捻くれ雀蜂に、高飛車蛇がデレた。
「ふう……全く、なんですのあの男は…!良心が無いのでしょうか全く!」
「………同感」
いくらなんでも、時雨の言い方は酷すぎる。時雨が二階に向かったあと、ソファに腰掛けていた真紀は思い切り毒づいた。
同様の凪も頷いている。時雨の意見は正論といえばそれまでだが、納得がいかない。
実際に、時雨の言葉を聞いて泣き出した子も少なく無かった。それ等の子は、必死で凪とツバメ、真紀であやしたのだが、そのツバメまでもが、時雨のせいでいなくなってしまった。
「…はあ、あんな方とチームとは先が思いやられますわ」
「……うん」
真紀が立ち上がった瞬間、上から凄まじい轟音がした。同時に、心なしかギルドも揺れた。二人は仰天のあまり、ソファから飛びあがった。真紀も凪も目を白黒させている。さらに、奥にいた子供たちが出てきてパニックに陥ってしまっている。
「………っ!?なにが」
「と、とにかく参りましょう!ああ、貴方たちは此処にいて下さい。行ってきますわ!」
子供たちに声をかけて、階段を大慌てで駆け上がる真紀と凪。だが、二階の何処にも二人の姿は見当たらない。
再び、轟音。それも、ギルドの外から。正確には、上から。
まさか…。
「…屋根の上、ですの?」
「……彼なら、やりかねない。行きましょう」
ーーーーー
「ちょっと!何か凄い音がしましたけど、なにかあったのですか!?」
「…………あれ、時雨?」
上空には悪魔の笑みを讃えた時雨の姿があった。その右腕にはスロットは無く、代わりに右脚にそれは装着されていた。
「……なに、あれ。なにをやってらっしゃるのでしょう、あの鬼畜は」
「…わたくしにもよくわからなくて…鬼畜なのはわかりますが」
と、思うと真紀たちの声が聞こえてないのか、無視して高度を上げ始めた。
そして、そのまま右脚を突き出してダイヴアタック。
そのスズメバチの一刺しにも似た一撃はその直線上の敵すべてを貫いていった。
途中でブレーキも掛けてちゃんと止まっていたし、真紀の目から見ても完璧だ。だが、何故か不満そうだった。
「……そこは爆発しろっての…」
絶句した。というか、スズメバチって脚の力も強いのだろうか。
あとでしっかりとアナコンダについてツバメにレクチャーしてもらう事を、硬く心に誓う真紀であった。しかし……。
「どんだけ鬼畜なんですか!?」
まあそうだろう。勝手に蹴り飛ばしておいてさらに『爆発しろ』とは。高飛車と言われる真紀ですら鬼畜感を覚えざるを得なかった。
凪はその隣で、「…悪魔って、いるんだね」と呟いていた。いや、いくらなんでもそこまでは…。あー、うん。そこまでじゃないと信じよう。というか、そう信じたい。
空には、影が二つ。
既に敵のリーダーとおぼしきバズーカ野郎と悪…時雨以外は全員仲良く落ちていた。
「まあいいか。で、アンタ。おとなしく地に落ちろ」
…いや。きっと聞き間違いだろう。いくら時雨でも、此処は投降しろ、と言うはず…。
「悪には死あるのみ」
……。聞き間違いでは無かった事に、ツバメ、真紀、凪の三人は絶望した。まだ情状酌量の余地はあってもいいんじゃないだろうか。
「鬼かお前は!」
「鬼?馬鹿な、俺は悪魔神だ」
……もはや、なにも言うまい。
「…ラ○ダーは何処へ…」
しくしくとツバメが泣き出した。まあ、先ほどのキックといい、時雨がラ○ダーに影響されているのはなんとなくわかった。
真紀は子供っぽい戦隊ものなんかの特撮には興味無かったが、なんと無く正義の味方というのはイメージがついていた。が、どうやらこいつはラ○ダーはラ○ダーでもダーク系のやつらしい。
…いや。今時ダーク系でも此処まで鬼畜なのはいないだろうか。
ゲームから帰ったら、5○5でも見てみようか。
そんな事を考えていたが、焼けるような熱に晒されて真紀は意識を戻した。
「…あれは…あいつの必殺技?」
凪は、宙に浮いたままバズーカから熱線を放つ男を指差す。それに答えたのは、ツバメだった。
「は、はい。ミイデラのフルチャージで、バズーカから超高温の熱線を打ち出すのです」
超高温。
………まずい!
