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『異能現象』  作者: 黒猫優
一章[異状な世界の現象]
14/28

─雅美の中のシンデレラ─

俺は話を始めた。

俺たちは二人とも、天井を見る形で寝ている。

「なぁ、雅美」

「何?馬鹿カッズー?」

「馬鹿って言うなよ」

「うるさい、馬鹿カッズー」

俺はまだ許されてないようだった。

嘆息気味に俺は話を続ける。

「雅美はさ、怖いときって、どうやって恐怖を無くす?」

「それって、相談事?」

雅美がこちらを向いた。布団とベットには高低差があるので、俺は雅美に見下ろされている形になる。

「うーん?言ってしまえばそうかな」

「分かった。答えるね」

相談事になると、いつも雅美は真剣に聞いてくれた。今だってそうだ。

「私の場合は、『好きなことをして』パァ!と忘れる────かな」

「好きなこと?」

「うん」

少しの笑顔で、雅美は俺に言った。

月の光に照らされて、綺麗だった。

俺は恥ずかしくなって、雅美と反対の方向を見て、そっぽを向いた。俺は少し顔が赤かった。そのまま俺は話した。

「好きなことって?例えば?」

「うーん。難しいね」

そっぽを向いているので表情は分からなかったが、その声音は『難しいない』ことを意味していた。

「私なら、友達と話したり、遊んだりかなぁ~」

いつものほんわか声で雅美は言った。

俺は無言だった。静寂の一部になった気分だった。

「あとは、私の場合は─────────」

そのとき、雅美の声が途切れた。

いつものほんわか声で気づかなかった。

今の時刻は『12:00』なのだ。

普通の人なら、別に問題はないだろうが、

雅美の場合は別だ。雅美にとって、この時間は、

いつもの雅美が『シンデレラ』に襲われる時間帯を指している。

「しまっ────」

───────た、と言おうとした。がそれは叶わなかった。理由は明白。

『雅美が俺の首を絞めていた』からだ。

雅美は俺の上に馬乗りで乗り、俺の首をその細い両手で思い切り絞めていた。

「グパッ──ヶなァ♪──」

もうアイツが雅美の『表』に出ていた。

俺は奇声を言う雅美の体を馬乗り状態から蹴った。足を振り上げて、雅美の後頭部に直撃した。バコンッ!、と言う鈍い音がした。

「──グパッヶなァ♪───────ごはっ!」

雅美の手の絞めが弱くなる。そのまま俺は

チャンスとばかりに、右腕で雅美の左頬を殴った。これまた、バコンッ!、と言う鈍い音がした。

「──────ボハッ!───」

馬乗り状態の雅美が俺から見て、左に突き飛ばされる。

「─────ァア───あ」

左の壁にぶつかった。ずりずりと、壁に寄りかかったまま、床に落ちる。

「──アァ、───イァア─────」

光彩のない虚ろな目がこちらを見る。

そして、

「────ッ──グ?─」

自分の首を絞め始めた。弱々しいその細い雅美の両手が雅美の首を絞める。

「雅美ッ!」

俺は咄嗟にはねあがり、雅美が自分の首を絞めている両手を強引に離させる。

「しっかりしろ!雅美!」

俺は両手を無理矢理、首から離させ、

俺は雅美を抱き締める。雅美の顎を、俺の右肩に乗せ、俺の両手は雅美の背中に回り、雅美の後頭部を背中から撫でる。

「──────カッ─────ズー?」

涙を雅美は流した。俺の背中に雅美の涙が落ちる。

「あぁ!俺だ!良和だ!」

「まだ居てくれる?」

話が噛み合ってない、『このときは』いつもそうだった。話は噛み合うことがない。

「いつだって居てやるさ!そばに!」

「──────嬉しい」

そう言った後、雅美の意識は途切れた。

ぐた~と、全身から雅美は力を抜いてしまう。気絶したのだ。

「はぁ、───────雅美」

俺の声だけが、部屋で聞こえた。

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