─開門した『死』閉門した『生』─
予感がした。そうとしか、言い様がなかった。俺は地べたに座った状態からさらに体を伏せるために上半身を右に倒した。
それこそ、地べたに叩きつけるような勢いで右に倒れた。鈍い音がしながらも、上半身は地べたにベッタリとついた。
その瞬間、ビュンッ!!と言う音がした。
さっきまで俺の頭の位置にあったところに『何か』が襲ってきた。『何か』はそのまま、俺の前方にある屋上のドアへと進んでいく。
そして、『何か』はドアまで進んでいき、ドアを斬った。金属製のドアを斬ったのだ。
『何か』はそのまま、前方に進んでいった。
俺はとっさに音のした方向である後ろを向いた。刹那、驚愕した。
「う、嘘だろ!」
『何か』は生き物ではなかった。
正体は、台風。それも『強大な鎌鼬の台風』だった。
風が吹き溢れる通常の台風とは違い、鎌鼬が台風のように吹き溢れ螺旋状になっていた。
その『台風』とはかなり距離が離れていた。
数に、何キロメートル。
それほどの距離があるのに、あの鎌鼬は鉄製のドアを切り刻んだのだ。
その瞬間、頭のなかに出た言葉があった
『異能現象』
「何で?、い、今、ぁ、あ」
謎が頭に浮かんだ。異能現象は起きてるのに何で、『騒ぎが起きない』?
気づかないはおかしい。知らなかったはおかしい。最低でも、現象を報せるために警報は鳴るはずだ。
だがとにかく、逃げないことには助かることはできない。
だが、ドアは破壊されている。
どうすれば?と、試行錯誤しているときに、
視界の端に何かを捉えた
ちょうど真横。右にいた。中等部の屋上。
人がいた。女の子だった。
栗色の短めの髪。少し背も低い。
可愛いらしい子だった。
「え、。」
だが、女の子はただの女の子ではなかった。
『翼』が生えていた。真っ赤な悪魔的な翼が。女の子の背中に生えていた。
「何だよ、あれ」
小さく呟いた。すると、この言葉に反応したのか、女の子がこちらを向いた。
驚愕の顔をした。目も見開いている。
「────────────」
何かを言ったようだった。必死に伝えてくるが言葉が聞き取れない。
「どうしたの!」
「─────────────────」
「き、聞こえないよ!」
必死に伝えてくる。だが聞こえない。
その時、ドムッ!!という、大きな音がした。
音は台風から聞こえた。見てみると、
(ぼ、膨張してるッ!!)
というより、鎌鼬が螺旋状から乱れ、四方八方に飛び散ったのだ。
つまり、『こちらにも飛来してくる』
ヤバイッ!!、そう思った俺だったが。
百単位で来る鎌鼬は防ぎようも回避しようもなかった。
数百の鎌鼬が飛来してくる。
「あ、ぁぁ、。あ」
完成された『死』が俺に向かってくる。
スローモーションで『死』の塊が見える。
(死、んだ、ぁ。ぁ)
次の瞬間、『死』の塊によって、俺の体は引き裂かれた。
●●●
目が覚めた。頭がボゥとしている。
白い天井らしき物が見えた。
「こ、ここは?」
口から自然と声が出た。その時、
「気がついたか」
声がした。はっ!と飛び起きる。
目の前には
「せ、先生・・・」
保健の先生の姿だった。
「何を驚いた表情で見ている」
「あ、いえ。──────皆は?」
「授業中だ」
「授業中?」
大人な女性の先生『井熊冴子』(イクマサエコ)
怒れば鬼の先生だ。
「当たり前だ。お前は三時間目の授業中にぶっ倒れただろ?気を失って」
「え、三時間・・・・目?」
俺はさっきまで、昼休みだったから、屋上に。わけが分からない
「まぁ、取り敢えずは安静にしていろ」
「で、でも!─────」
「していろ」
きつめに言われた。
「は、はい」
鬼に言われたら黙るしかないよね?
それでも、『アレ』を夢とは思えなかった。
[2.もう始まったよ、絶望は]
一時間、保健で寝たら気分が全快した。
なので、五時間目から俺はまた、授業に入ることにした。
自分の教室に到着する。ドアを開ける。
「お、遅れました」
声音に若干の緊張が入ってしまう。
相手は国語の先生『信楽立麻』(シガラタツマ)
男の先生だ。怖くはない。だだ、何故かこの先生には緊張が走る。
「あぁ、良和君ですか、体は大丈夫なので?」
「はい。気分は全快です」
「そうですか。今は古典の勉強です。席について、教科書の50ページを開きなさい」
「はい、ありがとうございます」
イケメンな所も苦手だ。
そうも言いつつ、俺は席に着く。
(あれは夢だったのかなぁー)
頭のなかで、考えが蹂躙する。
グルグルと回ってもきた。考えがまとまらない。
(本当に、夢?)
結局、授業は頭に入らなかった。