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笑顔
この場を立ち去ろうと、私が半歩下がった時だった。
「あーあ!笑えた!」
気が済むまで笑ったのか、男の子がそう言って顔をあげる。
そして私を見つめると――。
「ありがとな!」
太陽。
この眩しすぎるくらいの単語が似合うほどの眩しい笑顔だった。
目に浮かぶ涙は、笑い過ぎた涙なのか、その前の涙なのか。
でもその時はそんなことを考えている場合ではなかった。
心臓をどすっと突かれる感覚に鳥肌が立つ。直後に心臓が、指先が、全身が、どくどくと脈打ち始めた。
眩しい笑顔。目眩がするくらいの綺麗な笑顔。
「あ、校舎口はここ真っ直ぐ行ったらあると思う!俺そこから来たし」
「ああああ、あああ、あ、ありがとう……」
「お前1年?」
「う、うん……」
「やっぱり!一緒!」
これが始まり。
彼の笑顔にすべてを持っていかれた、いわゆる『一目惚れ』。
私の恋が、始まった。