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跪け。俺が救世主だ。  作者: 紙切虫
暇ならば、娯楽をあげましょう!
5/10

調子に乗ったら、お金を全部剥ぎ取られてしまった件w

「お前ら、死亡フラグ立ってるぜ?」


ニヤリ、と口元を歪ませる。

相手も同様に笑うと、右手をかざして叫ぶ。


「では…ゲーム、スタート!」


声と同時に、ツバメの手元に契約書が舞い降りた。これはなんか、ゲームというよりも現実の書類に似ている。


『ギルド《アース》:賭《ギルドの存続権利》。ギルド《タイタンズ》:賭《ギルドの所持金全額》』


どうやら、相手は全額を賭けたらしい。最下位ギルドだと、舐め切っているのだろう。

だが。


「がへぺっ!」


「まず一匹」


ゲームスタートの合図と共に、一瞬でプレイヤーの背後に移動した時雨は、その脳天に向けて拳を振り下ろした。殴られたプレイヤーは、一直線に地面へと頭からダイヴし、またも人間杭が打ち込まれた。ちなみに、そのプレイヤーが昼間のと同じ人物とは、時雨が知るよしも無い。


「な…!くっ、囲め!」


焦った様子でミイデラが部下に命令を飛ばす。だが、対する時雨は悪魔の笑みを浮かべているだけで焦っている様子は微塵も無い。それどころか、何処か楽しそうだ。


「無駄無駄無駄ァァ!片っ端から墜として打ち込んでやんよ!」


そう言うが早いか、手当たり次第に殴り始めた。

剣を持った男プレイヤーの斬撃をひょいと避けて、下から拳を叩き込む。遥か彼方まで吹っ飛び、流星と化したのを見届けず、頭上から振り下ろされたハンマーを片手で受け止める。


「な!?このハンマーを片手で、ってうおわああああああ!」


しっかりとハンマーの先を両手で掴み、フルスイングした。そのプレイヤーの行方は、飛びすぎて見えなかった。連続して武道着のプレイヤーが攻撃してくる。


「つあっ!」


「ほい。からの〜、てやあ」


「ガッホォ!」


綺麗な形で放たれた聖拳突きは、ハンマー同様に片手で止められた…どころか、人差し指で止められた。しかもつむじにデコピンしたら五本目の杭が打たれた。

もう大工にでもなろうか。一稼ぎできるかもしれない。


「…学習しろよ…。ハンマーでも止められたのに、素手で勝てるかよっての…」


はあ、と腰に手を当てて嘆息した。

時雨のセリフに呼応するように、弓矢やらスナイパーやらを持ったプレイヤーが、遠くから時雨を狙い撃つ。

が、銃弾はともかく弓矢は全部止めた。銃弾は避けたので、どっちにしろダメージは無いけれど。


「ば…化け物か!?」


「悪魔神です」


「な、ちょっ…うわぁっ!」


瞬間移動じみたスピードで、弓矢のプレイヤーの元まで()けた時雨は、その胸ぐらを掴み上げて放り捨てる。

建物に当たる音がしたから、ギルドに当たったんだろう。


「ゴメン、ツバメ!」


「ちょっとぉ!なにしてんですかあ!…って、前!前!」


「あん?前って…いってえ!なんだ!?」


こめかみに痛みが走る。見ると、遠くから昼間のスナイパー男が真っ青になりながらふるえていた。


「そ、そんな…フルチャージでも駄目なんて…ひいっ!」


「おい。てめえ何しやがった」


他のプレイヤーを無視して突っ込み、ガシリ、と恐怖のあまり涙目になっているスナイパー男の頭を鷲掴みにする。そのまま、万力のような力をこめていく。もはや時雨の腕はスパナ状態だ。頭がギリギリと締め付けられ、絶叫するスナイパー男。だが、そんなもので手加減する時雨ではない。そのまま力を込め続ける。


「ぎぃやああああああああああああああ!イダイいだいいだ…」


気絶した。口から魂っぽいものが抜けているスナイパー男を、後ろから不意打ちしようとしていたゴリラ野郎にぶつけて、スナイパー男もろとも潰した。

時雨はキッ、とツバメを睨み、文句を言い放った。


「ツバメ!さっきのなんだよ!いきなりスナイパーの威力が増したぞ!?」


「え、あ、えっと、それ多分フルチャージです!一回のゲーム中に一回だけ使える、いわば必殺技です」


「…なんとも無いけど」


「………………あの…」


なんで効かなかったのだろう。もしかしたらゲームのバグかな。それならラッキーだった。

だが、必殺技とはいい事を聞いた。仮面ラ○ダーしかり、ナントカレンジャーしかり必殺技というのはやはり格好いい。これで巨大ロボでもあれば完璧だが、この際贅沢は言うまい。


