─菜谷いべんと─
それからと言うと、早かった。
晴樹に答えを渡し、泊まろうとする一葉をなだめて家に帰し、先ほどのことに様々な付けたしをしていく夕飯時の雅美の言葉を受け流し、風呂には入り、寝る準備をし。
で、ただいま就寝に入ったいた。
目を閉じれば寝てしまうだろう。
「っと、その前にと」
俺は思い出したように上半身だけ起き上がる。それから
ベットから降りて、俺の部屋にある唯一の机にして、勉強机(用済み)である机に手を伸ばした。
厳密には、机の上にあるケータイを手に取ったのだ。
そして、ケータイを開き、俺は瞬時にメールをする。
皆も退屈だろう?だから、俺も行動に出るのだ。明日は日曜日だから、時間もいいだろう。
有言実行の男になるのだ。
●●●
「こ、こんにちはです。良和さん……」
「うっす。こんちは、菜谷」
俺は今、公園にきていた。
昨日の行った公園ではなく、少し広くて大きい公園だ。だが、大きい公園なのに近くに植物園があるせいで、人はあまり来ない。
俺は公園の中央にある噴水のところで突っ立っていた。
それも理由はあるさ。
昨日のメールで、菜谷と待ち合わせをしていたのだ。
まぁ、俗に言うデートってやつかな?
「良和さん、早いですね。来るのが」
「まぁ、女の子に待たせるわけにはいかないしな」
「そこら辺は、わきまえてるのですね」
「なんじゃいその言い方。それ以外もわきまえておるわ」
そんな風に冗談を言い合いながら、二人で少しクスクス笑いながら、話す。
「さて、何処に行くのですか?」
菜谷が行き先を聞いてくる。
菜谷に答える前に、まず菜谷の服装について言っておこうか。
外見で言うとこうだ。
白いワンピースをまず着ていて、その上から青色のカーディガンを羽織っている。
頭部を見ると、花の髪飾りが右頭にかけられている。
端的に言うと、優しい青の花。
野原に小さく咲いている野花のようで、軽いそよ風に揺らされていて、優しくも温かく可愛さを帯びている。
そのような雰囲気をか持ち出している。
「菜谷……」
そうやって説明している内に、菜谷の問いに答えるのを忘れてしまっていた。
「?どうか…しましたか?」
「可愛いな、それ」
ついつい本音が出てしまった。
うん、馬鹿かな俺は。
その俺の本音を聞いて菜谷は赤面してしまった。赤面しながら顔を俯く。
恥ずかしがったいた。
「あ、ありがとうございます…」
ものすごい小さな声で菜谷はそういった。
まさに蚊の鳴くような声。
だが、その音量が今の菜谷に出せる最大音量だったのは説明するまでもない。
「あ、あぁ」と曖昧にしか俺は返せないままだった。端的に言うと、俺も気恥ずかしかったのだ。
それから、少し間を開けて、場の切り替えをするために俺から話した。
「さてと、も、もう行くか!」
なぜか大声で言ってしまった。
別に恋人同士のデートではないのだ。
友達と遊びに行く程度のこと。
それなのに、何故これほどにまで緊張するのだろうか。
相手が女の子で、かつあまり面識がないからだろうか。面識がないと言っても、他の女子中学生に比べたら、とてつもなく面識がある方だが。
「はい。では、いきましょうか!ど…どこにいくんですか?」
菜谷も応対を大声で言っていた。
恥ずかしがり屋さん仲間である。
いや、菜谷の場合は素か。
まぁ、なにはともあれ。俺と菜谷は移動を開始した。




