第四話 門番の兵士
再び森を歩いていると、開けた場所に出た。
「おっ…あれは」
遠くに街が見える。しかも見る限りかなり大きい街だ。距離はまだ少し離れているが、今日中には着くだろう。目的地が見えれば足取りも軽くなる。取り敢えずは喉も渇いたし、腹も減ったので宿をとって何か食いたい。
「あ、けどお金ないや」
突然森に来たので俺は一文無しだ。あるとすれば熊の毛皮くらいか。熊の毛皮を売る事が出来ればいいが、万が一の時は野宿になるかもしれない。流石にそれは嫌だなー。兎に角街に行かないとどうにもならないので、再び歩き始める。
「やっと着いた……」
かなり疲れた。というか熊の毛皮が地味に重い!が、金になるかもしれないから捨てるに捨てれなく、結局ずっと持ったまま街に来てしまった。
「ん?見ない顔だな。あんた冒険者か?なら冒険者ギルドカードを出してくれ」
街の入口に来ると門番の兵士がいた。やっぱ冒険者ギルドあるのか。流石ファンタジー。これはもう冒険者になるしかないな。
「いや、冒険者じゃない。なろうとは思ってるがな」
「そうか。なら、なんか身分を証明出来る物はないか?」
「い、いや……」
マズイぞ……。もしかして身分証明書みたいな奴がないと街に入れないパターンか!?
「そうか。なら、仮身分証を作るから待ってくれ」
「あ、あぁ……」
良かった。そのパターンじゃなかった……。門番の兵士は一旦奥に行くと用紙とペン、そして首から下げれるカードを持ってきた。
「じゃぁ、この用紙に記入欄してくれ。文字は書けるな?」
チラッと用紙を見てみる。どう見ても日本語にしか見えないな。素晴らしいご都合主義!これなら大丈夫か。
「あぁ、大丈夫だ」
何々……えっと名前、年齢、出身地……だけか。名前はどうすっか。もともとの名前を使うのはこの世界に合わないだろうからレイでいいかな。苗字は……貴族だけとかそんなのがあるかもしれないから、これでいいだろ。年齢は15。因みに二週間前くらいに誕生日だった。出身地は……まぁ、適当に書いとけばいいかな?なんか言われたら辺境にある村って事でいいだろ。そこはテンプレだよ、テンプレ。
「ほい、書けたぞ」
「ん……レイ、だな。出身地のジパングってのは知らないな。何処だ?」
「辺境の小さな村だよ」
「そっか。まぁ、問題はないな。じゃぁ、これ」
そう言って兵士にカードを貰う。首から下げれるが別に下げなくても、持っていればいいようだ。
「それは仮身分証だから一日だけ有効だ。冒険者に登録すれば冒険者ギルドカードが貰えてそれが身分証明の代わりになるから心配はいらないねぇ。身分証明を手にいれたら、そのカードは街を出る時にでも渡してくれ」
「分かった。あと、冒険者ギルドは何処にあるんだ?」
「街に入ってすぐに右に曲がってあとはずっと真っ直ぐだ。近いしデカイ看板もあるからすぐに分かると思うぞ」
「分かった。ありがとう」
「おう。気を付けて行きな」
門番の兵士と別れを告げる。
街に入ると、多くの人で賑わっていた。都会程ではないが、人はそこそこ多い。そろそろ日も暮れそうだ。さっさと冒険者ギルドで登録済ませて宿を取ろう。そう思い、俺は冒険者ギルドへと向かった。
補足:門番の兵士はレイの持っている熊の毛皮を見て、最初冒険者だと思いました。しかし、門番の兵士は新米が任されるので、レイが持っていた熊がどういうものなのかは知りません。次回はその熊の事について分かります