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『異能現象』  作者: 黒猫優
一章[異状な世界の現象]
9/28

─現象の現れは、世界の現れ─

───『異色者』────

今、日本で起きてる『異色事件』の感染者の名前だ。

人によって症状が違い、持ってしまう『異能』も個人で違う。

「私は"人に覚えてもらえない"『異色者』な、……なんです」

今、俺とその女の子は近くの公園のブランコに座って話している。

右のブランコが俺。左のブランコが女の子だという風に座っている。

女の子の名前は『遠松菜谷』(トオマツナヤ)。

中等部の二年の女の子で、読書部に入ってるらしい。

「いつから、異色者に?」

俺は遠松さんに質問した。

「六ヶ月前……から」

そんなに前だったとは。

「親に姿は見えるの?」

「見えないよ。貴方が……初めて」

俺が"気づくまで"、今までこの子はひとりぼっちだったのだろうか。

「どうやって生活してたの?」

「普通に。部屋には、親は寄ってこないの。食べ物は……冷蔵庫から。お風呂は…深夜に」

"寄ってこない"のではなく『寄ってこれない』のだろう。

このケースは異能現象で言うと、

第一の現象[異状]にそっくりだった。

第一現象の場合、適用される自然現象は人の心である。

感染者の『一番強い思い』が異能となり、現象として現れる。

「君さ、─────」

「──────────な─」

「え?」

「菜谷って・・あの、・・その、・・呼んでくださ…い」

恥ずかしそうに、遠松さんは言った。

顔が赤いのがこちらからでも分かる。

公園の電灯で顔は少し見えるのだ。

「え!いきなり呼び捨ては!─────」

俺は焦りが言葉に出ながらそう言った。

後輩といえど、相手は女の子だ。

呼び捨てはキツイ面もあった。

だが、遠松さんは弱々しい声で、

「お願い…します。この頃、呼ばれてない……から」

と、俺にいった。でも、そう思うのも当たり前なのかもしれない。

一ヶ月、人に話されなかったら、そう思うだろ。

「分かった。な、菜谷」

「は、はい」

緊張感が伴った。何でだよ。

「二つ質問していい?」

「は、…はい。わ、分かりました」

菜谷に聞きたいことがあったのだ。

「まず一つ。何で俺が話しかけたとき、『とっさに驚いた表情』をしなかったの?」

まず一つ目だ。六ヶ月間も誰とも話されないなか、話しかけられたら、驚いた表情はつくるはずだ。

「それは…ですね。前にも…な、何回かあったんです」

「何回か?」

「はい」

そのあと、菜谷はこう告げた。

"何回かは話しかけられたが、会話はあまり続かず、30分後には、話しかけてきた人でも菜谷のことを忘れてしまう。"、と。

「何で『どちら様』って言ったの?」

「その言葉の始め方が一番会話が続くのが、…な、何回か話しかけて気付いたんです」

「成る程ね。二つ目の質問だけど」

「はい」

どちらと言うと、二つ目の質問の方が重要だった。

「異色者になる直前でもなくていい。異色者になる前は『どんなことを心』に思ってた?」

これが重要だ。第一の現象ならば、人の心は必要不可欠だ。その心によって現象が変わるのだから、その心の種類が分かれば現象の方向性も分かってくる。

「確か、『恐怖』ですかね」

「『恐怖』────か」

そうだとしたら、多分、人を怖がる気持ちが人を近寄らせない現象に変化したのだろう。

つまりは、『恐怖』が現象の正体なら菜谷の『恐怖』を消してあげればいいんだ。

そうすれば、必然的に異能も消える。

「分かった。俺が君の『現象』を無くしてあげるよ」

俺は言った。

「は、はい!ありがとうございます!・・・えっと・・・」

そう言えば、俺は名前を言ってなかった。

「俺の名前は良和だ。三崎良和」

「は、はい。よ、良和さん」

菜谷は安心そうにそう言った。

七色の笑顔と共に。

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