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俺はストーカー

妄想が爆発しました。

至らぬことが多くてすみません。

受験の息抜きです。

続きません

 俺はストーカーだ。

 そうやって自負するのは真のストーカーではないと言う人もいるかもしれない。

 だが、あえて言いたい。

 俺はストーカーなのだと。




 忘れもしない運命の日。

 桜の舞う中を優雅に歩く彼女に見惚れたのはきっと俺だけではないのだろう。それでも俺には彼女との出会いが運命に感じられてしまったのだ。

 その怜悧とさえも言える美しき彼女のその横顔といったら!!!

 衝動的に愛を叫びそうになってしまったが、俺は紳士だ。もちろん帰宅してから叫ぶに留めておいた。

 そこからだ、俺の愛の日記が始まったのは……




 当然のことながら、ストーキングはばれてはいない。日記の量も膨大になってしまい、父親に見られてしまったときは人生の終わりを覚悟したものだったが、ポンと肩を叩いて頑張れよと爽やかに笑う父に感涙してしまった。

 その日からは外面も気にするようになった。

 家族には迷惑は掛けられない、なぜなら俺は紳士。

 これまでは隣でバスケをしている彼女を観察する為のものであり、周りと合わせて努力する程度であったものを必死で観察しながら努力している。勉強も成績が落ち気味ではあったものの持ち直すほどには向上した。

 そうして文武両道、一日観察を徹底してきた俺に奇跡が起こった。

 そう大会である。

 地区大会の二日目では大会の会場が男女合同なのだ。

 嗚呼、神よ。

 神は俺に試練だけでなく、褒美も賜ったのだ。もはや飴と飴だ。何を言っているのかは分かって貰えないかもしれない。しかし、それほどに俺は舞い上がっていたのだ。

 彼女を応援する大義名分を得て、応援される大義名分を得ることができた。

 紳士の俺は直感したよ。運命をな。





 結果としては俺は幸せだった。

 他の野郎共まで彼女を視界に入れることは不愉快極まりなかったが、俺は紳士で分別あるストーカーなので醜く嫉妬などしたりはしない。

 しかし、周りの目も気にせずに彼女だけを応援してしまったのは迂闊だった。やはり、これほどのご褒美の前では紳士とはいえ、俺も男。狂ったように応援してる姿に野郎共にニヤニヤされてしまった。

 引かれるかと正直思った。





 あれ以来、部活の奴らが馴れ馴れしくなった。なぜだ。


「お前もやっぱ男子だったんだな」


 今までなんだと思っていやがったのだろう。


「でもあの人はレベル高すぎだろ」


 ニヤニヤするな、鬱陶しい。

 あとお前ならいけるってとか言われた。

 ……胸が温かくなってしまった。





「ちょっといいかしら?」


 今日という日を俺は国民記念日にしたい。

 彼女に声を掛けられたのだ。日記につけたい。やばい。今日だけで一冊埋まってしまうかもしれない。

 しかし、返答は慎重にせねば。彼女とのファーストコンタクトである。できうる限り丁寧かつ自然にいかねばならないだろう。

 もう一度言おう。

 彼女とのファーストコンタクトである。


「もちろんかまわない」


 いかん、少し早口だ。いや、ドモッたりするよりはマシだ。しかし彼女は美しい。今まではこれほどの近距離で彼女の美しきお顔を拝見することなどなかった。

 嗚呼、素晴らしきかなこの世界よ!!


