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第十章 ありきたりな少女の追想、そして――

 十三年前――あたしは自分が普通の子供とは違う事を知った。

 物心付いて初めて、心臓発作を引き起こしたのだ。

 それまで普通の生活だったけど、それはあたしが自分の体が欠陥を抱えている事を自覚するその時まで、という両親の我が侭だったそうだ。

 それから、あたしの入院生活が始まった。

 それ以来、あたしは自分の親を呪った。

 どうしてあたしをこんな体にしたのだろう。

 後で知った。ママがそういう体だったのだ。

 ママのそれも原因不明、あたしのこれも原因不明。

 だけど、症状は同じだった。ママは薬で抑制していたけど、あたしには効果が強過ぎて使えず、結果あたしは発作が収まるのを待つしかなかった。

 そういう事が発覚して以来、あたしは自分の親が憎くて仕方なかった。

 パパとママは知っていた。ママの持病が遺伝するかもしれない事を。

 それを承知の上で、パパとママは性行為をし、あたしを身篭った。

 そんなの酷過ぎる。

 何で分かっていてあたしを生んだの。

 それからというもの、あたしは両親を憎む事で自分を保つ術を覚えた。

 そうすれば、発作の辛さは忘れられた。

 それでもパパとママはあたしを愛してくれた。

 仕事の合間を縫ってはあたしの見舞いに来てくれて、暇なあたしのために色々な事を教えてくれて、邪険にするあたしに対しても怒る事もしなければ、泣く事もせず、子を持つ親として接してくれた。

