偶然の産物
「あのさー、白川さんって……」
「んー?」
「三木好きなの?」
「……はい!?」
私ってそんなあからさまだったっけ!?
そんな不安に駆られた放課後の出来事。
「あ、あれ?違った!?好きじゃ……ない?」
「えっ!?いや、その、好きじゃない、わけじゃ……ない」
それは全て偶然の産物だった。
授業も終わり、部活動に向かう生徒がほとんどの中。
帰宅部の私は帰る気満々で、職員室の前を通りかかった。
するとガララと扉が開き、出てきたのは偶然にも私の担任の河先生。
「あ、白川さん!ちょうどいいところに!」
「へ?」
説明する間もなく、河先生は私の手を引っぱって歩き出す。
私はわけもわからず、でも先生だから断れるはずもなく、っていうかヘタレだから何も言えないまま、大人しくついていく――。
連れて行かれたのは図書室。
中に入るとそこには若奈ちゃんもすでにいて……。
「ささ!白川さんはこっち座って!」
「え?あ、はいっ」
私は若奈ちゃんの向かいの席に座らされた。
先生は、分厚いプリントの束を私の前にでんっと3つ置くと、少し早口で説明する。
「えっとね、明日の授業で使うプリントをホッチキスで止めてほしいの!5クラス分!」
「5クラス!?」
「ほんとは自分がやらないとダメってのはよーくわかってんだけどね!あと急につれてきてほんとに悪いと思ってるんだけど!でもね!」
「ついさっき、急きょ職員会議が入ったんだってさ。先生も大変ですね」
若奈ちゃんがテンションが変に上がって早口になり過ぎていた河先生の代わりにゆっくりと教えてくれた。
当の河先生はまだテンションが下がりきらないのか、若奈ちゃんの言葉に何度も何度もうんうんと頷いていた。
「確かに大変……」
「だから!お願い白川さん!手伝って!」
「あ、はい。私でいいなら全然手伝いま――」
「あーーーーりーーーーがーーーとーーーっっ!」
「うぇっ……」
言い切らないうちに先生は私をぎゅ~っと抱きしめた。
相当困っていたようで、私を抱きしめる先生の力は半端なかった。
……半端なく苦しかった。