「ありがとう、実は聞きたいことがあるの」


 ……なん……だと…

 直後に俺の脳裏を駆け巡るのは今までの俺のストーキングである。

 もしや今までひたすらに彼女の姿を目で追っていたことがバレたのか、それともオリエンテーリングの写真で彼女の写っていた写真を全て購入したことが知られてしまったのか、それとも……

 ダメだ、聞かれそうな案件が多すぎる。

 考えれば考えるほど思考の渦に呑まれて、冷や汗が滲み、心臓の鼓動が早鐘のようになっていく。

 違う、こんなはずではなかった。

 もっとこう甘酸っぱいものを俺は妄想していたのだ。

 何なのだ、この推理物で追い詰められ始めている真犯人のような心境は……

 この間およそ五秒。

 彼女のその美しい唇から紡ぎだされた言葉に俺は------



「あなたって好きな人とかいたりするの?」


 俺は固まった。

 これかもしかして、もしかすると、違うかもしれないけれどもしかしたらあれなのかもしれなくはないのではないのではないのだろうか(混乱)

 

『じ、実は前からあなたのことに興味があったの』

 

 的な両片思い。それを妄想するだけで五千パターンはイケル。

 いつも気になるクールなあの子も実は俺に……

 いや、落ち着け俺よ。クールになれよ。そう目の前の彼女のようにクールガイになるのだ。


「いるよ」


 君だよ、なんて言わない、言えない。おぉっ、なんかJ-POPの歌詞っぽい。いかん、キャラがブレる

。ブレッブレだ。


「そう……ありがと」


 そう言って去っていく彼女の後姿を俺は網膜に焼き付けていた。

 後になって思う。

 お互いに自己紹介なりしとけばもう少し接点持てたのではないかということに。




「今日、彼女に好きな人がいるかどうか聞かれたんだがもしかして脈ありだろうか?」


 相談相手は父親だ。父はあの時爽やかな笑顔で俺を導いてくれた。今度だって……きっと。


「それはきっとお前に惚れているよ、だから逃しちゃいかんぞ」


 逃すわけがない。そう答えると父はやはり爽やかに笑うのだ。




 彼女との会話から一層俺は文武両道、一日観察を貫いてきた。

 そして、隙あらば話しかけようかとも画策したが、それに関してのハードルは依然として高い。

 盗撮もできず、盗聴もできない。そんな半端者の想いは届かないのかもしれない。

 それでも俺は彼女を慕い、見続けるのだ。

 俺は彼女を愛している。





ーーーーーーーーーーーー


「ねぇ、彼がまたわたしを見てくれているわ」


 こそっと彼女はチームメイトの一人に話しかける。


「もうそんな報告いいから早く捕まえときなよ、この前話しかけに行った時のことも何度も話すしさぁ。ずっと見られてるなんて聞かされるほうは堪ったもんじゃない」


「そうかしら、とっても気持ちいいのだけれど」


 それに話しかけに行った時の彼の表情なんて思い返すだけで……そんな風にぞくぞくしたかのように身を震わせてる彼女にチームメイトはびびりながら叫ぶ。


「何言ってるのかなぁ!!」


 表情を変えずに彼女は続ける。


「やっぱり彼はいいわ、最高よ」


 それでもどこかうっとりと。


「あんたも大概なんだから告白しちゃえば?」


「そうね、そろそろ隣にいてもらわないと余計な虫が湧きそうね」


「虫って……虫……」


「彼もあれだけわかりやすいのに分からないと本気で思ってるんだもの。そういうところも好きなんだけど」


「……もう好きにしなよ」


「あなたの許可を得るまでもないわ」

 

 そう言って彼女は微笑む。

 どこまでも愛おしそうに





 彼は知らない。

 父親もまた妻を今尚ストーキングするアブノーマルということを。

 彼は知らない。

 愛する彼女は彼以上の執着を以って彼を愛しているということを。

 彼は知らない。

 彼の部屋には無数の盗聴器、隠しカメラが潜んでいるということを。

 彼は知らない。

 彼女の部屋は彼で埋め尽くされてるということを。




主人公:ややストーカー。周りとの関係にも気を遣うし、いろんなことを頑張る時点でそれなりにいい子。

ヒロイン:ガチストーカー

父親:ガチを超えたガチストーカー(奥さんにだよ!!)ナイスミドル

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