 あたしは謝らなかった。

 当然だと思っていたから。


 でも、それはとんだ誤解だった。

 あたしの心臓が欠陥を抱えていたのは本当だ。

 誤解だったのは、両親が原因ではなかった事。

 パパとママはあたしのために、あたしが自分達を憎む事で生きる希望を失わない様に、生きる事を諦めない様に演技してくれていたのだ。

 ママが心臓に欠陥を抱えているというのは迫真の演技。

 ママが服用していた薬もただのサプリメントだったのだ。

 全てはあたしの心臓の欠陥が原因不明である事を気取らせないため。

 パパとママは、あたしのために自ら悪役を演じていたのだ。

 そういう事を聞けたのは、多分運。

 その時、あたしは偶々病室から席を外していた。

 戻って来た時、あたしは医師とパパとママがそういう話をしているのを聞いた。

 聞いてしまった。パパとママが墓まで持って行くと決めていた決心を。

 あたしはとにかく謝った。

 それしかあたしには出来なかったから。

 こんな愚かなあたしをパパとママは許してくれた。

 それどころか、辛い思いをさせた、と泣いて謝った。

 それでも憎しみは消えない。

 嘘をついていたパパとママへの怒りは消えない。

 だからだろう、あたしは神様を呪った。

 何でパパとママをこんな辛い目に合わせるのか。

 どうしてあたし達一家だったのか。

 恨んでも、恨み切れなかった。


 それから数年、あたしは唐突に『何か欲しい物はあるか』と聞かれた。

 それを聞いて来たのは、パパとママの友人を名乗る人だ。

 怪しさ極まりなかったけど、そういう人はたくさんいたし、本当にあやしかったらあたしへの面会は出来ないはずだったから、あたしは気にしなかった。

 あたしが『どうして』と聞くと、その人は『サンタだからだ』と答えた。

 おかしな人だった。クリスマスでも無いのに何で来たの、とさえ聞いた。

 そうしたら、そのサンタさんはこう言った。

 ――『そうしないとプレゼントをあげられないからね』と。

 そんなサンタさんにあたしは言った。プレゼントは要らない、と。良い子じゃないあたしはプレゼントなんてもらっちゃいけないから、と。

 すると、サンタさんはこう言った。

 ――『いや、君は良い子だよ。だってパパとママのために泣けるのだから』

 その時、あたしは確かに泣いていた。泣きながら神父さんでもシスターさんでもなく、サンタさんに自分の罪を告白し、懺悔した。

 それで、許された気になったあたしは駄目元でお願いした。

 ――『心臓が欲しいです。どんな辛い事があっても負けない強い心臓が』

 当然の如く、サンタさんは『何で?』と聞いて来た。

 あたしは自分の事を話した。自分が心臓に原因不明の欠陥を抱えていて、そのせいで両親に酷い事を言ったり、してしまったりした。でもそれは誤解で、両親は何も悪くなかった。だからその恩返しを、罪滅ぼしがしたい。だけどこんな欠陥だらけの心臓じゃそれもままならない。だから心臓が、どんな事があっても大丈夫な強い心臓が欲しいの、と。

 それを聞いたサンタさんは、しばらく黙った後、

 ――『親子揃って似た様な事を言うんだね』

 というぶっ飛んだ返答をして来た。

 あたしは聞いた。パパとママがそんな事を言っていたのか、と。

 ――『ああ。全く同じというわけではないけどね』

 サンタさんは臆面も無く言って、病室を後にして言った。

 その去り際、サンタさんはこう言った。

 ――『良い子にしていると良い。そうしたらもしかするかもしれないから』

 まさか肯定されるとは思わなかったけど、その時には既にサンタさんを信じていなかったあたしは、それでもほんのちょっぴりの期待を込めて。

 ――『うん。じゃあ良い子にしているね』。

 サンタさんの背中にそう言った。

 それからしばらく経って、サンタさんは神様だった事にあたしは気付いた。

 だってサンタさんはあたし達一家の願いを叶えてくれた。

 それでもこんな風にした恨みは消えなかったけど、少なくとも殺意を抱くほどではなくなっていた。殺意まで消していくとはサービス精神旺盛だ、と思った。


「……なるほど。だから『ブレイブハーツ』なんですね」

 吐き出す様にあたしは言った。

 神様は小細工なんて仕込まず、ただただ事実を述べていた。

 ブレイブハーツ――勇敢なる心。

 勇敢さはイコール強さだ。

 つまりはそういう事だ。それがかの英雄の心臓である事には驚きだが、彼女の心臓なら申し分無い。一介の村娘から聖女と呼ばれるに至った英雄ジャンヌ=ダルク――そんな英雄の心臓は間違いなく強い心臓だろうから。

 だけど、それでも分からない事がある。

「結局、あたしの心臓の欠陥って何だったんですか?」

「……あたしは優秀過ぎた。だからだよ」

 答えは、培養器の中から。

「さっき、メタトロンに言われたよね? あたしはその気になれば神をも殺せる剣になれるって。多分そのせい。……そうですよね、熾天使ミカエル」

「ああ。それは誰も――いや『防人』だな。『防人』がそう判断した」

「『防人』を知っているんですか?」

「これでも天使だ。元だがな」

「あ、なるほど」

「納得してもらったところで続けるぞ。貴女の戦闘才能は見ての通りだ。言い方は悪いが劣化模倣品である貴女のクローンでさえ、即時的であれ、継続的であれ、教育を施せばいずれも一流の腕前となる。しかし、あまりにも優秀過ぎており、それを『防人』という概念は恐れ、そうなる可能性を排除するべく、貴女を殺そうとした。ところが、それもまた『防人』の成せる業か。危険性を孕んでいても優秀である事は事実。要するに、貴女の中にある『防人』は、その優秀さ故に自己矛盾を引き起こしていた。心臓の欠陥はそれ故だろう」

 ふぅ、とセノーラフさんは息をついた。

 それから心底嫌そうな顔をして続ける。

「……さて、ここから先は胸糞悪い話で、ちょっとした狂気の沙汰だ。まだ解決していない事もあるが、何もかも過ぎた事。聞いたところで罪の意識が増すだけで、何かを取り戻せもしない。だから改めて聞く。どうする?」

