─シリアスシリアル始まる─
俺は結局、少しの間、公園のベンチで休んだ。菜谷が持参していた水筒のお茶も飲んで水分補給もした。全力疾走だったから、喉も乾いていたのだ。
「ありがとう、えっと、菜谷」
俺は菜谷にお礼をいった。
名前を呼び捨てで言うことに少し、俺には躊躇いがまだあり、恥ずかしさもあった。
「はい。…良和さん」
菜谷のほうは、恥じらいはないのか、ハッキリと俺の名前を言うことができていた。
その菜谷の表情はニッコリと笑っていて、虹みたいだった。
しかし、よくみると少しだけ菜谷の顔も赤いかった。俺と同じで少しは名前を呼び捨てで呼ぶのが恥ずかしかったみたいだ。
「えっと、さて、本題の『異能現象』の話をしようか」
恥ずかしい雰囲気が公園のベンチ周辺を包んだので、俺は場面転換を切り出した。
「あ、は、はい!」
恥ずかしい緊張から急に解かれたせいか、
菜谷はビックリしながら、大きい声で返事をした。そのせいで、またもや、菜谷の顔は赤くなった。
「お、おう。じゃあ、えーと。『異能現象』の解除について、考えようか、菜谷」
その菜谷の大きい声に若干、驚きながらも俺は場の指揮をする。
「は、はい。あの良和さん。」
「ん?なんだ?菜谷」
すると、菜谷はまた、顔を赤らめた。
なんだか、相当に可愛い。俺の『菜谷』って言葉に反応して、顔が赤くなっていることに俺は楽しみを覚えていた。
「えっと、その。解除するというのは具体的にどうするんですか?」
赤らめながらも、菜谷は肝心のところを俺に質問してきた。
そこは気になると思う。だからこそ、俺はきちんと答えた。
「いや、なにもしないよ。」
「へ?なにもしない?」
菜谷は気の抜けたような声をだした。
顔もそれに比例して、気が抜けてきている。
「うん。言葉通りさ。俺はなにもしないよ。」
「………………………………へ?」
明らかに、困惑している菜谷だった。
このままでは拉致があかないので、説明をすることにした。
「順をおって説明するよ。まず聞くけど、菜谷は『異能現象』っていうものが、五つの種類に分類されることは知ってる?」
異能現象というのは、言ってしまえば、"異能的な現象"の総称のことだ。つまり、その『異能現象』と判別されるものは種類があり、専門家が分析したところ、それは、五つに種類が分かれるとされている。
「は、はい。二つくらいしか…覚えてませんが…」
おどけた声で菜谷は俺に応答する。
種類が分かれることは知っていたようだ。
「種類が分かれることは知ってるんだね。なら、五つに分類されている現象。その一つ一つの『異能現象』に『発生条件』があるのは知ってる?」
俺は一番、肝心なところを菜谷に質問をした。
「発生……条件?」
菜谷は知らなかったようだ。なら、きちんと説明しようと思う。
「そうだよ。『発生条件』だよ。異能現象にはね、現象が起こることに規則─────いや、法則かな。そんな決められた条件があるんだよ」
「条件ですか?それがなにか私の現象の解除と関係…あるんですか?」
菜谷は難しい顔をした。
「関係おおありだよ。」
俺はそう平然と答えた。そのあと、「じゃあ、」と言葉を句切り、
「『異能現象』のでき方を教えるよ」
最初の基礎から説明を俺は始めることにした。