②
「ふーん…同じ大学なんだ。学部違うと全然分かんないよね」
空調が効いたカフェの奥まった席で、譲流は田沼と向かい合っていた。
「あ、でも篠田さんたちは結構有名だよね」
「あー……すごく不本意だけど。ヤラカシさんがいるから?」
どうにもおっちょこちょいな相棒を思い浮かべ、苦笑いが漏れる。
(そういえば河童……どうしたかな)
「それで……相談、なんだけど」
アイスティをくるりとかき混ぜる田沼の顔に、ふと影が射した。
「友達、秋津っていうんだけど……そいつが行方不明なんだ」
「行方不明?」
「もう二週間も連絡取れなくて。最後に『篠田さんによろしく』って」
秋津という名前には聞き覚えがあった。
「秋津、音弥……?首席で入学した?」
名前だけは知っている。しかし面識は全くなかった。
だからこそ、先程田沼があのキーワードを知っていたことが気にかかる。
「田沼はさ、誰に聞いたの?その……あの言葉」
「言葉?……ああ、あれ?あれも音弥が前に話してたのを覚えてて」
あのキーワードは、妖やそれに連なる者が助けを必要とする時、正しい用法をすることで効果を発揮するのだ。
(今がその時、かな)
話してみて、田沼は信用に足る人物だと譲流の直感が告げる。
「やれるだけのことはするよ。よろしくね、田沼」
氷が溶けて薄くなったオレンジジュースを喉に流し込んで、譲流は田沼と連絡先を交換するために携帯を操作した。