「毒を食らわば皿まで、です」

 あたしはそう答えた。

「……それは知りたいです。あたしが知っている事と辻褄が合いません」

 培養器の中のあたしはそう答えた。

 あたし達の肯定を見て、セノーラフさんはため息してから口を開いた。

「了解した。……まずは心臓だけが本物の防人一実の疑問から解消するか。結論から言うと貴女はその中から出る事が可能だ。では、何故メタトロンはそんな嘘を付いたのか? それは防人夫妻の願いと貴女の願いを聞いた上で自分の望みも叶えるためだろう。そう考えると一連の奴の行動には説明がつく」

「どういう事ですか?」

「奴の望みは自らの死だ。その理由は奴が愚直なほど天使だったため。奴はある時から人に対して不信感を抱いていた。しかし、奴は出典によっては神と同一視されている天使であり、それ故に使命感と不信感の両立は不可能だ、と悟ったのだろう。使命感と不信感の板ばさみ――まあ奴もまた自己矛盾を抱えてしまったのだ。そうして、奴は貴女達一家の『願い』を聞いた。それを奴は最後の職務とし、こうなるように試行錯誤を重ね、見事達成した」

「そ、んな……」

 培養器の中のあたしは狼狽した声で呟き、底に沈んだ。

「……では、メタトロンがパパの体とママの知識を求めたのは?」

「それも最後と決めた職務と自分の目的を達成させるためだ。ここからは少し推測が入る。恐らく神とメタトロンは裏で協力関係にある。どちらが先かは分からないが、そう考えないとメタトロンの行動に辻褄が合わない」

「と言うと?」

「防人夫妻の願いは『娘を助けてくれ』というものだろう。それを叶えるべく、まず神が動き、貴女の心臓を体から切り離し、ブレイブハーツ――聖女ジャンヌの心臓を体だけが本物の防人一実に与えた。これで体だけの防人一実は助かった。が、心臓だけとなった防人一実は助けられていないし、それではそもそもの原因である自己矛盾を抱えた『防人』という不安要素は依然解消されていない。それを解消し、かつ防人一実をどのような形であれ完璧に助けるにはどうしたら良いか。……ここまで言えば見えてくるだろう?」

「お互いがお互いの抑止力となれば良い――そういう事ですね?」

 これは分かった。

「どういう事?」

 培養器の中のあたしが聞いてくる。

「目には目を、歯には歯を、だよ。そもそもこんな事になっているのはあたし達の『防人』が優秀過ぎたからだよね? そのせいであたし達の『防人』は排除と観察とでも言えば良いのかな。そういう二通りの考えが出来た。この条件をクリアし、それでいて防人一実をどんな形であれ完璧に助けるには、ぶっ飛んだ考えだけどある意味合理的。要するにあたしが二人いればそれで済む話だからね」

 防人一実に対する防人一実。こうすればそもそもの原因である『防人』の自己矛盾は解消される。あたしという抑止力がいれば、もう一人のあたしが何某かの事で暴走しても止められる。現に今だって体だけが本物のあたしは、こうして心臓だけが本物のあたしの事を止めに来たし、逆に心臓だけのあたしは体だけのあたしを篭絡する事で自分達の消滅を図っている。どんな形であれ、一方がもう一方の完全なる抑止力となっている。

 そして何より、この方法なら心臓だけが本物のあたしも、体だけが本物のあたしもどんな形であれ生きられ、それはパパとママの願いである『娘を助けてくれ』的な内容の願いも無事成就される。実際問題、あたし達はこういう形であれ、心臓と体を切り離されたけど、それぞれが『防人一実』として生きている。

