─ある幼馴染みとのラブコメディ─
俺は風呂に入っていた。
当たり前だ。さっき、「風呂に入るか」と言ったのに、何で入らない何てことがあるのだろう。
「ふぅー」
俺は、今日あったことを頭のなかで整理する。
「確か、『屋上のこと』と菜谷のことだっけな」
バシャ、と音がする。肩まで俺は湯船に浸かっている。その状態で腕を動かしたためにでた音だった。
「異能現象──────か」
俺は『現象』を強く拒む。だって『アレ』が無ければ兄さんは────────。
──────はぁ、と俺は嘆息して、
「考えてもしゃーない。『兄さん』のことは、もう────」
しんみりした雰囲気が風呂のなかを支配した、その時。
「カッズー、湯加減はどう?」
風呂場から声が聞こえてきた。雅美の声だ。
「あぁ、普通かな。大丈夫だぞ」
「そうかね。だ、大丈夫かな!」
何か、動揺しながら大きな声で返事をしてくる。
「うん。まぁな」
俺は適当に言った。
「良し」
雅美は覚悟を決めたような声を出す。
ガラガラ、と『風呂のドア』が開いた。
そこから、白いバスタオル姿の雅美が出てくる。『こちらに入ってきたのだ』
「うぅぅうえ!?」
何か変な声がでたな俺。雅美が入ってきた。
バスタオルを体に巻いている。
「何をしてるんだよ!?雅美さんは!?」
俺、絶叫するぜー。
「え!え!だっ、だってぇ~」
「だってじゃねぇ!馬鹿!」
俺は雅美に風呂にある数多の物体をぶん投げる。
(あれ?普通は女の子が男に投げるんじゃねぇ?)
何かしらの考えが頭のなかに出る。だが無視した。洗面器が雅美の額に命中する。
スッコンッ!、という音が聞こえた。
「うぅぅうえ!酷いよ、カッズー!」
額を押されながら、雅美が呻いた。
「う、うるひゃい!出てけ!」
またもや、変な声がでたな俺。
「うぅぅぅぅぅ~!!カッズーの馬鹿!」
捨て台詞と共に、雅美は逃げていく。
ドタドタ、と音を立てながら走って逃げる雅美だった。
あ、そういえば、バスタオル姿のまんまだぞ、雅美。
「はぁ、はぁ、はぁ。危機は去った」
荒い呼吸をする。あぁ、ビックリした。
「ふぅー」
幸い俺は起立はしなかった。危なかったな。
起立をしたら、アレだ、『死』だった。
「・・・・・もう上がろう」
俺は風呂を後にした。
●●●
風呂から上がると、俺の自室で雅美がふて腐れていた。つまり、拗ねていた。
「ばーかカッズー」
「お、お前な」
俺は苦笑する。雅美はベットにくるまっていた。顔はこちらを向いている。
「昔は一緒に入ってたじゃん。ばーか」
「いつの話だよ!?」
「・・・・・・昨日とか」
「なわけねぇだろ!!十年も前だよ!」
つい最近みたいに言いやがった、雅美だった。嘘を吐くな、雅美。
「ブゥー、でもお風呂くらい良いじゃん!」
頬を膨らませて、ブゥブゥと文句を言う雅美。実際、可愛いかった。
「ならばお前は他人に裸を見せていいと?」
「カッズーは幼馴染みだもん!」
「だからってな。恋人じゃあねぇんだし」
「恋人っ!!」
驚愕の表情を作る雅美。
「な、なら、恋人ならいいと!?」
「例えだっつうの!もうさっきのは気にしないから、拗ねるな。電気消すぞ?」
就寝することを告げる。
「はぁーい、ばーかカッズー」
「はいはい」
適当に言い、電灯の電気を消す。部屋は真っ暗になった。俺は布団のなかにもぐり込む。
静寂が俺たちを包んだ。窓から出る月の光が明るかった。
そこで、俺が言葉を切り出した。
「なぁ、雅美、」