暇ですか?ならば!
「………………ああ、暇だ」
高校生、《前条時 時雨》は尋常じゃなく暇だった。暇すぎて暇がゲシュタルト崩壊しそうなほど暇だった。
一言言えと言われれば、暇と答えようか。
「…なんか面白い事、ねぇかな」
それは、祈りでも願いでもあった。
時雨は、閉ざされた世界に囚われたままな事を嫌う。ピーマンと同じくらい嫌いだ。同様に、暇な事も嫌う。ニンジンと同じくらい嫌いだ。
だが、その願いは届くのかもしれない。何故なら。
「……ありますよ、面白いこと」
空から、声が落ちてきた。
何の、比喩でもなく。
ゴウウウウウと風を切り裂いて落ちてきた美少女を時雨は片手で受け止めた。
正確には、その顔面を受け止めた。
「……た、たふけてくへてありがとうございまひゅ」
「どういたしまして。で、誰なのお前?」
「……まずは顔をはなひてくらひゃい」
「オーケー」
「くぺ!」
言われたとおり、すぐさま顔を離した。当然、べチャリと地に落ちる美少女。
時雨がいたのは、学校の屋上のベンチなので、美少女は硬いコンクリの上に落ちた。
打ったのか、鼻を抑えて立ち上がった。
「ひてててて…もう少し優しく離して欲しかったです」
「受け止めてやっただけありがたいと思え。で、誰だお前」
「あ、わたくしはツバメ、と申すものです。世界各国から暇そうな人を集めて、楽しいエンターテイメントをお送りしております」
ツバメ、とか名乗った美少女は茶色のポニーテールにヒラヒラした不思議な衣装を着ていた。
それでいて瞳は蒼く、異世界から着たみたいだった。
「ふうん。まあいいや。で、カラスだっけ?面白い事って何?」
「……あの…ツバメです。それで面白い事というのは、高校生なら誰もが好きなゲームの事です」
「うん。俺、ゲーム嫌いだから帰れ」
「ふふふ、そうでしょうそうでしょう。そうくると思って…いませんでしたよっ!?」
ガアン、と擬音がつきそうなリアクションをツバメは見せた。
目も点になっている。
わたわたと両手を広げてバタバタさせてアワアワと慌てていた。
「えーと、えーと、ゲームと言っても唯のゲームでは無くてですね、えーと、えーと!」
「じゃあなんだ、SAOにでも連れてってくれるのか?」
「いえ。SAOは定員オーバーなので無理なんです。でも、二番人気のゲームなら」
「………ほう?」
SAO、あったのか。残念だな。
じゃあALOかGGOだろうか。
けれども、興味はあった。二番人気のゲームとは、何かを。
「そのゲームとは、《生態系君臨リアルバトルゲーム》です!」
………名前が、長い。