「……だけど、なら、別にパパとママは死ななくても済んだんじゃないの?」

 培養器の中のあたしが言った。

 あたしもそう思いたい。でも、それは絶対に不可能だ。

「ううん。それは無理。でなきゃ、パパとママは殺されない。あの殺しても死なない様な人達が殺されるなら、それはきっと娘を助けるために必要だったから」

「どうして必要だったの?」

「それは――」

「そうしないといけない理由があった」

 セノーラフさんがあたしの後を引き継いでくれた。あたしが分かるのは理由があるという事だけで、どんな理由なのかまでは分からない。

 あたしも聞き手側に回るとしよう。

「体だけが本物のカズミが言ってくれた様に、この状況は『互いが互いの抑止力』という方法で回避される事になった。しかし、体だけが本物であるカズミには聖女の心臓が与えられた様に、心臓だけが本物であるカズミにもそれ相応の体が必要不可欠だ。そうしなければ釣り合わない。だが、それに見合う体は無い。でも、そうなると防人夫妻の望みは叶わない。そうなると、方法は一つ。秘密裏に作るしかない。最上の『防人』に相応しい体を」

「だから! それでどうして――」

「知りたいなら黙って聞け。誰も『終わり』とは言っていないだろう」

 鋭く指摘され、培養器の中のあたしは閉口した。

 セノーラフさんは一息付いてから再び口を開いた。

「黙ったところで続ける。……体は用意するしかない。だが、それは多くの上位存が律している『直接干渉』に触れる事だ。この事象は人智を越えた問題ではあるが、罪が罪として問われる様に、例えのっぴきならない状況だったとしてもそれは許されない。しかし、それではカズミを助けられない。でもな、何事にも抜け道はある様に、この決まりにも幾つか抜け道がある。その一つに『憑依』という方法がある。これを行えば、傍目にはその人物にしか見えない。見破れる者も少なからずいるが、それは相手が見せる意思がある場合だ。そうしなければ、隠蔽工作にはならないからな。……ここまで言えば分かるな?」

「……パパ……ママ……」

 培養器の中のあたしは崩れ、少しして嗚咽が聞こえてきた。

 なるほど。確かに胸糞悪く、それでいて狂気の沙汰だ。

 だけど、受け止めなければいけない。

 そうしないと、パパとママは無駄死にになってしまう。

 これは、あたしが背負わなければいけない罪業だ。

「……セノーラフさん、ありがとうございます」

「礼を言うにはまだ早いな。これで全てが片付いたわけではない」

 確かにそうだ。今回片付いたのはあたし個人の問題だ。それを完遂するためにメタトロンがアイン達にさせて来た事がまだ残っている。

「……ねえあたし、襲われているというのは本当なの?」

「もう平気?」

「うん。それに……愚図っていても何にもならないからね」

 そう言った瞬間、心臓だけが本物のあたしは培養器の下へと消えた。かくて空の培養器が中央に佇み、

「おっ」

「えっ?」

 培養器の陰から、一糸まとわぬ姿で出て来た。拭く物はあったのだろうが、服は用意されていなかったのだろう。

「な、ななな、何してんの、あたし!?」

「体が重いよ、あたし」

「知るか! 服着なよ、服! 無かったの?」

「無かった。出るなんて想定していなかったからかな?」

「準備悪い! 拭く物はあったのに!?」

「あ、それは出る時に乾燥機能が付いているだよ。便利でしょ?」

「便利だけど痒いところに手が届いてない! ――そして、何時まで見ているんですか、セノーラフさん!」

 あたしはセノーラフさんに怒鳴った。

 向こうを向いてくれるかと期待したのだが、期待虚しく、見っ放し。

 というか、何これ。

 あたし達、ついさっきまで殺すとか殺さないとか言ってなかったっけ?