直感的に、真紀は感じた。祖父から聞いた事がある。ニホンミツバチは、スズメバチが熱に弱い事をしっているから、蒸し焼きにしちまうんだ、と。
「いけませ……!」
叫ぼうとしたが、その必要は無かった。余裕ぶっていた時雨だが、熱線が近付いてくるとハッとした顔になって、急駆動して避けたのだ。自分の声が聞こえたかどうかは定かでは無いが、時雨は学ランの裾を焦がしただけで済んでいた。
「…はあ、冷や汗でましたの」
「……全く。余裕ぶるのも程々にして欲しい」
そこで気がついた。時雨が助かって安堵している自分がいる事に。
なぜだろう。あんなに嫌っていたのにも関わらず。
真紀はわけがわからず、金髪をクシャクシャとした。
「あああ!もうわけわかりませんわぁっ!」
両隣のツバメと凪が驚いたのか、目を見開いた。
だが、三人の視線と耳はすぐに上に向いた。
向かい合い、ビビリモード炸裂中の敵さんのリーダーをさらに震え上がらせている時雨がなにかを喋っていた。
「…ああ?化け物だぁ?違うね。俺は、この最下位ギルドの救世主だ」
…え?な、なにを言ってるんだろうか。真紀はライダー云々はわからなかったが、彼がこのギルドに停滞するだけは理解した。だが、一つ解せないのは、残る理由だ。
時雨は『ボロギルド』呼ばわりしたり(実際そうなのだが)、出て行く気しか無いように思えたからだ。しかし、今の言動では、まるでこの状況を打破する気ではないか。
時雨は、ギルドの屋根スウッと静かに舞い降りた。
「なんだ、居たのかお前ら」
「い、居たのかって…というか、さっきのセリフはなんですの?救世主とかなんとか…」
「ああ、あれね。こんなボロいギルドは俺も嫌だし、少なくとも普通にはしてーだろ」
「そ、そうでは無くて!貴方出て行く気じゃ無かったんですの!?」
「……そんな事、言った覚えはないけど…」
カリカリと頭を掻く時雨。確かにそれはそうなのだが……。
「…まあいいや。てかツバメ!」
「は、はひ!なんでしょうか?」
突然名前を呼ばれて飛び上がるツバメ。時雨はチョイチョイと人差し指で、人間杭と化した哀れなミイデラを指差した。
「あれ、多分気絶してんだけど、金ってどうすんの?」
「あ。心配いりません。ほら」
次の瞬間、ツバメの持っていた契約書がパンパンに膨らんだ袋に変わった。ジャラジャラ音がする辺り、コペルが大量に入っているらしい。
こんなお金が、何故?
しかし、以前のツバメの台詞を思い出して、それが相手の賭けたものなのだという事を理解した。では、時雨は一体なにを賭けた?
「…ちょっと。貴方、なにを賭けの対象にしたんですの?」
「ん?このギルドの存続さ」
あっさり答えた。なんの悪びれも無くして。
気付いたら、真紀は先ほどのように平手打ちを打っていた。
綺麗に音がなる。まさに蛇じみた眼光で時雨を射抜いていたが、スズメバチには眼光など効かない。真紀はそれでも睨みつけ続け、時雨をまくし立てた。
「…なにを、なにを考えていますの!?勝ったからいいものの、一つ間違えばこのギルドが無くなっていたのですよ!?」
「ん?そーだな」
素晴らしくあっさりとした回答。隠すつもりは無いらしい。いや、そもそも時雨にとって、隠すことでもないのだろう。だからこそ、腹が立った。
「では何故こんな馬鹿な事を!もしギルドが無くなれば、此処の子供たちは如何なるかわかっていらして!?」
「あのな。それも考えずに行動するほど脳筋じゃねえっての。だいたいなぁ…」
