好きなの?
「それじゃ、頼んだよー!今度何か奢るから!」
結局先生は最後の最後までテンションが高く、私と若奈ちゃんに何度も何度もお礼を言って、やっとこさ図書室を出ていった。
賑やかだった先生が退場して、図書室は本来の静けさを取り戻す。
「………」
「………」
「……えっと、これ3枚束ねて、右上に止める…でいいよね?」
「あ、うん。あと、10部ごとに向き変えて重ねてね」
「わ、わかった」
「………」
「………」
「………」
「………(なんていうか……)」
気まずい……っ。すんごく気まずい……っ!
私と若奈ちゃんの間には。何とも言えない空気が流れていた……。
いや、ずっと話してみたいと思っていた相手ではあるけど!
こう実際面と向かったら、何を話題にしたらいいかもわかんないし!
だってこれが初接触だし!!
静寂の中、聞こえるのはホッチキスのカチャッカチャッという音と、トントントンと紙と机のぶつかる音。
それだけ。
若奈ちゃんは黙々と作業する。
私も、向かいの席を気にしつつ、トントンカチャッと作業する。
「………」
「………」
続く沈黙。
気付けば若奈ちゃんを気にしてた私も、手元のプリントとホッチキスに集中していた。
高く積み重なっている紙の塔を、順番に3枚ずつ取っては綺麗に揃えてホッチキスで止め、取って揃えて止め、取って揃えて止め……。
時間を忘れ黙々と繰り返す。
図書室は本来よりも張りつめた静寂が流れていた。
やがてその静寂を破ったのは、偶然にも私と若奈ちゃんの声で。
「あ」
「あ、キレた」
2人して素っ頓狂な声を出して、似たような動きで止まっていた。
「キレたって、芯?」
「そうそう。白川さんのも?」
「う、うん」
ホッチキスの芯がとうとうなくなった。
芯が入った箱は、何箱かは置かれていたんだけど、どうやら5クラス分止めるには足りなかったみたい。
私と若奈ちゃんは、同時に「はぁ~……」と疲れた息を吐いた。
「ちょっと休憩しよー……。1時間ぶっ通しでやってたし……」
「え、1時間もやってたの!?……だから首痛いのか」
私が首をぐおんぐおんと2回回すと、ゴキゴキゴキーと硬い音が鳴った。
うわー、相当首凝ってるなー……。
若奈ちゃんも首をひねって筋を伸ばしている。
集中が途切れて、疲れが一気にやってきた。
「うぅ~……、きんもちぃ~~……」
若奈ちゃんは今度は前で手を組んで上に思い切り伸びをした。
そうそう、それ疲れた時にやると気持ちいいんだよねー。
「あぁ~あのさぁ~、白川さんってぇ~……」
伸びをした状態で、若奈ちゃんは突然口を開いた。
「んー?」
「三木好きなの?」
…………ん?