本部
中に入ってすごく驚いた。洞窟の中には魔法陣(?)や、よく分からない機械があふれていた。
「あの…シロガネさん」
「シロガネで構いませんヨ」
「あ、はい。あの、今からどうするんですか?」
「ここから本部まで移動しマス。
すぐに着くので安心して下サイ」
「え、いやあの…分かりました」
それからシロガネさん、じゃないやシロガネは、洞窟の真ん中にある魔法陣に入り、僕を手招きした。
僕が入るとすぐにシロガネは呪文を唱え、魔法陣が光り出した。
初めての体験で、もちろん恐怖もある。だけど好奇心の方が強くて、何より、僕にはもう失うものなんて無かった。
そんなこんなでドキドキワクワクしていると、身体が浮くような感じがした。というか、浮いた。
空を飛ぶような感じで(味わったこと無いけど)あっという間にまた足が地についた。
閉じていた目を開けてみると、目の前には驚くような光景が広がっていた。
見渡す限りに人、人、人。
それからさっき見たような魔法陣や機械がたくさん。
魔法陣は絶えず使われていて、いろんな人が表れたり、去ったりしている。
辺りはザワザワとしている。
そんな光景に驚き、ぼーっと眺めていた僕の背中をシロガネが押した。
「とりあえず早く魔法陣から出ないと、邪魔になってしまいますヨ」
「あっ、ごめんなさい」
シロガネは魔法陣から出て、苦笑しつつ言った。
「まぁ驚くのも無理はありませんがネ。
普通は見ないような人達がたくさんいますカラ」
そう、そこなんだ。ただ人で溢れているだけの場所ならたくさんある。
それだけじゃないから驚いたんだ。
黒髪、茶髪、金髪の人はもちろん、青、水色、赤、オレンジ、紫、白など様々な色の髪、目をした人。
人間だけではじゃなく、動物もいる。
犬とか猫とかの普通にいる動物だけじゃなくて、見たこともない動物がたくさんいる。
初めて見る、光景だった。
それから僕はシロガネにそこら中にいる動物について聞いていた。
どうやらその動物達は、ただのペットから戦いに参加するものや使い魔的なものまでいるらしい。
そんな話をしていると、声を掛けてくる人がいた。
「シロガネじゃないか?」
「はィ?あァ、あなたでしたカ、コガネ」
「久しぶりだね。今からどこへ行くの?」
「とりあえズ、神鳴の所へ行こうかト」
「あぁ、僕もだよ。一緒に行っても良いかい?」
「ワタクシは構いませんヨ」
「自分も、大丈夫です」
「そっか、ありがとう」
それから彼は「コガネです」と名乗った。
モテるんだろうなーという感想を持たずにはいられないような笑顔で。
僕も名乗ろうとしたけど、「後でいいよ。何回も自己紹介するの面倒だろうし」と遮られた。
何か、全て見透かされた気分になる。
そんなコガネ(って呼んでって言われた)と、シロガネと、僕。
その3人で神鳴さんって人の所へ向かっているんだけれど、建物が大きすぎる。
エレベーターにつくまで一苦労(そこエレベーターなんだとは思った)。
やっと着いたかと思えば、何階あるんだって言いたくなるくらい、エレベーターは昇っていった。
どうやら神鳴さんは最上階にいるらしい。
最上階にいるのって、すごく偉い人とかじゃないのかな。
そんな人に簡単に会って良いのかな。
何か…緊張する。
二人と話しているうちにエレベーターは止まった。
最初はけっこう人が乗っていたけど、階が上がっていくたびにだんだん減って、最上階に着く頃には僕達三人だけになっていた。
エレベーターが開くと、とりあえず…すごかった。
どこかのお城にでも来たかのような、ふかふかの絨毯に壁に掛かった立派な絵。
「すごい…」
「最上階にいるのは、なかなか偉い人ばかりだからね」
やっぱりそうなんだ…。
せっかく忘れかけてた緊張が…。
「お名前とカードをお願いします」
守衛さんが綺麗なお辞儀をしてそう言った。
僕がぽかーんとしている間にシロガネとコガネは名乗ってカードを手渡していた。
守衛さんはそのかーどをチェックして、そのまま二人に返した。
問題は無かったみたい。
「コガネ様、シロガネ様、お帰りなさいませ。
ご無事で何よりでございます。
神鳴様にご用事ですか?」
「ありがとう。
そう、神鳴に会いに来たんだけど、いるかな?」
「えぇ、部屋にいらっしゃいますよ。
そちらの方は?」
「新しく第4班に入る子だよ」
「そうでしたか。
では、中へどうぞ」
守衛さんは「後でカードの登録をして下さいね」と言ってから見送ってくれた。
シロガネの説明によると、カードは防犯のため絶対登録しなければならないらしい。
いろんな所で身分証明書代わりに使うから、大切なものなんだって。