ふうっ、と時雨は腰に手を当てて溜息をついた。そこで、瞳が黒から濃いオレンジに変わっている事に気がついた。が、どうでも良かった。
苦々しい顔をしながら、時雨は口を開いた。
「俺が戦ってなきゃ、問答無用でこのギルド潰されてたんだぜ?学ランの裾焦がしすらしたのに、報酬が平手打ちって、そりゃあんまりだろう」
「……?なにを言ってますの?」
意味がわからず、頭の上にクエスチョン・マークを浮かべた。そこにツバメが割って入る。
「えーと…第四百二位ギルド《タイタンズ》が、総勢の三十三人でけしかけてきたのです。もしこの条件を飲まなきゃ潰す、って」
突然の時雨の返しに、驚く真紀だが時雨の言葉を補足するようにツバメが説明した。ニヤニヤとした笑いを浮かべた時雨はおどけていたようだ。
「んで、心優しい俺が、あいつらの賭けたギルド存続権利を実用的なお金だけで済ましてやった、というわけさ。うわ、俺やっさし」
……どの口が言うのだろうか。
だが時雨が冗談めかしているのは明白で、誰もツッコミはしなかった。しかし……。
「…本当、ですの?」
「はい。一から十まで本当です。時雨さんは、わざわざ戦ってまでこのボロギルドを守ってくれたのです」
「よせやい。個人的に戦ってみたかっただけだっつの」
…………もし、それが本当なら。
最低なのは自分の方だ。凪はなにも言っていないが、自分は、戦ってくれた時雨に対して糾弾するばかりか、平手打ちまでしてしまったのだ。歯を食いしばり、真紀は時雨に頭を下げた。
「……申し訳、ありませんでしたわ。お詫びに、とは言いませんがなにか一つ命令を聞きましょう。それが例え不埒な事であっても」
いつもの真紀からは到底考えられないようなセリフと行動に、逆に時雨は引いた。ドン引きだ。
それを隠そうともせずに言い放った。
「な、なんだ急に。気持ち悪っ」
「…どうぞ、なんなりと。私は、貴方が戦ってくれていた間、階下で貴方の愚痴を言っていただけなのです。それでいて、平手打ちまでしてしまった。謝罪は、当然の事です」
「…………なら、私も」
すっ、と視界の端に長いロングヘアが垂れ下がるのが見えた。凪は、相変わらずの無表情だが真紀には少し悲しそうに見えた。
「…私も、同罪。糾弾などは口にしていなくても、心の中ではそう思っていた。ううん、言わなかっただけ卑怯者。私も、なにか一つ言う事を聞く」
淡々と、抑揚の無いボーカロイドのような喋り方だが、時雨に対しての謝罪感は真紀にも伝わった。
時雨の表情はわからないが、彼の事だからきっと『なんでも』という言葉に反応しているだろう。
と思うと、凪とはまた別の頭が下がった。ツバメだ。
「その…こんなボロギルドを救って頂いて本当にありがとうございました。御礼の代わり、とは申しませんが、わたくしも一つだけ言う事を聞きましょう」
「いやあの、あれ、もともとは俺のせいなんだけど」
「…それでも、感謝の意は変わりません」
三人は、頭を下げた姿勢のまま動かない。
時雨は、なにを考えているのだろうか。次に聞こえてきたのは。
『アウト』
合成音声と共に、カシュン、とスロットからメダルが引き抜かれる音がするとまずツバメの頭に手がおかれた。ツバメはピクッとしたが、『なんでも』と言った手前我慢していた。
時雨の、命令は。
「…まずはこの金。これはギルドをマシにするために四割使え。ガキの服とか、飯とかに二割。蓄えに一割。残った三割はあいつらに返してやれ。流石に全額となりゃあいつらもマズいだろうしな」
「………え……」
時雨はズッシリとした重量の袋をヒョイと持ち上げてツバメに突きつけた。ツバメはいきなり渡された袋の重みでよろけた。
