─事件の開始=物語の開始─
屋上にいると、皆の遊んでいる声が聞こえる。何をしてるかはここからでは見えないけれど、楽しそうだった。
『異能現象』────か。
ニュースを見ても分かるが、このところ現象の発生が異常に多いのだ。
未知の感染病・新しい謎の公害・異常気象などの名称でニュースなどでは言われている。
科学的な解明もされるような動きもあるが、今だその正体は掴めていない。
(確か、アメリカの『霊化事件』も異能現象って言われてたな)
あの事件は世界を深刻な状況にさせた。
ただ、あの事件は感染病というよりも、どちらかというとオカルトっぽかった。
事件内容はこうだ。
人が精神的に壊れていく事件。
『霊に憑依』されたように、その現象を受けた人は精神が狂い始めていき、そして、その精神病がたちまち感染していく。
一人、また一人と感染者が増えていく事件。
そんな事件だった。だが、その事件はまだ終わってはいない。
その感染がアジア近辺でも見られるようになってきたのだ。今でも、どんどん感染は増えていっているのだろう。
ただ、先ほどからそのアメリカの事件ばかりをいってはいるが、別の国々にも様々な現象が起きている。
中国での『人減事件』、イギリスでの『神隠し』、オーストラリアでの『自滅事件』。
と、四つの事件がもう起きている。
(そして、この日本でも)
日本でも事件は起きている。それも今。
『異色事件』
通称はそう言われる。人間が『異色の何か』を放つようになるのだ。
それは、雰囲気というより、異能とも呼べた。
"人間が『異能』になる現象"
"異能を持つ"のではなく異能現象の一部になり、人工物や人間を殺すようになる。
現象になるとは、言い方が悪いがニュースではそう言われてる。
でも、それでは『異能を持つ人間は人間ではなく、異能現象と同じなんだ』と言ってるように聞こえる。存在を否定してるように。
この学校にも事件を受けて『現象』になった人はいる。
数人だが、それでもいた。
異能をもった者は直ちに、監獄に連れていかれ、拘束をされる。
その後、『更正』か『処分』のどちらかに、判決は決まる。
(何を暗いことをまたもや、考えてるんだよ)
今日の俺は可笑しい。頭を冷やそう。
なにも考えずに風に当たろうと、座ったまま背伸びをする。
(あ、今、背中ビキビキっていったな。これは、筋肉痛の予感だ)
良くも悪くもその予感は外れ、筋肉痛には、ならなかった。ビキビキと音がしたのは事実なのだが。
ササァー、と風が吹いてくる。その風は少し冷たく、寒かった。
そうやって、風の感度を感じていると、だんだんと風が強くもなってきた。
(ちょっと寒いな。しかたねぇ、教室に戻るか)
俺は教室に帰ろうと立ち上がろうとした。
ちょうどチャイムも鳴ったところだった。
だが、立ち上がろうとした瞬間、─────────