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白の友達  作者: temso
3/12

 その夜、真次は必死に頭をひねっていた。

 『もし仮に!あんたがどっかの国立大学に受かったら!一人暮らしさせてやってもいい』

 この一言が真次に活力を与えたのは昨年の夏、高校三年のときだ。

 彼の家は、お世辞にも余裕があるご家庭とはいえなかった。地方の大学に通わせる余裕はない。行けるとすれば地元の私大か、国立大。そこで真次は粘り強く交渉しつづけ、両親からこの一言を得たのだった。

 彼は一人暮らしがしたかった。理由は単純、かつ超がつくほど下らないものだ。

 「昼夜いつでもゲームが出来る!」

 彼は軽度のひきこもりだった。

 彼の当時の学力は平均より少し下、すぐに勉強を始めて間に合うかどうか、といったところだった。やるならマジにならなければならない。だが、やるしかない!

 彼は一念発起、猛勉強を開始し、栄光を勝ち取った。

 やったんや!俺はやれば出来る子なんや!

 ところがここにきて、この窮地である。

 なぜそこまで、彼が悩むのかとお思いの方もいるだろう。

 実は彼の通う大学は、実家と同じ県内。ありていに言って、通えるくらいの距離のところにあるのだ。事実、定期を買ったほうがマンションを借りるよりはるかに安い。

 ここで単位を落としでもすれば、いったい何を言われるやら。

 最悪、実家に強制送還されることだってありうる!

 とにかくこれ以上、寝坊するわけにはいかないんだ!

 真剣な割にはくだらない悩みだった。

 とにかく彼は頭を回転させた。こんなに真剣に頭を使ったのは大学入試のとき以来だ。

 さあ考えろ!どうすれば朝必ず起きられるんだ!

 


 

 早く寝よう。



 二時間もかけて考え出したアイデアはそんなもんだった。

 どうやら彼の脳みそは大学に入学してからたった二ヵ月足らずでずいぶんと退化してしまったらしい。

 「よし、もう寝よう!」

 真次は時計を見た。


 AM1:30。

 

 無情にも、デジタル時計はこう表示していた。

 「そんな……」

 もはや、早寝とはいえないではないか。

 というか、だいたい彼が寝るのはいつもこの時間帯なのだが。

 「ああ、どうすればいい!」

 それからまた三十分ほど考えて、彼はこう結論を出した。



 

 寝なければいい。





 翌日彼は、正午、キッチンにて目を覚ました。

 床にはコーヒーの粉が散らばっていた。必死の抵抗の跡である。

 そして、彼の単位はますます危うくなって来たのだった。


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