「これが、俺の命令だ。あとはまぁ、命令じゃなくてお願いだがこれからも拾い主としてガキの面倒はみろ。以上」
予想外の命令だった。
あの鬼畜が。悪魔神が。『泣く子も蹴飛ばす鬼野郎』の時雨が。
てっきり、真紀も不埒な事しか命令してこないと思っていた。
ツバメも、驚いた顔をしていたが栓をきったように泣き出した。
それに対して、時雨はかなり慌てていた。
「お、おい!?どうした!?」
「…い、いえ…ぐす、うえ…っ!な、な"んでもないでず…うくっ、ひっく…うああああ!」
「痛い痛い痛い!俺今、メダル使ってねえから!っていだだだだだだだ!」
見ると、時雨の腰に思いっきりツバメが抱きついていた。涙と鼻水で綺麗な顔はぐしゃぐしゃになっていたが、とても幸せそうだった。
時雨は、痛みに悶えていたが。
「いだだだだ!ああ、もう!面倒くせえし、もうこのままでいいや!おい凪!」
「………なに?」
今度は凪。どうやらあのままで命令を言う気らしい。
数秒考えたそぶりを見せ、時雨は凪に命令をした。
「えーと、えーと、そう!お前、もうちょい表情を変えろ!ノーリアじゃ俺が悲しい!」
「…分かった。こう?」
凪は顔を挙げて、ニッコリと微笑んでみせた。その笑みは、まるで向日葵のような明るいものだった。同性の真紀ですら、一瞬見惚れてしまうほどに綺麗だったのだ。これでは時雨も…。
「…うーむ。リアクションしてくれって意味だったんだけどなぁ。まあ可愛かったしいいや」
「………!?か、可愛、かわっ!?」
「…日本語で、喋ってくれね?」
「〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!」
今度は顔を曼珠沙華のように真っ赤にして全力ダッシュで、此処から退散した。
「…なんだ、一体」
どうやら、時雨の方は全く意識無し。
…アホすぎる。
「で、最後は真紀なんだが」
唐突に名前を呼ばれ、少し驚いたが声は出さなかった。おとなしく時雨の命令を待つ。すると。
「お前、庶民とか貴族だとか言ってる癖に、ガキには弱いのな」
「ふ、普通ですわ!だいたい、ゲームの中で庶民も貴族も関係無いでしょう!」
「あっれ〜?昼間庶民がどうこう言ってたのは誰だっけな?」
「ぐっ…と、というか命令はなんですの!?」
「ん?ああ、命令な。それについてなんだが、保留だ」
「………へ?」
予想外の答えに、キョトンとする真紀。だが、終始時雨は普通に喋った。そしてツバメを引き剥がしに掛かった。
「ち、ちょっと!保留ってどーいう事ですの!?」
「いだだ!やっぱ無理!あ、そうだ!おい真紀!これ剥がせ!それが命令だ!」
「…………わ、わかりましたわ」
真紀はこのあと、泣きじゃくるツバメを剥がすのに必死になった。
それくらい、ガッチリついていたのだ。
ーーーーー
「…星、綺麗ですわね」
深夜。真紀はなかなか寝付けずに外で体育座りしながら星を眺めていた。
現実とは全く異なる、素晴らしく綺麗な星が夜空には広がっていたのだ。これはゲーム故の美しさなのだろう。
そう思って空を見上げていると、よっこらせと時雨が真紀の隣に腰を下ろした。
「おー。なかなかいい眺めだ」
「…何故、貴方はあんな事を?」
「ん?どれ?」
「…貴方は、捨て子の子らの事を悪く言ったではないですか」
すると、時雨はばつが悪そうに頭を掻いた。屋根の上の事といい、癖なのだろうか。
「……理由は、言わん」
「何故?」
「…格好悪くて言えるか」
……格好悪い?
