─時間に遅刻することはすなわち幼馴染みフラグ─
取りあえず、家に帰ることにした。
公園の時計の針は18:00を指していた。
多分、雅美にぶち切れられる。
(今日は雅美が昼食作ってくれるらしいしな)
とにかく、遅れるのは『死』を招く。
「じゃ、俺は帰るよ。幼馴染みに帰るの遅くなったら、殺されるから」
目が死にそうになりながらも俺は立ち上がる。あ、この時間はもう殺されるな。時間を考えて思った。
「あ、はい!───あ、あの!」
菜谷が声で俺を引き止める。
「ん?どうした?」
俺は振り返る。幼馴染みが、怖いのにぃぃ。
「あの、メールアドレスの、こ、交換しませんか?」
「メルアド交換?」
「はい。そ、その方が連絡取りやすいですし、い、良いですか?」
「あぁ、別に良いよ」
俺は菜谷とメールアドレスの交換をする。
ピピッ、と音がして、終わった。
「良し。ではこれで───────」
「あ、あの!」
またもや、呼び止められる。早くしなきゃ行けねぇのに。
「はい。何でしょう?」
何か、泣けてきましたよ?菜谷さん。
「よ、よろしくお願いします!」
ペコリ、と頭を下げた。可愛いらしかった。
「あ、うん。こっちこそ、よろしくな!」
俺もペコリ、と頭を下げた。いや、俺の場合は『ペコリ』ではなくて『べこり』だな。
何か、きたねぇ。
「じゃ、また明日」
俺は右手を上げる。
「あ、ハイです!」
菜谷も右手を上げた。
子供みたいに元気だった。
「オッス、また、明日な!」
そういって俺は後ろに体の向きを変えて、なるべく急ぐために、走って家に帰るのだった。
●●●
家に帰ると、呪詛が聞こえてきた。
「─アィ──ッ─────ォソ────スギ───ダ────────ロォ─────────」
(何か、怖い!)
暗黒のオーラと漆黒の呪詛がリビングから聞こえてくる。
(あれ、何か、寒気がするぞ、あれ?)
怯えながらもリビングに歩いていく。
リビングの前に来たので、リビングにいる(と思われる)[呪術師]様に声をかける。
「お、オッス~、雅美?」
ギョロ、という音を出しながら、此方を振り向く。目の光彩がなかった。
その目に、あるのは────────。
「アァー、オカエリー」
───────とてつもない、闇だった。
「えっと・・・ですね、雅美様」
「ナニ?カッズー?」
(さてと、どうしよう?)
俺の悪あがきが始まった。
(俺、殺されるかもな)
涼しく俺は考えた。
目の前の、呪術師は簡単には、俺を許してはくれないようだった。