─約束遅れの走り連想─
今、俺は走っていた。
菜谷との約束に遅れそうだったからだ。
なぜ、先程した時間的に明らかに余裕だった約束に、遅れそうな状況になってしまったかというと、約束後の俺の行動に原因がある。
まず、服を着替えるために、ぴょんぴょんジャンプをしてタンスに近づいていくときに、こけた。
顔からこけたため、鼻血が出た。
少し鼻から出る赤い液体の量が多かった。
それのため、雅美が心配してくれて、手当てもしてくれた。少し不器用だったが、心配してくれるだけでもありがたかった。
そして、家から出ようとすると、雅美から
『どこかにいくの?』と聞かれた。
もしも、女の子と二人きりになると言ったら、雅美の怒りを買いそうになるので、
俺はなるべく、意気揚々なハキハキ声で
『ウン。オトコトモダチトダヨ』
といったら、何故か雅美が怒気と闇のオーラのようなものを入り混んだ声と雰囲気で
『女の子といくんだね?』と、光彩のない瞳で告げてきたので、
慌てて適当な釈明をしつつ、走って逃げてきたのである。
え?怖かったかだって?当たり前だよ。
俺はあれ以上の恐ろしいものを見たことはないぞ。
まぁ、それはいい。
とにかく、俺は走ったのだ。
時間に遅れないため。そして、背後の殺気から逃れるため。
全力ダッシュをした結果。
時間は二分程度の遅刻ですんだ。
俺は息を切らしながらも、急いで公園内に入る。
「ご、ごめん!ハァ…ハァ…お、遅れてさ」
俺は菜谷にとっさに謝る。
「いえ、だ、大丈夫ですよ。私も今、き、来ましたし!」
恥ずかしいさでもあるのだろうか、言葉を切らしながら、言っていた。最後は大きかったのも恥じらいを隠すためなのかもしれない。
「そ、そうか。でも、まぁ、ハァ…ハァ、俺が遅れたしな。…ごめん、」
だが俺はそんなことよりも疲れていた。両手は太ももにつけて中腰。肩は上下させて、息を切らしていた。さっきから、呼吸が激しい。真面目に息がしずらい。
全力も全力で走ったからか。
「えっと、え、あの、大丈夫ですか?」
心配されてしまった。まぁ、これだけ息を切らしていては、当たり前なのかもしれない。
「いや、大丈夫。ハァ…ハァ、少し走っただけだから…さ」
一応、心配のないことは言ったが、話し方が少し駄目だったのだろうか。
逆に心配されたようだ。
「いえ、でも、えっと、。そ、そこのベンチで休みますか?」
そう言いながら、菜谷は後ろを指でさして、
ベンチを指し示す。
だが、俺はこう思った。
(そんなことは駄目だ。俺は男だ。そんなに気弱ではない。)
俺にもプライドはあるのだ。
だから、俺は菜谷にこう告げた。
「うん。休もう」
結構、俺は即答で答えた。
どうやら、俺は気弱だったようだ。