「なあ、それってどうやって使うんだ?やっぱライ○ーキックとか言って突っ込みゃいいのか?」


「は?ラ○ダー?いえ、ラ○ダーとかはともかく、スロットの横についてるボタンあるでしょう?それを右、左の順に押して下さい」


言われて右腕についたスロットを見ると、成る程、確かにスイッチが二つついている。

言われたとおり、右スイッチを押してみる。すると


『フルチャージ』


なんて合成音声がした。続けて左スイッチも押そうとしたが、背後から斧プレイヤーに邪魔された。


ブチリ。


時雨の中の、何かが、切れた。

ゆらりと振り向き、鬼のような形相を浮かべる時雨。そして、拳を振り上げた。


「……なあ、知ってっか?必殺技中に攻撃していいのは同じライ○ーだけなんだぜ…?」


「は?ラ○ダー?何言って…ごはァァ!」


「やかましい!戦闘員はおとなしく突き刺さってろ!」


六本目。

イライラしながらだが、左スイッチを押す。当然、今度は誰も邪魔してこなかった。そして、再び合成音声。


『エクゼキューション』


エクゼキューション。意味は執行する。…か、格好いい。

テンションが上がりすぎている。もうそろそろ誰かメルトダウンさせてくれないと!

まあ、そんな事をすれば杭がまた増えてしまうが。


「いいね…いいなぁ!」


テンションが上がりすぎたあまり、時雨はスロットを腕から外してそのまま右脚につけた。やはり、必殺技はこうでなくては。

下から「何してんですか!」とかツバメの声が聞こえたような気がしたが、気がしただけだろう。


「ククク…お前ら、ちゃんとリアクションしろよぉ…」


『ひっ!?』


「…なんでしょう。どっちが悪役かわからなくなってきました…」


「ちょっと!何か凄い音がしましたけど、なにかあったんですか!?」


「…………あれ、時雨?」


聞こえない。

真紀と凪も、さっき時雨がギルドにプレイヤーをぶち当てた時の轟音で出てきたのだろう。

だが、そんなの聞こえない。

時雨は空中で、できる限り高度を高くして飛んだ。そこから急旋回し、思い切り右脚を突き出してダイヴアタック。

そして。


『ギャアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァーーーッ!!』


蹴りの軌道上にいたプレイヤーは全員ヒュルルルとか音を立てながら落ちていった。ダイヴアタックした時雨は途中でブレーキを掛けて落ちる身体を無理に身体を止めた。ここまではいい。

しかし、時雨はちょっと不満だった。なぜなら。


「…そこは爆発しろっての…」


奴らはどうやら悪役の立場をわかっていないらしかった。

ツバメが下から「どんだけ鬼畜なんですか!?」とかほざいていたが不満気な時雨の耳には届かなかった。

そこで、辺りを見回してふと気がついた。


「…あれ?もしかして残ったのアンタだけ?」


そう。気がついたら、既に時雨は真っ青なミイデラを残して全滅させていたのだ。

……最後が必殺技で終わるから格好いいのだが。

ちょっと失敗してしまったか、と時雨は心の中で考えた。


「まあいいか。で、アンタ。おとなしく地に落ちろ」


「そ、そこは投降しろ、というところだろ!」


「悪には死あるのみ」


「鬼かお前は!」


「鬼?馬鹿な、俺は悪魔神だ」


「ラ○ダーは何処へ!?」


「ダークヒーローのが好きなんだ。ホラ、だってダークナントカのが人気あるじゃん?」


「知らんわそんな事!」


知らないのか。残念だ。

盛大にため息をつくと、視線をミイデラに戻した。


「で、ダークヒーロー云々はともかくどうすんの?」


「…っ!クソがぁっ!なめやがって!」


『エクゼキューション』


ミイデラが、スロットからメダルを抜いてバズーカに込めると合成音声が響いた。

必殺技か。こいつは…!


