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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

私だけの特別な力

掲載日:2026/09/30

 私には超能力がある。


 強く願って眠ると、なんでも願いが叶うのだ。



 最初に気づいたのは、五歳の頃だった。


 ハンバーグが食べたくて仕方なくて、


「明日はハンバーグが食べたい」


 そう願って眠ったら、その日の夕飯はハンバーグだった。



 小学生の頃には、宿題をしたくなくて、


「宿題よ、終われ!」


 と願ってから寝た。


 朝起きると、宿題は全部終わっていた。



 私はこの能力(ちから)を疑ったことがない。


 だって、願いはいつだって叶ってきたから。



 ある日、その話をおばあちゃんにしたら。


「神様がくれたんだろうねぇ」


 そう言って、頭を撫でてくれた。



 私は生まれてすぐに両親を亡くした。


 だから、おばあちゃんが一人で育ててくれた。



 朝になると起こしてくれる。


 お弁当を作ってくれる。


 夜になると、温かいご飯を用意してくれる。



 怒ることなんて、見たことない。


 私にとって、世界で一番優しい人だった。




 中学生になると、その能力(ちから)はますます便利になった。



 学年で一番人気のハヤト君。


 彼と付き合いたいと思った。


 だから、願った。



 翌日から、なぜか彼は私によく話しかけてくるようになった。


 数日後には、恋人になっていた。



 当然だ。


 私の願いは叶うのだから。




 ただ、不満そうな顔をする子もいた。


 リカという女子だ。


 いつもハヤト君の近くにいた子。


「ハヤトは、あんたのこと好きじゃない」


 いつもそんなことを言ってきた。


 意味がわからなかった。


 好きだから付き合っている。


 そんなの、当たり前なのに。



 しばらくすると、リカは転校した。


 家庭の事情らしい。



 よかった。


 これで面倒なことを言われなくて済む。




 部活の先輩に怒鳴られたこともある。


 彼女はいつも怒ってばかりで、部の空気が悪くなる。


 顔を見るのも嫌だった。


 だから、願った。


 会わなくなればいいのに、と。


 翌日には、その先輩は退部していた。


 みんな泣いていた。


 変なの。


 嫌な人がいなくなったのに。




 先生に理不尽に叱られたこともあった。


 とても腹が立った。


 もう二度と怒られたくない。


 そう思って眠った。


 次の日から、その先生は学校に来なくなった。


 急な異動があったんだって。


 クラスのみんなは暗い顔をしていたけれど、私は気にしなかった。




 本当に便利な能力(ちから)だった。


 成績も良かった。


 テスト前に願えば、良い点が取れる。


 先生にも期待された。


 友達も多かった。


 私は幸せだった。




 そんなある日。


 おばあちゃんと買い物をしているときだった。


 突然、黒ずくめの男が飛び出してきた。


 男の手には、刃物が握られていて、私には何が起きたのかわからなかった。


 気づけば、おばあちゃんが私を突き飛ばしていた。


 そして。


 男の刃がおばあちゃんの胸に突き刺さる。


 一度。


 二度。


 三度。


 何度も。


 悲鳴が響いた。


 誰かが通報して、駆けつけた警官によって男は取り押さえられた。


 そして、おばあちゃんは病院へ運ばれた。




 その日の夜。


 病院から連絡が来た。


 おばあちゃんは助からなかったという。


 先生は何度も謝っていた。



 でも、私は平気だった。


 だって、願えばいいんだから。


 今までだって、そうだった。


 だから、笑って言った。


「大丈夫です。おばあちゃんは帰ってきますから」



 その夜。


 私はこれまでで一番強く願った。


「おばあちゃんが生き返りますように」


 そして、眠った。




 翌日。


 昼近くまで寝てしまった。


 起こしてくれる人がいなかったからだ。


 家の中は妙に静かだった。


 階段を降り、居間へ行く。


 でも、そこにおばあちゃんの姿はなかった。


 私はすぐに病院へ電話した。


 電話口の看護師は、優しい声で答えた。


「お気持ちはお察しします」


 その言葉を聞いた瞬間、怒りで頭が真っ白になった。



 違う。


 話にならない。


 私は特別だ。


 願いは叶うんだ。


 今までだって、叶ってきた。


 なのに。


 なんで、なんで今回は。



 そのときだった。


 ドンドンドンドン!


 玄関が乱暴に叩かれる。


 窓から外を見ると、学校の生徒たちが集まっていた。


 クラスメイトも、他のクラスの生徒も。


 ハヤト君もいた。


 心配して来てくれたのだと思った。


 だから、急いで玄関を開けた。


「みんな、どうしたの?」


 しかし、返ってきたのは嘲笑だった。


「ようやく死んだんだってな」


「は?」


「お前のばあさんだよ」


 意味がわからない。


 なんで、そんなことを言うの。


「これでやっと終わりだ」


「終わり?」


「ふざけんな。どれだけ我慢してたと思ってる」


 見知らぬ先輩が吐き捨てる。


 クラスの女子が睨(にら)みつける。


 みんな怒っていた。


「あのばあさんがいなかったら、もう怖くねぇ」


 誰かがそう言った。


 怖い? おばあちゃんが?


 あんなに優しいのに。


「なぁ、リカのこと、覚えてるか」


 ハヤト君だった。


「転校した子でしょ? ハヤト君に付きまとっていた」


「リカは俺の恋人だった」


 私は首を傾げる。


「違うよ。私と付き合ってたじゃん」


「そうだな。そうするしかないって思ったんだ」


 とても低く、冷たい声だった。


 あれだけ優しかったハヤト君が、怒りに震えている。


 そんなハヤト君を見るのは初めてだった。


「ごめん。私、怒らせるようなことしちゃった?」


「リカは死んだ。この街に居場所がなくなって、両親も職を失って、それで、責任を感じて首を……」


 何を言っているのかわからない。


「その女と私に何の関係が……」


 私を睨(にら)む彼の目は、これまで見たことのないものだった。


 嫌悪(けんお)。


 憎しみ。


 軽蔑(けいべつ)。


「死んで償え」


 その一言だけを残して、去っていく。


 それを皮切りに、みんなが一斉に押し寄せた。


 殴られる。


 蹴られる。


 髪を引っ張られる。


 痛い。


 痛いよ。


 誰か、助けて。


 ハヤト君。


 おばあちゃん。


 こんなの、おかしい。


 こんな世界は間違ってる。


 私は願った。


 お願い。


「助けて! おばあちゃん!!」


 その瞬間。


 殴られた痛みが消えていき、頭に響く怒鳴り声も遠ざかる。


 恐る恐る目を開けると、目の前に、おばあちゃんが立っていた。


 なぜか、おばあちゃんは泣きそうな顔をしている。


 でも、私は嬉しくて仕方なかった。




 ほら。


 やっぱり。


 私の願いは叶うんだ。

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