「ん? 見せてくれていたのでは無かったのか?」

「んなわけないでしょ!?」

「そうか。それは済まなかった」

 そう言って、彼はコートを脱ぎ、こちらへ放ってから向こうを向いた。

「あ、ありがとうございます」

「礼は良いからさっさと着せとけ」

 もっともである。

 あたしはコートをもう一人のあたしに渡し、もう一人のあたしはそれをまとった。身長差があるせいか、下から上まで隠れるが裾を捲くる必要があった。

「……スースーするよ、あたし」

「我慢して! ああもう、服も調達しないといけないし、この水槽にいるアイン達もどうにかしないといけないし、外で寝ているアイン達にも事情を説明しないといけないし……ああもう、やる事有り過ぎだよ! どう――」

 そう思って振り返ってみれば、先ほどまでいたはずのセノーラフさんの姿が無い。一体何処に言ったのだろう。

「あたし」

 ツンツン、と小突かれ、あたしは振り返った。すると、何時の間にか中央のコンピューターをにらめ合っているセノーラフさんの姿を見つける。

 あたし達は近寄り、あたしが訪ねた。

「何しているんです?」

「妨害電波を切るところだ。状況終了次第、連絡する事になっている」

 なるほど。でもあれ?

「あの、さっきの受信機は?」

「ん? あれは天道家の特注品でその辺は問題無いらしい。発信機の方も同上だ。どっかのバカが何処にいるか何時でも把握出来る様に、との事だ」

「そのバカってあたしですか?」

「自覚があるなら安心だ」

 うわ、この人殴りたい。

 そんな事を思っている内に把握を終えたセノーラフさんがボタンを一つ押した。

 すると、画面には『妨害電波・OFF』と表示された。

 その画面を確認するや、セノーラフさんは携帯を取り出し、操作してから耳に当てる。

「あー、もしもし? セノーラフだ。状況終了。色々話したい事や片付けたい事があるから迎えに来てくれ。ああそれと、結構驚く事があるからそれなりの心構えをしてくる様に。……ああ、了解した」

 と、不意にセノーラフさんがあたしに携帯を渡してくる。

「何ですか?」

「トモミ=テンドウが貴女の声を聞きたいそうだ」

 あー、やっぱり。

「……いない事にしてください」

「いや、それは無理だろう」

「だって、百パーセント説教だし……」

「それだけの事をして来ただろう。諦めてさっさと出ないと――」

「一実! 今そっちに行くから首を洗って待っていなさい!」

 その声にあたしは心底驚いた。声はかなり遠いが、足音が近づいてくる。

「え、嘘、どうして!?」

「それがな、何でも突然船に乗りたくなり、この近海を偶々遊覧していたそうだ。そんなところへ俺が連絡を入れた。だから言っただろう。さっさと出ないと本人が到着してしまうぞ、と」

 ま、マジですかー!? ど、どどど、どうしよう。心の準備が。

 うーん、こういう時はあれだね、三十六計逃げるに限る。

「――というわけで、あたしは――」

「待ちなさい!」

 画策した瞬間に失敗に終わりました。

 恐る恐る振り向けば、そこにいたのは親友の姿をした仁王様。

「一実、貴女って子は何回私を――って、あら?」

 そんな仁王様は怒りなんて何処へやら、唐突に素っ頓狂な声をした。

「お嬢様、足速過ぎます。淑女足る者……あら?」

「お嬢様―、もうちょっとゆっくり! こっちは……あれ?」

 続いて沙耶さんと鶴来さんが現れ、二人も同じ様に素っ頓狂な反応をした。

 まあ普通驚くよね。あたしともう一人のあたしは瓜二つだもん。

 少しして、知美がおもむろに言った。

「何この至福の地……じゃなくて、ねえ、沙耶、鶴来。私には一実がどう見ても二人いる様に見えるのだけど、二人にはどう見えているのかしら?」

「二人ですね」

「お姉ちゃんに同じくでーす」

 二人の確認を聞き、知美はうんうんと頷いた。

「そっか、そっか。となると、私の目にフィルターがかかったわけでも、私が白昼夢を見ているわけでもないわけね」

 そう言って、知美はあたしを見て、ニッコリ笑った。

「――一実、洗いざらい吐いてもらえるかしら?」

 知美、目が笑っていないよ、目が。

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