出されると言うことは…当然洗い物が増える訳だ。それを手伝えと言うことだろう。
「あぁ〜覚えてたらな。」
「ダメだよ…霊夢が大変だもん…私も手伝うから…萃香さんも一緒にやろ?」
「うぐぅ…分かったよ。紗稀の歓迎会の時は手伝うさ。」
紗稀に誘うように言われたらいくら萃香でも断り切れないだろう。萃香は渋々承諾した。それを見ている霊夢はご満悦な表情をしていた。
「うん。私も手伝えば霊夢も楽になるよね?」
「もちろんよ。でも紗稀は手伝わなくても大丈夫。その間に他にも友達を作りなさい。」
「あ…でも…霊夢が大変…」
「大丈夫。それより…紗稀が友達たくさん作って…そいつらにも片付けを手伝えって言ってもらえないかしら?ね、お願い。」
友達を作れば霊夢のためにもなる。そうなれば友達を作らない理由はない。元より紗稀も友達がたくさん欲しいのだから。
「分かった。私、友達たくさん作る!」
「そうそう。それでいいんだよ紗稀。元々紗稀の歓迎会と友達作りをするための宴会なんだ。片付けなんかでその機会を無駄にはできないよ。」
「なんかって言うんじゃないわよ。でも萃香の言う通り。この幻想郷にはね、萃香みたいな鬼だけじゃないのよ?」
鬼だけでもかなりの衝撃だった紗稀にとって今の霊夢の発言はかなり興味深い。紗稀は食いつくかのように言った。
「そうなの!?どんな人がいるの!?」
「フフッ…妖怪とか好きなの?」
「うん、1人で暇な時とか…そんな本とか見てた。だから萃香さんが酒呑童子だって聞いて驚いたよ。」
「そう……ちなみに吸血鬼や…魔法使い…妖精や天狗だって、神様だっているのよ?」
それを聞いて紗稀は更に食いつく。まぁ元の世界で生きていたらどれも存在しない種族である。興味を持つなと言う方が無理な話かもしれない。
「わぁ!凄いね!」
「他にもたくさんよ〜!妖怪って言ってもたくさんだし、神様だってそう!」
「それって本当に会える!?」
「もちろん!ちょっとクセがあるけど……悪い奴らじゃないわ。紗稀のようないい子なら間違いなく友達にだってなってくれる。」
存在すると思ってもなかった人物と会えるだけでも嬉しいのに友達になってくれる。それに紗稀はとても喜んでいる。
「やった!嬉しい!」
「フフフ…萃香、準備は頼んだわよ。」
「おうともさ。任せておきなよ。」
「霊夢…いつやるの?」
「ん?そうねぇ…」
霊夢は少し考えた。萃香なら少ない時間でもたくさんの人に宴会の事を伝えられる。しかし霊夢自身、紗稀との時間が欲しい。それに幻想郷についてまだ教えておかなければならないことがある。
「…明明後日。明明後日にしましょう。萃香、どこまで準備できそう?」
「とりあえず宴会の事を伝えるのは余裕だよ。」
「そう、お酒に関しては?」
「そんなの持ち寄りに決まってるだろう?もちろん私も用意するよ。」
それなら霊夢が準備することはあまり無いだろう。宴会の準備にあたって霊夢が何より嫌なのは…大量のお酒を買うことだ。お金の問題ではなく、持ち帰るのがとにかく大変なのだ。重いから。
「それは助かるわ。それじゃ私は食材を買っておくとするわね。」
「…霊夢、お買い物…私も行きたい。」
「そうねぇ…1人で留守番させるのも心配だし…付き合ってもらおうかしら?」
「うん!行く!重いのたくさん持つね!」
「…頼りにしてるわ。」
そうは言っても霊夢は紗稀に重たい物は持たせないだろう。お酒は瓶に入っている。もしも落としてしまったら大変だ。お酒は重いのだ。もう1度言う。お酒は重いのだ。
「なぁ、紗稀がめっちゃ可愛い笑顔をしてるのは良いんだが…そろそろ出ないか?流石にのぼせてきそうなんだ。」
「ん、そうね。紗稀、あったまった?」
「うん。ポカポカだよ。」
「そう。じゃあ出ましょうか。」
こうして紗稀は初めて友達とのお風呂を終えた。紗稀の笑顔を見れば分かるが……身も心もポカポカになったのは言うまでもないだろう。
どーも、まーりんです!
どうでしたかね?あれが僕が作者として…紗稀の気持ちを考えた結果です。皆さんはどう思いました?
さて、自分は…少しだけ霊夢と萃香が感情を表に出しますよっと。
それでは次回もゆっくり見ていってね!