第10話 思い出作りと嘘つきさんのお話
どーも、まーりんです!
今回は…思い出よりも嘘つきに重点を置いてるかな?ちなみにエイプリルフールは関係ないです。
それではゆっくり見ていってね!
「…はぁ…」
朝、霊夢は縁側で眠る紗稀を見つめながらため息をつく。
「…この子は何やってんのかしら…」
「ん…えへへ…むにゃ…」
どんな夢を見てるのだろうか。いや、それより何故紗稀が縁側で寝ているのか、それも布団を被りながら……その方が霊夢にとって疑問だった。
「それに紗稀のすぐ横にはカメラ………ん、この写真は……フフッ…なるほど。そりゃ紗稀もこんな笑顔で寝てる訳ね。」
霊夢は状況を見てすぐに誰が関わってこうなったのかを理解した。しかしまだ疑問は残る。
「…綺麗な満月…深夜に撮った写真よね……まぁその時間に起きちゃっただけかしら。」
自分が納得出来る答えを出した所で目の前の状況の処理をどうするかに悩まされる。
「…はぁ…このまま寝かせてあげてもいいけど…流石に風邪引いちゃうわよね…」
いくら布団を被っていても縁側で寝ていたら風は吹いてくるのだ。冷えてしまうだろう。
「…かと言って…わざわざ部屋に運んでまた布団で寝かせる時間でもないし…起こしましょうか。」
霊夢が紗稀を起こそうと手を伸ばした時、ふとカメラに気づいた。
「あらあら…フフッ…この可愛い寝顔を納めておくのも悪くないわね。」
「えへへ…むにゃむにゃ…」
「…本当に寝てるのかしらねこの子は……まぁいいわ。じゃあ…はいチーズ…」
カメラがパシャッと音を立てると…思ったより音が大きく、紗稀が目を覚ましてしまった。
「ん…?んにゅ……?れぇむ…?」
「あちゃぁ……起こしちゃったか……おはよ紗稀。可愛い寝顔だったわよ。」
「ふぇ……?ね…がお………あっ…!」
霊夢が持ってるカメラに気付いたのか、紗稀は恥ずかしそうに顔を背けた。
「背けたってバッチリ写ってるわよ。後で見てみる?」
「い、いい!恥ずかしいから消して!」
紗稀は霊夢が持ってるカメラを奪おうとしたがヒョイっと避けられてしまう。
「ダメよ。あ、そうだ…アルバムでも作ろうかしら?」
「ア、アルバム…?誰の?」
「紗稀のに決まってるでしょ?最初は恥ずかしいかもしれないけど…写真撮ったりして…幻想郷での思い出を形にしましょ?」
「…う、うん…でも…なんで…?」
もう既に分かる人がいるかもしれないが…紗稀はアルバムなんて作ったことは無い。そもそも、写真すらそんなに撮られてないのだから。
「あなたの笑顔は記憶に残るだけじゃもったいないくらいキラキラしてるわ。だからこそ、あなたの笑顔を形にしておいた方がいいと思うの。」
「…でも……」
「分かってる。アルバムなんて作ったこと無いのよね?だからこそよ。大丈夫、写真なんてふとした時に撮りゃいいの。」
「…うん…じゃあ…作ろう…かな…?」
何より文が折角カメラを置いていってくれたのだ。流石にこのまま放置と言う訳にもいかない。
「じゃあ…この…月と一緒に撮った写真…それが紗稀のアルバム第1号ね。」
「うん!」
「あ…アルバム作る前に…写真を貼る前のアルバムを用意しないといけないわね…」
「あ、アルバム……あるよ…ほら。」
そう言って紗稀は自分が被っていた布団の中から中身がまっさらなアルバムを取り出した。
「…これ…なんで?」
「ん…起きたらお布団の中にあった。」
「…文か…まぁいいわ。恐らくこれを使えってことよ。ありがたく使うとしましょうか。」
紗稀が眠った後、布団を被せたのも、アルバムを入れたのも文だろう。何故アルバムだけを布団の中に入れたのかは疑問であるが。
「後でお礼言わないと…」
「宴会の時でいいと思うわよ。紗稀の手料理と共にお礼したらいいんじゃないかしら?」
「…手料理……うん!そうだね霊夢!」
何より今から文がいる"妖怪の山"に行くのは気が引ける。文は"天狗"と言った種族で、上下関係に厳しい。もしも文の上司が紗稀を侵入者と捉えたら……霊夢にとって面倒になるのは間違いない。
「それと…とにかくその布団を片付けましょう。そろそろお腹空かない?」
「空いた……」
紗稀はお腹を抑えるポーズをとる。霊夢はお腹が鳴るのを期待していたが…残念ながら鳴らない。
「ね。じゃあ…昨日の夜のことを聞きながら朝ご飯作るとしましょうか。」
「うん。あ、あのね霊夢。昨日ね〜お空飛びながら写真撮ったりしたんだよ!」
「へぇ…昨日の夜空は綺麗だったでしょ?」
