表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異能現象』  作者: 黒猫優
一章[異状な世界の現象]
7/28

─秘密の秘密は困惑の証─

何はともあれ、雅美と二人で下校中である。

「考え事?カッズー?」

「う?あ、あぁ。まぁな」

クラスが違うため、あまり学校では話さないが大抵は登校・下校は一緒である。

「カッズー、考え事は頭に悪いよぉ~」

「それを言うなら"体に″だろ?」

「そうでしたぁ~!うっかり☆!」

「はいはい」

"体に"でもおかしいけどな。

明るく陽気。それが俺の幼馴染みの特徴であり、長所だった。

その性格だからこそ、友達も多く、人望も厚かった。

(俺とは真逆だな)

根暗な俺とは違っていた。

妬ましくもあるが、誇らしい気持ちの方が大きい。俺にとっては雅美は妹みたいな存在だった。

(態度とか、話し方とか、な)

昔は雅美が俺に頼ってきたのに。今ではその真逆だ。俺が雅美に頼りっきりだ。

「で、カッズーは何をお悩みで?」

「世界の不思議について」

「ほ?」

あながち、間違ってはいないはずだ。

「まぁ雅美の頭じゃあ、分からないよ」

「ぷぅぅ!カッズーのケチ助!」

子供みたい。これ、禁句。

「はいはい。悩み相談はまた─────」

──今度で、と言うつもりだった。

だがそんなことよりも由々しき事態が起きた。

(あの子───だ)

さっきの夢(?)に出た、あの子だった。

赤い翼を背中から生やしていた。あの子だった。だが、見た目は同じなのに、翼はなかった。

それでも俺の脚は勝手に動いた。走ってすらいた。

「雅美、先に帰ってて!」

「え!で、でもさ!」

「いいから!先に帰ってて!」

「うぅ、早めに帰ってよ!」

そんなに遠くない距離なのに大声の俺ら。

走っていくと容易にその少女の元に着いた。

背後からなので、声をかける。

「あ、あの!」

「?」

少女がこちらを振り返る。

あの時の女の子の容姿だった。

栗色の短めの髪、小さい身長。可愛いらしい顔立ちに綺麗な瞳の女の子。

「君さ!さっきの─────」

「『どちら様』ですか?」

どちら様、つまり俺とは面識がない。

──────いや、待てよ。屋上であの距離。

しかも、異能現象まで合ったんだ。

顔が見かった可能性もある。

「ほら、さっき屋上にいた、俺だよ」

自分の顔に指を差して少女の反応を待つ。

「────屋…上?」

「そ、そうだよ!」

探るような、疑るような、目を向けてくる。

「貴方は、屋上の『アレ』を覚えてると?」

アレ、とは異能現象が起きたときの屋上なのか?ならば、

「あぁ、覚えてるぜ」

俺は答えた。

「───────ッ!それは!本当なんですか!?」

大声で少女は答えた。

俺、どころか周りの奴らも驚いた。

「いや、どうしたの?」

制服から見るに中等部の子だろう。

ダンッ!、と俺の胸を叩く。

「だから!貴方には『私が分かるんですか!?』」

何を言ってるのかが分からなかった。

大きく涙声を伴った声を張り上げて女の子は俺に叫ぶ。

と、そうやって俺が硬直している。その時、

「ね、ねぇ?」

背後から肩を軽く叩かれる。誰かが俺に話しかけてきたようだった。

俺は声に反応して後ろを振り向いた。

「えっ…と、何か用事?」

俺は不器用ぎみにそういった。

なぜなら、その話しかけてきた人は俺が全く

知らない人だったからだ。男の人だった。制服から見るに、俺と同じ高等部の生徒だと思う。

「君はさ…、さっきから、『一人で誰と話してるの?』」

おどけた声でその男は俺に問う。

しかし、はぁ?、という気持ちしか俺にはなかった。

明らかに俺の目の前の女の子がいるのだから。それを見て何を言ってるのかの理解が出来なかった。

「いや、…へ?俺の目の前に女の子がいるじゃん…」

俺も少し驚きとおどけの入った声を出してしまった。

「え?えと、僕には見えないな、ハハ」

苦笑気味に言われた。

だが、苦笑はどうでも良かった。

コイツには、いや、"俺以外には"この子は見えていない───のか。

驚愕というより、信じられないというのが

心境だった。

「じゃあ、僕はちょっと……」

なにも言わず固まっている俺を見越して、

話しかけてきていた男は何処かへ行った。

たが、そんなことはどうでもいい。

今はそれよりも──────────。

俺は俺の胸に寄りかかって泣きそうな女の子を見ていった。

「君は───まさか」

「はい、…私は、…」

──────異色者です────

俺の耳に女の子の声が響いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