表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

助虫

作者: 中田 勘

盆休みに墓参りをしたときのことです。

その日は小雨も降らない日でした。

墓は霊園じゃなく山の中にあるしそこは車の通れないような道で、歩いて墓へと向かっていきました。

といっても、せいぜい徒歩10分程度だし簡単な階段もあるので苦ではありませんでした。

その山は木が沢山ありますが階段の横数メートルにわたって切り開かれていますので当たりは真っ暗ではありませんでした。

あと2分程度で墓のある場所まで着こうとしていたとき私は黒い人型の影を見ました。

しかしその影はすぐ木に隠れてしまいました。

とくに気にならなかったのでそのまま進んで行き墓のある場所まで進んでいきました。

そこで不自然に思いました。

ここに来るまでアリが階段3段分を埋め尽くしていて、まるで私が墓場に近づくのを拒んでいるかのようでした。

仕方いないので、成るべく踏まないようにして進んで行きましたがまったく踏まないという事は出来ませんでした。

そしてここに来て、墓へと続く道の両横にある木を伝って私の顎の高さから膝の高さぐらいまでクモの巣が張り巡らされていました。

まるで、ここから先は進入禁止、といわんばかりでした。

そこは仕方が無いので巣を破いて進みました。

ここは墓場ので、当然墓は一個ではありません。

なのでそこだけは、横に20メートル。縦に30メートルほど木々が開けていましたので空も確認でき曇っていました。さっきまで晴れていたのに。

さすがに気味が悪くなって、墓場を早々に立ち去ろうとやるべきことを済ませました。

ちょうど終わった頃に蚊が増えてきましたので後は何もせず帰りました。

帰りは下り坂なのでほんの3分程度で山を出れました。


道中は黒い影と言い虫と言い、何だったのだろうと考えていました。

すると後ろに気配を感じましたので振り返ると、あの影がいました。

さっき見たときと比べて崩れていいたので、かろうじて人型だと分かるものでしたがあの影でした。

影は私にとり憑いてきました。

洗脳しようとしたのでしょうか。

私は焦りながらも虫たちはこの危険を回避して欲しかったのだと理解しました。

それなのに私はアリを何十匹も殺してアレほど大きなクモの巣を無常にも壊して、そして危険を回避できなかった。

それは虫たちには悔いても悔いきれない思いでした。

自分に諦めては駄目だと言い聞かせ気を保ちました。

肉体的にはなんとも無いのですが精神的には朽ちる寸前でした。

それでも踏ん張って山を降りました。

山を出た時には影は消えていました。


その後私は病棟暮らしになりました。

感情がいくつか欠落して、精神病患者となりました。

しかし虫たちがいなければ私の意識は押さえ込められて完全に支配されていたでしょう。

だから悲壮感は無くただ虫たちへの感謝があるのみでした。

前作とは対象的な作品にしました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