意味がわからず、真紀は続けて時雨に尋ねた。
「格好悪い、とは?」
「それ言ったらおしまいだって」
ゴロン、と寝そべり、真紀とは逆の方向を向いてしまう時雨。
微かに焦げた学ランは無い。修繕の為にツバメに預けたのだ。その為に、カッターシャツ一枚でなんとも寒そうだった。実際、すこし震えていた。豪奢なドレスの真紀ですら寒いのだ。このカッコで外は辛いだろう。そう思っていると時雨は立ち上がって片手を上げて真紀に背を向けた。
「…あー、きっつ。さっむ。やっぱ中に戻るわ。じゃーな」
「あ、ちょっ…」
真紀の言葉を待たずしてとっととギルドへ向かっていく。そのギルドの扉が突然に開き、中からボロボロの服を着た子供が二人出てきた。二人とも女の子だ。
だが、時雨を見るなりビクリ!と怯えたようにそこらの気の影に隠れてしまった。その手には真っ黒な時雨の学ランが握られている。
「…あー、それ俺の」
「っ!ひっ!」
時雨が受け取ろうとして手を伸ばすと、一層縮こまってしまった。
それによって手もキツく握られて学ランに皺を作る。
「…参ったなあ。おい」
「な、な、なに…?」
萎縮しきっている。だが、構わずに手を学ランにさらに伸ばすと、その手はパシン、と払われた。
別段驚くでもなく、時雨は払われた手を見つめた。
「こ、これは真紀お姉ちゃんの」
「真紀お姉ちゃんが、寒そうにしてたから持ってきたの」
幼い目には、幼いながらも明確な敵意と恐怖が宿っていた。二人も震え、白い息を吐いていたがどうしても真紀に渡すつもりらしい。
時雨はその目を見て、諦めたように両手を上げた。
「わかった。オーケー。真紀お姉ちゃんは向こうにいるから渡してやってこい。俺は寝る」
そう言ったかと思うと、時雨は右手のスロットにメダルをはめ込んだ。合成音声が響く。
『セットオン。オオスズメバチ。コンプリート』
オレンジのオーラが時雨を中心に渦巻く。
時雨はメダルの力を使い、空へと舞い上がった。メダルを外し、そのまま屋根の上へと寝そべる。遠目でも白い息を吐いているのがわかる。
「…まさか、あんなところで寝るつもりかしら」
「寝やすいからな」
ちょっとびっくりして、小さく驚きの声を上げてしまった。聞こえていたのか。だが、あれでは確実に風邪を引く。というか、寒いなら中の相部屋で寝ればいいのに。
そこで真紀は思った。
先ほどの少女二人がアレだけ怯えていたのだ。相部屋の子供たちが怖がらないハズが無い。
真紀には子供には甘いとか言っておいて、自分も大概ではないか。ふと、そこで思った。
ならば何故あんな事を…?
考えていると、目の前に黒い学ランと小さな手が四つ出てきた。
「はいコレ。真紀お姉ちゃん、星が好きなの?」
「え?まあ…そう、ですわね」
「へへ!私、星には詳しいよ!あれが確か…ぷろきおん!」
ピシッと、シリウスを指差して得意げな表情をした。
もう一人の子も、その子を尊敬の眼差しで見ている。
その光景に、真紀は思わず苦笑を漏らしてしまった。
「ん?どしたの?あ!コレ!」
目をキラキラさせてまた一段と強く学ランを渡そうとしてくる。
コレ、時雨に渡したほうがいいんじゃあ…。
とは言っても、この子たちがそれを許さないだろう。困った。
「…ハックシュ!」
盛大なクシャミ。どうやら時雨らしい。やはりカッターシャツ一枚ではこの寒さは応えるだろう。
しかし、何故この子達は時雨だけ敵視するのか。いやまあ、時雨が馬鹿な事を言ったせいだろうが。
「…あ」
そこで気がついた。
きっと、彼は真紀と凪が子供たちと打ち解けられるように、『自分』という共通の敵を作り出したのだろう。
そうすることで、人間の心理をついて仲良くさせた。
だが、それを言わない。全くもって、彼らしい。
「…全く、あの捻くれ者の蜂は」
その日。
真紀は子供たちが帰ったあと、コッソリ時雨に学ランを返した。
ツ(以下ツ)「はい!どうも皆さん、今回も『跪け。』を読んでいただいて有難うございました!ツバメです」
月影(以下月)「どうも、作者の月影です。今回は八月二十五日更新予定でしたが、ちょっと遅れてすみません。今回はお便りも無かったので、クイズの答え合わせといきましょう」
ツ「…………………ごめんなさい。分かりませんでした」
月「….…。ま、まあ落ち込まないで下さい。では、何故《大雀蜂》に何故に威嚇行動が無いのか、でしたね。コレ、なんでかって言うと、『威嚇する必要が無いから』です」
ツ「……?それは、大雀蜂に近寄る生物が居ない、というコトですか?」
月「いえ。正確にいうなら、『問答無用で攻撃してやらぁ!覚悟しやがれ!』ってコトです」
ツ「………………し、時雨さんだ…」
月「………………僕もそう思いました」
ツ・月「…………」
ツ「ま、まあ…持ち主に似るってことで」
月「ありえない!?」
ツ「さて、今回はソロソロ終わりにしましょうか」
月「そうですね。では、皆さんも気になる生物とか居たら送って下さい!では!」
ツ・月「では、次回もお楽しみに!」
月「…ところで、初めて今回ちゃんと、このコーナー終われた気がする」
ツ「…………確かに」