「お前!必殺技使っていいのはラ○ダーだけだ!もしくはダーク○イダーとか、ライバルとかだけだ!わかってんのか!?」


「死ねぇぇぇぇ!」


何故怒るのだろう。常識だと思うのだが。

極太の熱線がバズーカから放たれて、時雨に向かって一直線に向かってくる。熱線がギリギリまで近づいて、熱線ごと吹き飛ばしてやろうと考えたが、ふとある事を思い出した。

メダルをスロットにはめ込むと、そのメダルに描かれた生物の能力が身につく。それは裏返せば、悪い能力もコピーしているということだ。つまりは、弱点も同じ。


「やべっ!」


咄嗟に身体を横に急駆動させ、旋回しながらギリギリで熱線を避けた。その際に学ランの裾を焦がしてしまった。


オオスズメバチは、昆虫の中でも極端に高熱に弱い。


やれやれだ。もしもこの事を時雨が知らなければ、今頃こんがりと焼けていただろう。

だが、危機は回避した。

ツバメによると『フルチャージ』は一回だけ。つまり。


「…チェックメイト」


「あ…あ、あ…ば、化けっ、化け物……!」


「ああ?化け物だァ?違うね。俺はな…」


話しながら、スッと拳を身を震わせるミイデラの脳天に置いた。

そして、言い放つ。


「…最下位ギルドの、救世主だよ」


そして、静まり返る。だが空気の読めない馬鹿が一人。


「さっきは悪魔神って…」


「やかましい」


皆まで聞かずに、グイッと拳を下に押した。空気を切り裂きながら空中でミイデラは反転して、頭から地面に刺さる。馬鹿でかいバズーカも一緒に隣に落ちた。

髪をかきあげながら、時雨はツバメの隣の屋根にふわりと降りた。


「…七本目っと」


ちなみに、ミイデラが悲鳴をあげなかったのは押した段階で既に白目を剥いて気絶していたからだ。

ツ(以下ツ)「はい!どうも皆さん、今回も『跪け。』を読んでいただいて有難うございました!ツバメです」

月影(以下月)「どうも。作者の月影です。今回は、大活躍した時雨君のメダルの能力である《大雀蜂》について解説してきます」

ツ「と、その前にですが、お便りです。『ゴリラとかはどうですか?』」

月「あ、後半に出すつもりです。やっぱパワーバカのキャラって入りますよね」

ツ「はい、という事です!では、引き続き大雀蜂についてどうぞ!」

月「はい。では、まず最初にその大きさからですが、女王蜂が40〜55mm。働き蜂が27〜40mm、雄蜂が27〜45mmです。ちなみに、この雄蜂は毒針持ってないです」

ツ「ありゃ。では、その毒針は?」

月「蜂の中では最も強いですね。大雀蜂自体も攻撃性も高く凶暴で、非常に危険です」

ツ「…メダルは、人と似るのでしょうか」

月「……まあ、それはおいといて。大雀蜂の武器は、針だけじゃなくて強靭な顎もありますね。他の昆虫の身体とか抉ります」

ツ「怖ッ!で、では肝心の毒針の特性は?」

月「大雀蜂は、西洋蜜蜂や日本蜜蜂とは違って、毒が尽きない限り何度でも刺します。普通は一回刺したら、針が抜けて死にます」

ツ「ほうほう。では、大雀蜂自体の特性は?」

月「ん〜、そうですね、大雀蜂は他の蜂とは習性も違うんです」

ツ「…と、言うと?」

月「えっと、他の蜂は自分から他の昆虫を襲う事はあっても、『巣』そのものを襲う事は基本的に無いんです。ただ、大雀蜂は圧倒的な戦闘力で、たった三十匹ほどで四万匹の西洋蜜蜂の巣をぶっ潰します」

ツ「……………え"」

月「しかも、大雀蜂は『威嚇行動』を取りません。ツバメさん、なんでかわかりますか?」

ツ「さ、さあ…」

月「…あ。時間ですね。それじゃあ、次回までの宿題です」

ツ「ええぇぇぇぇ!?」

月「それでは、皆さんにもクイズですね。『大雀蜂は何故威嚇行動をしないのか?』。答えが分かった方は、次回掲載日の八月二十五日までに月影の元まで送って下さい!ちなみに、景品はありませんw。では、また次回!」

ツ「全部持ってかれました!?」

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