出会い①
「うー……またやっちゃった」
さらさらした栗毛が幾分か俯いて見える。黒縁のだて眼鏡にかかる前髪にイライラしつつ、まだ感触の残る左の掌を見つめ、篠田譲流は溜め息をこぼした。
(あんなの……ただの八つ当たりだ)
ちゃんと分かっている。しっかりと表示を確認しなかった自分にも非があることは。
だけどそれをあの場で認められる程、譲流は大人ではなかった。
「……ごめん、密朧さん」
とぼとぼと帰路を辿りながら置いてきてしまった相棒へと呟く。思いっきり叩いてしまったことへの謝罪と、河童の処置を放り出して来てしまったことへの罪悪感で譲流の気持ちは更に重くなった。
「 ……?」
「っ!?〜〜〜〜〜っぅ、ぁ!?」
耳許で音がしたと同時に大きな何かに左肩を掴まれ、譲流の口から声にならない悲鳴が漏れる。
「……ぇえ!?大丈夫ですか?」
慌てて振り返ると、両手をホールドアップさせた青年が目を瞬かせていた。
「っだ、誰……?てか、手ぇでかっ……」
「あ、ごめんなさい。僕、田沼って言いますけど……」
篠原さん、ですよね?と印象的
な情けない笑顔で確認される。
(これは、もしかして……?)
「えーと……『お嬢様、お手をどうぞ』?」
「……ぁあ、うん。話聞くよ」
半信半疑な顔を隠せない田沼に軽く頷きながら、譲流は近くのカフェを頭のなかでリストアップした。