「うん!凄かったんだよ!後ね………」
紗稀は昨日の夜の出来事を霊夢に話ながら朝食を作った。余程楽しかったのか、何度も同じ話をした紗稀を見て、また一緒に飛んであげようと思う霊夢であった。
「…あ、あのさ霊夢…」
洗い物も終えてのんびりしていると紗稀が声をかけてきた。
「ん〜?」
「…今日もいい天気だね。」
「フフッ…そうね。」
紗稀が伝えたいことは天気では無いだろう。何か悩んでいるのが丸分かりだ。
「…えと……うと…」
「なぁに?特に用事なんて無いの?」
「あ…う、うん……でも…何かお話したいんだけど…何話していいか分かんなくて…」
確かに普段は大切な話だったり、霊夢から話を広げたりしていたので紗稀から話を振ったりするのは初めてかもしれない。
「そんなのなんでもいいのよ。」
「…む、難しいよ…」
「むしろ何に悩んでるのかが不思議なの。日常会話で…何を話そうか…なんて悩むのは紗稀くらいよ?」
「う…だって…分かんないんだもん…」
シュンと落ち込んでしまう紗稀はどう見ても可愛いだろう。無論、霊夢もそう思っている。
「よしよし…だったら明日の宴会について話せばいいんじゃないかしら?」
「…宴会……たくさん来てくれるかな…」
結局こうして霊夢が話を繋げるのだ。まだ少ししか一緒にいないが…ある程度の流れは生まれてきたのだろうか。
「来てくれるわよ。そのために萃香に呼びかけを頼んであるんだから。何より…あなたには人を惹き付ける何かがあるわ。」
「…そ、そんなの…無いよ。」
「まぁ…前の世界でのことを考えたらそう思うわよね。でも大丈夫、私達は間違いなく分かってるから。本当に何もないなら…私はここまで紗稀と一緒に笑ったりしてない。」
「…そうなのかな…よく分かんないよ…」
案外自分のことなんて自分には分からないものだ。紗稀にとっては霊夢が分かっていると言うのならそう思うしかないのだ。
「…そうねぇ…まぁ分からないからこそ…他人にとっては魅力に感じるのかもしれないわね。」
「うぅと…その…れ、霊夢がそう言ってくれるなら…いいや…」
「フフッ…嬉しいこと言ってくれるわね。」
「…だって…そう思ったんだもん…」
そう言う紗稀の素直な所が魅力の1つであることを紗稀は気付いていない。これが霊夢の言っていた本人が分からない魅力であろうか。
「そうね。紗稀は嘘なんてつかないわよね。」
「嘘…ついたことない…」
「それでいいのよ。嘘なんてついてもろくなことにならないんだから。」
「…霊夢は…嘘つかない…?」
霊夢は悩んだ。嘘なんてついたことあるに決まっている。しかし正直に言うのはどうなのか…いや、ここで更に嘘をつくのも紗稀に申し訳が立たない…だから霊夢は苦渋の選択を選んだ。
「…紗稀は私が嘘つくように見える?」
「ううん。思わないよ。」
このはっきりとした答えに霊夢は少し後悔した。霊夢の言ったことは間違ってはないのだ。嘘をつくともつかないとも言ってないのだから。しかし…何か紗稀を騙した気がしてならない。
「…い、いや…ちょっと待って…やっぱり今の無し…」
「…へ?どうしたの…?」
「ごめん紗稀!正直に言うわ、私…嘘ついたことある!」
無理だった。純粋無垢な紗稀を騙し通すのは霊夢の良心が許さなかった。
「…え……で、でも…霊夢…嘘ついたの…見たことないよ…?」
「…そりゃ自分から嘘つきました、なんて言わないわよ。でも紗稀に嘘はついてないわ。これは本当。」
「うん。それは分かるよ。そうじゃなくて…霊夢って…他の人に嘘つく…?」
「…少しだけ…」
これも本当だ。霊夢は基本的に嘘をついたりはしない。何故なら面倒だからだ。更に言うなら霊夢は面倒が嫌いだ。だから正直に言っても面倒になりそうな時だけ嘘をつく。
「でも…見たことない。いつも私と話す時と同じ感じする…」
「あぁ…紗稀が来てからは嘘ついてないわよ。と言うかつくことがないわ。」
紗稀のための買い物や宴会の準備に幻想郷を回るのが面倒に感じないのだ。その労力は紗稀の笑顔で賄われている…ということだろう。
「…そうなんだ…でもね霊夢…色んな本を読んで思ったことがあるの。」
「…ん?」
次の瞬間、霊夢の顔は驚きに染まることとなる。そして思うのだ。本には多大な力があるのだと。
どーも、まーりんです!
本当は1話完結にしたかった。けど、無理だった。まぁいいや。
さて、いつものテーマ発表。次回のテーマは…家族かな。うん。あ、次回ね、進展するから。
それでは次回もゆっくり見ていってね!




